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この街で、一番大きな主要道。
入り口から入り、すぐの場所に冒険者ギルドがあり、そこから武器屋、服飾屋、飯屋など様々な商業施設が並ぶ。そんな主要道から遠からず、しかし決して近すぎず、比較的好立地な場所に建つその建物で二人は密会をしていた。
その女性は長く細い髪で片眼を隠し、妖艶な印象を持つ。恐らく道ですれ違えば、多くの男が振り向くスタイルをしている。
もう一人はハツラツとした印象を与え、こちらもまた別の男どもを、主に少し浮ついた男を魅了するタイプの女性だ。
「もー本当に、面倒くさいわ」
「そういわないの、アカリ」
アカリと呼ばれた、ハツラツした印象を与える女性は腰に手を当て頬を膨らます。
「でも、あいつがしっかり暗殺しておけば、私たちが出張ってくる必要もなかったのに」
「そうはいっても、失敗してしまったのは仕方ないわ。私たちでなんとかしましょう」
「む~」
そもそも、彼女たちは何故失敗してしまったのかが分からない。
今回送り出した暗殺者は、それなりに腕が立つ人間だった。ただ一緒に潜り込んでいた諜報員からの報告は失敗とされ、理由も不明。ただ暗殺者が矢を外した、というところしか分からなかった。
「なにか特別なものに護られている、とか?」
「なにそれ」
そういったものに心当たりも無ければ、聞いたこともない。そんな眉唾なものを信じるくらいなら、ただ暗殺者の腕が悪かったと考えるほうが自然である。
「それに銭湯の出口にいた男、見た!? ミオ姉のこと、めっちゃガン見してたの! 気持ち悪い!」
折角、公衆浴場でリフレッシュしたはずなのに、その後に現れた男で気分は最悪だった。
特に、この二人は一緒にいることで多くの男の目を引くことが多い。時折こうして、彼女の愚痴が止まらなくなることがある。
「そうね、確かにあの眼力は、少しゾクリとしたわ」
「でしょ!」
しかしあの男、この辺ではあまり見ないような容姿をしていた。少しのっぺりとした印象で、印象に残りづらい顔つき。逆にああいった、凡庸な顔のほうが暗殺者に向いているのかもしれない。
「もしかしたら、この街の凄腕かもしれないわ」
「ないない」




