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「肩肘張りすぎじゃねーか?」


「うぐ……」


 同僚のハルトに注意される。曰く目つきが怖いと。


 そうはいっても、護衛対象から目を外すわけにはいかない。そんな状況が、私の目線を鋭くしている。


「そうかもしれないけど、周りを見てみろよ。俺たちより位階の高い先輩方もいるんだ。多少俺たちが目を離して、どうこうなるもんでもないだろ。もっと、周りを信用したらどうだ」


「うぐぐ……」


 前回のゴブリン退治とは違い、力を発揮すれば結果が伴うものでもない。この同僚のように適度に力を抜きながら、屋台で買ったパンを片手に護衛対象を見てるくらいがいいのかもしれない。


「ほら、お嬢様方もベンチに座って軽食を取るみたいだぞ」


 そういって、同僚から飲み物を渡される。


 はぁ、とため息を付きながら飲み物を補給する。思ったより喉が渇いていたのか、ゴクゴクと飲み干してしまう。


(難しい……)


 適度に手を抜くというのは、どうやればいいのだろうか。ふと、お嬢様の隣のベンチに目がいく。


「あれは……」


「ん? ああ、あれは家無しだな。呑気に昼寝してら」


 ふむ、私もあれくらい気を抜くべきなのかもしれない。少し極端かもしれないが、今はあれくらいの度胸が必要だ。


 私は、近くにあった椅子に腰かけ目を瞑る。少し疲れがたまっていたのか、うつらうつらとしてくる。


「……おい。流石に、それは気を抜きすぎだろ」


「ええ……」


難しい。


「ま、まあ! 俺とこうして雑談でもしながら見るのが、いいんじゃないかな!」


「そうですか……?」


「そうそう! ほら今も、さっきより適度に気が抜けてるだろ」


「なるほど……」


 こうして雑談をすることで、護衛対象から視線を外し、気を抜いた自然な状態を作れるのなら、こうして雑談をするのもいい手かもしれない。


「仕方ないから、俺が一緒にいてやるよ!」


「……すみませんが、お願いしてもいいですか」


「――ああ、任せろ!」


 なんか、さっきより同僚のハルトは気合が入ってしまってる気がするが、彼なら適度に気をぬけるだろうから大丈夫だろう。


 私は彼との雑談をしながら、護衛対象を見守ることにした。

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