08
「領主様の警護ですか?」
「ああ。正確には領主の娘だがな」
今朝早く、ヒナタ先輩に声を掛けられ、言い渡された内容が警護クエストだった。主に用心の警護だったり、街と街を移動する荷の警護だったりと様々だ。
「領土内なのに、警護が必要なんですか?」
「貴族は、色々とドロドロしてるらしくてな。あまり詳しくは知らないほうがいいぞ」
「はぁ……」
一体何から守るのか。初めて警護クエストを受けるため、こういったこともあるのかと納得する。
「ああ、そうだ。出来るだけ、お洒落してこいとのご要望だ」
「ええ……?」
益々、何がしたいのか分からない。
「戦闘服に身を包んで守られるのは嫌らしい。できるだけ普段の街並みを見たいんだと。だから俺たちも警護だと気づかれないように、私服でさりげなく見守るらしいぞ」
領主は、税金をなんだと思っているのだろうか。
「まあ今は、位階の高い冒険者は森に出払っているからな。俺たちで対応するしかない。諦めろ」
「いえ、お仕事ですので……全力で対応します」
「あんまり肩肘張るなよ」
そうはいっても、これも私にとっては初めての経験だ。
こうして何から守るのかもわからない、そして装備もなるべく軽装で対応する、警護クエストが始まる。




