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仕方なく女の子たちと膨大な量の服を洗い続けた。この子たちはこれを毎日繰り返しているのだろうか。
「よし、これで終わり!」
三つ編みが明るい声で言った。大量にあった制服は全て洗われて、最初に入れられていたのとは別の籠の中に入れられている。
がんばった。すごく疲れた。大部分の制服を洗ったのは私以外の三人だけど。
「あとは干すだけよ。行きましょう」
三つ編みが籠を抱えながらそう言うと、ほか二人もうなずいて籠を持ち上げた。私も同じように籠を抱える。
しかし洗濯物を干すために外まで出たとき、女の子のうちの一人が躓いて、籠の中身をぶちまけてしまった。
無常にも地面の上に洗ったばかりの濡れた制服がばらまかれる。
「あ……っ!」
「ちょ、ちょっと、コーリー! 何してるのよ!」
がたがた震えるおかっぱの女の子、コーリーに、三つ編みが真っ青になって飛んでいく。
「ごめんなさい、ヘレン。どうしよう……」
コーリーは泣きそうな顔で三つ編みを見る。三つ編みはヘレンと言うらしい。
「洗い直すしかないでしょ。時間内に終わるかしら……」
三つ編みのヘレンは難しい顔で服を拾う。コーリーも泣きそうな顔のまま、慌てて服を拾い始めた。私ともう一人の女の子もそれに続く。
服を拾い終えたものの、濡れた状態で土の上に落としたせいでどれも随分汚れてしまっていた。
服は籠いっぱいに入っていたため、数十着はある。これが全て洗い直しになるのか。
「時間内に終わらせるのは無理そうね……」
憂鬱そうにヘレンは呟いた。
彼女たちはいつもギリギリの時間をやりくりして仕事をこなしているそうなので、新たに数十着の服を洗うことになっては、とても時間通りには終わらないのだろう。
「ご、ごめんなさい。ヘレン、マギー。私が落としたってちゃんと言うから……。そうしたらみんなはひどい罰は受けないと思うから」
「何言ってるのよ。私たち誰かが失敗したらみんなで一緒に罰を受けようって決めたでしょ」
「そうよ。コーリー一人の責任にしたら、どんな罰を与えられるかわからないじゃない」
コーリーの言葉に二人は迷いなく返す。コーリーは涙をぽろぽろ零してかすれ声でお礼を言っている。
私はちょっと感心していた。この子たちは大変な環境にいるくせに、ほかの子の苦労まで背負ってあげようという気があるのか。
私がここに来たときも帰る場所があるなら帰った方がいいと真剣に勧めて来るし、子供のくせにやたら人間が出来ている。
私だったら自分が大変な思いをしたら、みんな同じレベルまで落ちてこいとか思っちゃうんだけど。
「あの、シャーロットもごめんね……」
コーリーがおそるおそるといった様子で近づいてきた。
「シャーロットは関係ないって説明するわ。神官様は厳しいけれど、さすがに今日来たばかりのあなたに連帯責任で罰を与えることはないと思うの」
「そうね、シャーロットは関係ないと言いましょう」
「私たち三人で籠を運んでいたことにしましょうか。シャーロットはそのとき洗濯場にいたとか言って」
三人は真剣な顔で私に被害が出ないように話し合っている。汚れがなさすぎて眩しい。
私は三人に向かって言った。
「その必要はないわ。時間内に終わらせればいいんでしょ?」
「え? まぁ、それが一番だけど、今から洗い直して時間通りに終わらせるのは……」
三つ編みのヘレンが言い終える前に、私は服の下から杖を取り出して汚れてしまった服の山に向けた。
杖は何かあったときのために、あらかじめキャミソールの中に縫い付けて隠しておいたのだ。敵地に武器も持たずに乗り込むわけにはいかないもの。




