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「お昼過ぎ頃から空の様子がおかしいので、シャーロット様が帰って来る時に大雨が降らないかと使用人みんなで心配していたんです。ヴィンセント様はお客様に対応中でしたので、勝手ながら使用人たちで相談して迎えに行くことにしたのですが……」
「ああ、それは構わない。しかし、迎えに行ってもシャーリーは神殿にいなかったと?」
「はい。神殿中を探しても、近辺の通りを探しても、どこにもシャーロット様の姿がなかったんです……!」
メイドは涙声でそう言った。相当焦っている様子だ。話を聞いているヴィンセントの顔も真っ青だった。
どうやら、私が小さな嘘を吐いたせいで、結構な騒動になってしまっているらしい。私は冷や汗をかいて大騒ぎする二人の話を聞く。すると、ヴィンセントがこちらに近づいてきた。
「グレース様、申し訳ありません。先ほど話した女の子が行方不明になっているようなのです。今から探しに行きたいので、この部屋で待っていていただいてもよろしいでしょうか。使用人には中へ入らないように言っておきますから」
「え、えっと……ええ……」
「本当に申し訳ありません。行ってまいります」
ヴィンセントはそう言うと、すぐさまメイドと部屋を出て行った。
しばらく呆然と扉を見ていたが、自分のことで大騒ぎになっている状況でじっとしているのも落ち着かず、私はこっそり部屋を出た。使用人に見つからないようにこっそりとヴィンセントを探して歩く。
一体どうすればいいんだろう。こんなに早くシャーリーがいないことがバレてしまうなんて。一旦シャーリーに戻って姿を見せてあげたいのは山々なのだけれど、姿を変える方法はちっともわからない。
廊下をこそこそ歩いていると、広間から人の声が聞こえてきた。
そっと中を覗き込むと、ヴィンセントと使用人たちが話し合っているところだった。
「神殿ではシャーリーの姿を見た者は誰もいなかったんだな?」
「はい。シャーロット様が今日訪れた形跡はないようでした」
「行く途中に何かあったのだろうか……。まさか、誘拐されたんじゃ……」
「その可能性は否定できません……。現在、街の住民にシャーロット様を見た者がいないか聞いて回っているところです」
「誰かシャーリーを見た者がいるといいんだが……。ああ、神殿がそう遠くない場所にあるからといって、一人で行かせるんじゃなかった。シャーリーは強い魔法が使えるから大丈夫だと思ったが、まだ十歳にもならない子供なんだもんな……。私はなんて愚かなことを……」
ヴィンセントは額に手を当てて、悲痛な声で言う。
私は本気で申し訳なくなってしまった。ヴィンセントも使用人たちも、私が神殿に行くときは何度も送り迎えすると言ってくれたけれど、私はお屋敷の外では自由でいたくて魔法が使えるからと大丈夫だと毎回押し切っていたのだ。
ヴィンセントと使用人たちは、ひどい顔色のまま自分が迂闊だったせいだと自らを責めている。




