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魔法大会が終わってから数日、私は相変わらずエヴァンズ公爵家でちょっと過剰なまでに可愛がられながら暮らしている。
大会の翌日には、私の優勝を喜んだヴィンセントと、ヴィンセントから話を聞いた使用人たちが盛大なパーティーを開いてくれた。
山積みの料理を食べさせられ、ただでさえ普段から大量に渡してくるプレゼントをこれでもかと渡され、みんなに囲まれて際限なく褒められる。パーティーが終わる頃にはくたくたになってしまった。
やっと休めると思った翌日には、金髪のジェレミーがわざわざお屋敷まで来てまた師匠になってくれと頼みこんでくるし、そのさらに翌日には街の新聞社が優勝者に取材したいとやってくるしで、休む間もなかった。
私はここ数日ですっかり疲れ切ってしまった。この幼女の体は魔力こそ強いけれど、体力はいたって平凡らしい。
「シャーリー、マイラ殿は街の神殿を解雇されたそうだ。もう彼女が姿を見せることはないから安心していいよ」
ようやく騒ぎが落ち着いたある日の夜、ヴィンセントは部屋で私を膝の上に抱えながら言った。
「マイラお姉さんはもう神殿にいないのですか?」
「ああ。多分、近いうちにこの街自体から出て行くと思う。マイラ殿のやったことはあっという間に街中に知れ渡ってしまったからね」
ヴィンセントはあっさりした表情で言う。
彼の言う通り、マイラが私に嘘を教えて魔法が使えないと思い込ませていた話は、大会からいくらも経たないうちからあっという間に街中に広がってしまった。
何しろあの大会は町中の優秀な子供が集まる大会だ。それに神殿のシスターが子供を貶めていたなんてニュース、人々の興味を惹かないはずがない。
マイラの評判はあっという間に地に落ちた。
エヴァンズ公爵邸の自室に置いてあったマイラが私に使わせていた杖は、早急に神殿で調査された。結果、あの杖には魔力制御の魔法がかけられていたことが判明した。
マイラは最後まで否定していたようだけど、会場で私に向かって悪態をつくところを見られてしまっている上、そもそもあの時ぽろっと自白してしまっていたので、彼女の言葉が受け入れられることはなかった。
彼女の処遇がしばらく話し合われていたそうだけれど、どうやら最終的に解雇されることに決まったらしい。
「マイラお姉さんは神殿を辞めさせられてしまったんですね。私のことを騙していた人だけど、ちょっとだけかわいそうです」
「シャーリー、君はなんていい子なんだ! けれど、あの人は自業自得で辞めさせられただけなんだから、同情する必要なんてないんだよ」
私の心にもない言葉に、ヴィンセントは感動した様子で言う。私はヴィンセントにぎゅうぎゅう抱きしめられながらマイラのことを考えた。
マイラはもうこの街を出ただろうか。
まだ出ていないのなら、最後にぜひ会いたい。




