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「もしかして、シャーロットが帰る家があるのにここに見習いに来たのは、神官様のことを探るため?」
「ええ。どうしても私、あの人の秘密を暴きたいの」
「神官様の秘密……」
ヘレンは迷ったように顔を伏せる。それから、じっと私を見つめて言った。
「……シャーロットがそんなに探したいと言うなら、きっと重要なことなんでしょうね」
「ええ。どうしてもやりたいの。そうじゃないと死んでも死にきれないのよ」
「そこまで……? そう、でも、そうね。シャーロットにはたくさん借りがあるし、私は協力するわ」
ヘレンは真っ直ぐに私を見て言う。ヘレンの言葉を聞いたコーリーとマギーは、顔を見合わせて思案顔をしていたけれど、やがて思い切ったようにこちらを見て言った。
「私も、シャーロットがそこまでやりたいことなら協力するわ」
「私も。でも、あんまり危険なことはしちゃだめよ」
「ありがとうヘレン、コーリー、マギー!」
私は笑顔で三人にお礼を言う。
さっきまで戸惑い顔だった三人も、一度決めてしまうとすっかり張り切って神官様をどうやって出し抜きましょうかなんて話し合っている。
私はなんだかわくわくした気分でその様子を見ていた。
***
無事、三人に協力を引き受けてもらえたので、私はいつも以上にハイスピードで見習いの仕事を終わらせてテレンスの部屋へ向かうことにした。
「さぁ、今日の分の仕事も終わったし、早速神官様の部屋に行きましょう!」
元気よく言うと、ヘレンが難しい顔をする。
「シャーロット、神官様の部屋には鍵がかかっていると思うけどどうするの?」
「それは平気よ。私がちゃちゃっと何とかするわ」
「そんなことできるの?」
不思議そうな顔をするヘレン達に構わず、テレンスの部屋まで歩いていく。
テレンスの部屋は、神殿の奥まった場所にある。あいつは普段そこで仕事をしたり、仮眠を取ったりしているのだ。
部屋の前まで来ると、私は足を止めた。
「みんな、人が来ないか見張っていてくれるかしら」
「ええ、わかったわ」
三人は散り散りに辺りを見張る。私は服の下から杖を取り出し、念を込めた。
「鍵よ、開けっ」
そう唱えた瞬間、杖の先から緑の蔓が伸びる。蔓はうねうねと器用に変形して、鍵穴に入り込んだ。
蔦の伸びた杖をひねると、あっさりと扉が開く。
「みんなー、開いたわよー」
「ええっ、もう!?」
「シャーロット、一体何をやったの!?」
こちらに背を向けて見張りをしてくれていた三人は、私が呼ぶと駆け寄って来て驚いた顔をする。
「植物の魔法でちょっとね。さぁ、入りましょう」
三人は目をぱちくりしたまま顔を見合わせたあと、こくりとうなずいた。
テレンスの部屋は、大分ごちゃごちゃついていた。机の上にも棚の上にも、大量の書類が積み重なっている。
これでは目的のものを探すのに時間がかかりそうだ。
「……これは大変そうね……。ねぇ、誰か一人扉の前で見張りをしてくれるかしら。残り二人は探し物を手伝って欲しいの」
「なら、私が見張っておくわ。人の気配がしたら呼ぶから」
私が頼むと、マギーがすぐさまそう言った。
「ありがとう、マギー。そうしたら、ヘレンとコーリーには一緒にリストを探して欲しいの」
「リスト? なんの?」
「奴隷売買用のリストよ」
「奴隷売買……!?」
ヘレンとコーリーは目を見開いた。ぽかんとしている二人に説明する。
「神官様はね、追い詰められて神殿にやって来た貧民や、身元のはっきりしない人たちをうまく丸め込んで、隣国に奴隷として売り払おうとしているのよ。売買を仲介する組織に渡すためのリストがあるはずだから探したいの」
「ちょ、ちょっと待って。神官様は本当にそんなことをしているの……!?」
「ていうか、シャーロットはどうしてそんなことを知ってるの!?」
二人は焦り顔で詰め寄ってくる。




