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稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています  作者: 水谷繭
7.神官の罪

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7-7

「なんだかこの紙怪しくない? 分厚い本の間に挟まっていたんだけど、人の名前と、よくわからない暗号みたいなものがたくさん書いてあるの」


 私はコーリーの広げた紙を覗き込む。


 そこにはずらりと並んだ人名と、その横に並ぶおかしな文字の羅列があった。一見わけのわからない、記号のような文字たちだ。



 その瞬間、ぼやけていた記憶が蘇ってくる。


 そうだ、私は何度もこのリストを見た。犯罪組織の人間たちが集まるあのアジトで。実際に取引が行われないようにするために、私は必死だった。


(私……罪を犯してなんかいなかった)




 記憶がどんどん蘇る。


 グレースは、悪女でもなんでもなかった。


 裏表こそ激しい性格だったけれど、国民を売り飛ばしてやろうだとか、お金のためなら人が死んでもいいだとか、そんなことは考えたこともない。


 それなのに犯罪組織と関わったのは自分の利益のためではなく、テレンスの計画を止めたかったから。


 私はテレンスをどうにか告発しようと悪戦苦闘して、その結果罪を被せられて処刑されたのだ。



 グレースだった頃の私は、聖女として生きるのがストレスで仕方なかった。


 もともと神殿に来たのは自分の意思ではない。


 神殿とのつながりを欲した生家の両親が、子供たちの中で一番どうでもいい存在であった私をシスター見習いとして送りだしたというだけだ。


 私は表でこそ清廉な聖女として振る舞っていたけれど、自分を愛していない両親の言うままに動く自分が嫌で嫌で、夜になるとこっそり神殿を抜け出して、発散するように街を歩き回っていた。


 ある日の夜、私がいつものように夜中に神殿を抜け出して酒場に行くと、帰り道で見覚えのある人影を見つけた。テレンスが怪しげな男性二人と話し込んでいるのだ。


 テレンスは変装をして、いかにも人目を忍んでいる様子だった。


 気になってこっそり話を聞いていると、彼は教会に救いを求めてやって来た信者の中から困窮した者を選んで騙し、隣国に奴隷として売ろうとしているのだと知った。


 私は急いでそれを役人に話した。しかし、神官様がそんなことをするはずがないと取り合ってもらえない。


 証拠を探そうにもテレンスは警戒心が強く、部屋に入るチャンスもなければ、あの日以降いくら見張っても組織の人間と会う様子を見つけられなかった。


 私は仕方なく、犯罪組織のほうに接近することにした。


 あの日テレンスたちを見た場所に何度も通い、彼らの姿を見つけると同じ店に入って話しかけた。それで私も仲間に入れて欲しいと申し出たのだ。


 テレンスにこのことが漏れないよう、いつも着ている服とは全く違う派手なドレスを着て念入りに化粧もして、偽名を使って彼らと会った。


 何度も会って、手紙でもやり取りをした。このまま組織と接近してテレンスが奴隷売買に関わっている確かな証拠をつかめれば、あいつを捕らえられると思った。


 私は人々をテレンスの魔の手から救うヒーローのつもりでいた。


 だから犯罪組織のほうには警戒を怠らなかったのに、自分のやっていることがもし不本意な形で発覚したら、どのように見られるかを考えもしなかったのだ。



 私はある日、偽装して書いた手紙をマイラに見つけられ、それを告げ口された。


 テレンスはその報告に歓喜して、すぐさま私が犯罪組織と関わっていたとして役人に報告した。


 薄々、私が疑っていることを感づいていたのかもしれない。その頃のテレンスは妙に私に対してあたりが強かったから。


 いまいましく思っていた私に罪を被せることができて、さぞ清々したことだろう。


 私はテレンスに計画を知られたことに気づきもせず、ある時無警戒に神殿に戻った日に役人に捕らえられた。


 そうして無様に処刑されたのだ。


 ……ああ、なにこれ。意味わかんない。私、何も悪くなかったんじゃない!


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