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「どうしてだかは言えないけど、以前偶然知ってしまったのよ……。それで私は神官様の悪事を止めたくてここへ来たの」
「すごい……! シャーロットってヒーローみたいね!」
「シャーロットがここへ来たのは、悪の神官を倒すためだったのね! かっこいいわ!」
二人は興奮気味に言う。私は褒められて若干気を良くした。
本当はテレンスの悪事を止めるためじゃなく、私を死に追いやったあの男に復讐したいだけなのだけれど。
「そうなの。神官を何とかしたいから、協力を頼むわ」
「ええ、任せて! そのリスト探してみせるわ!」
「がんばりましょう!」
二人は張り切った様子でうなずく。しかし、ヘレンはふいに悲しげな顔になると言った。
「……でも、奴隷売買って……グレース様の罪状と一緒なのね」
ぽつりと呟かれた言葉がやけに胸に響く。私は動揺を押し隠して言った。
「……そうね。とんでもない神殿よね。聖職者が二人もそんなことに手を染めているなんて」
「ええ。ひどい罪だと思うわ。でも、なんだか……」
「同じことをしたのに、神官様は生きていてグレース様が処刑されるなんて……。いいえ、そんな言い方してはだめね」
二人は曖昧な言葉を並べた後、口ごもる。
言いたいことはよくわかった。私も二人と同じことを思っている。
なんでテレンスだって同じ悪事に手を染めているのに、私だけ殺されなきゃならないのか、全く納得いかない。
ヘレンもコーリーもマギーもグレースを慕ってくれていたようだし、私と同じように理不尽さを感じているのだろう。
「そうね……。二人の気持ちはよくわかるわ。美しくて気高いグレースよりも、あさましく下賤で小賢しい神官様のほうが死ぬべきだったと、私も思う」
「う、うん……。そこまでは言ってないけど、なんだか不公平だなって」
「グレース様が処刑されたなら、神官様だって罰を受けるべきよね。あさましくて下賤で小賢しいとまでは言ってないけど……」
二人はちょっと戸惑い顔をしながらも同意した。
「よし、じゃあ、早速リストを探し始めましょう! 急がないと人が来ちゃうわ!」
私がそう言うと、二人はうなずいて、散らかった部屋を調べ始めた。
私は部屋の奥の棚の前にしゃがみ込み、中に入っている資料を探る。
リストを隠すとしたらどこだろう。資料の間に紛れ込ませるとか、どこかに隠し扉を作って入れるとか。
隠し場所はわからないけれど、この部屋にあるのは確かなのだ。だって、私は前にもここに来て……。
考えた瞬間、頭にズキンと痛みが走る。
あれ……私、なんで昔ここに来たんだっけ? どうしてテレンスの作ったリストがここにあるって知ってるんだっけ。
混乱する頭を押さえて、無理矢理探し物に集中する。人が来る前に早く見つけてしまわないといけない。
それにしても、本当にテレンスには腹が立つ。どうして同じ悪事を働いて、私だけ処刑されなくちゃならないんだろう。絶対にあいつにも裁きを受けさせなければならない。
だって、私が犯罪組織と関わったのはあいつのせいなんだから。
あいつが組織と手を結んで国民を売ろうとしていると知ってしまったから、だから私はそれを止めたくて……。
……止めたくて?
「……ロット。シャーロット!」
「えっ?」
突然肩を揺すられ、振り向くと心配そうな顔をしたヘレンがいた。
「どうしたの、ぼんやりして固まって。リストを探すんでしょ?」
「え、ええ……」
「顔が真っ青よ。具合が悪いなら今日のところは引き返す?」
「いえ、大丈……」
「シャーロット、ヘレン! これ見て!」
私が言い終える前に、部屋の反対側で棚を探っていたコーリーが駆けてきた。コーリーの手には、数枚の紙が握られている。




