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「あ……っ! 返して!」
「リストは見なかったことにしろ。いいか。絶対に誰にも言うんじゃないぞ」
「どうして言っちゃだめなんですか!? 見られるとまずいんですか……!?」
私はぴょんぴょん跳ねてテレンスからリストを取り戻そうとするけれど、背が小さすぎて全く届かなかった。三人が後ろで悲壮な声を出す。
「全く、勝手に動き回りやがって……。いいか、余計なことは考えるな。誰かに言えばただじゃおかないからな」
「そんな……」
私は目を潤ませてテレンスを見上げる。テレンスは冷たい目でこちらを見ると、部屋に戻ろうと扉に手をかけた。
「返してくれないなら仕方ないわね。みんな、見習い部屋にある複製をほかの人に見せて、何のリストだか教えてもらいましょう」
「……は?」
テレンスは顔を引きつらせてこちらを見る。
「複製? 一体、何を言っている」
「大事な書類だろうなと思って、複製を用意しておいたんです! 見習い部屋にまだ残っていますから、そっちを使います」
「でたらめを言うな。複製魔法を頼むにはいくらかかると思っている? 金もなければ大した魔法も使えないお前たちに用意できるはずがない」
「嘘じゃありません! 神官様が今手に持っているリストだって複製なんですよ? 嘘だと思うなら、お部屋の隠し場所を確認してみてください。本物が残っているはずですから」
「な……っ」
テレンスはにわかに信じがたい様子で部屋の中へ戻っていく。それから真っ青な顔で飛び出して来た。
「どういうことだ!! リストがもう一つあったぞ!!」
「だから複製したんですってば!」
私が答えると、テレンスは口をぱくぱくさせてこちらを見る。後ろからヘレンたちが追い打ちをかけた。
「神官様、見習い部屋にもリストがあるから諦めたほうがいいですよ」
「見習い部屋だけじゃありません。ほかの場所にもわからないように隠しておいたんです!」
「複製はいくつあるかわかりませんよ。シャーロットの話を聞いておいたほうがいいんじゃないですか?」
三人に代わる代わるそう言われ、テレンスは苛立たしげにリストを握りしめる。
それから怒りを押し殺したような声で、部屋に入るように言った。
部屋の中に入ると、テレンスはこちらを睨みつけながら言った。
「一体何が目的だ」
「目的?」
「とぼけるな。わざわざいくつも複製を作って隠したりして、私を脅す気だったのだろう。一体何が目的なのか言え」
テレンスは怒りを懸命に抑えている様子だった。きっと、複製がなければすぐにでも私を殴りつけたい気分だろう。
私は楽しくなってテレンスの顔を見上げる。
「そうですね……。神官様は身寄りのないシスター見習いにひどい扱いをしているでしょう? それをやめて欲しいんです」
「シスター見習いたちの扱いを変えろと? 冗談じゃない。行き場のないガキを拾ってやって、神殿に住まわせてやっているんだ。身を粉にして働くのは当然だろう」
「でも、見習いに任される仕事はとても一日で終わらせられるような量じゃありません。それに、些細な間違いで罰を与えるのもどうかと思います」
「明日には帰るお前には関係ないことだ。なんだ、お前たち引き取ってもらった恩を忘れて、シャーロットに待遇を求めるよう頼ませたのか? 図々しいガキどもだな」
テレンスは馬鹿にしたように、ヘレンたち三人を見る。
「三人に頼まれたわけじゃありません。神官様、待遇改善してくれますか? してくれないなら、リストを外へ流すことになりますけど」
私がリストのことを口にすると、テレンスは悔しそうに押し黙る。それから心底不愉快そうな顔でうなずいた。
「わかった。見習いの仕事量を減らそう。体罰も与えない。それでいいか」
「わぁ、ありがとうございます、神官様!」
私は笑顔でお礼を言う。後ろの三人もきゃっきゃと喜んでいた。
不愉快そうに私たちを眺めるテレンスに向かって、私はさらに頼みごとをする。




