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「それで、シャーリー。一体何があったのか教えてくれないか?」
ヴィンセントの部屋に戻り、ソファに向かい合って腰掛けると、彼はさっそく口を開いた。私はこくんとうなずく。
「はい、私にもわけがわからないことばかりなんですけれど、起こったままに話しますね」
私は自分に起こったことをありのままに話した。
神官テレンスが奴隷売買に手を染めていると知り、止めるために組織の人間に近づいたこと。しかし、それが原因で冤罪を吹っ掛けられたこと。
それから確かに処刑されて死んだはずだったのに、気が付くと森の中で寝ていて、幼女に姿が変わっていたこと。
今日は神殿でヘレン達から、グレースの死体が影になったという話を聞いて気になったので、何かヒントはないかと処刑が行われた広場まで行ったら、なぜだか体が痛みだして突然グレースの姿に戻ったことなどを話した。
ヴィンセントは話を聞いている間、ずっと強張った顔をしていた。
私が話し終えても、しばらくずっと口を開かない。
「……それは、本当の話なのか……?」
やっと口を開いたヴィンセントは、かすれた声で言う。私はうなずいた。
「はい。信じられないでしょうけれど、確かに起こったことなんです」
きっぱりとそう告げる。
ヴィンセントは言葉を発しないまま、俯いてしまった。そうしてやっと顔を上げたかと思うと、突然立ち上がって私を抱え上げた。
「グレース様……! いわれのない罪で処刑されるなんて、そんなひどい目に遭っていたなんて……!」
「え?」
ヴィンセントは私をぎゅうぎゅう抱きしめたまま、ぼろぼろ涙をこぼす。さっきまでのぎこちなさはどこかへ消えていた。
「ヴィンセント様、それは別にもう構わないのですが……」
「なぜそんなことをおっしゃるのですか!? あなたは人々を助けようとしたにも関わらず、侮蔑の言葉を投げつけられて殺されたのですよ!? 私は絶対に許せません!」
ヴィンセントは私の目を真っ直ぐ見つめて、真剣な顔で言う。口調がグレースに対するものに戻っていた。
怒ってくれるのはありがたいけれど、私は別にもう気にしていないのだ。テレンスは無事、神官の職から退かせられたし、マイラのことも街を追い出した上で脅しておいたし。
「ヴィンセント様、そんなに怒ってくれなくても、私は……」
「けれど一番許せないのは私自身です。グレース様がお優しい方なのはわかっていたのに、噂を鵜呑みにしてあなたが罪を犯したと信じてしまったなんて……! 何とお詫びしたらいいのかわかりません……!」
ヴィンセントは顔を歪め、悲痛な声で言う。
私はなんだか困ってしまった。仕方なく、落ち込みきっているヴィンセントの頭に手をやって撫でてあげる。ヴィンセントの肩が驚いたようにぴくりと跳ねた。
「グレース様……?」
「いいですよ。グレースの姿で会ったのは一度きりですもの。信じてしまうのは仕方ありませんわ。それよりも、私が罪人だと聞いても悪く思わないでいてくれたこと、嬉しかったです」
ヴィンセントのサラサラしたシルバーブロンドの髪を撫でながら言うと、彼は言葉を止め、やがて押し殺したような嗚咽を漏らし始めた。まるでヴィンセントのほうが子供みたいだ。




