3-5
「シャーリー! すごいじゃないか!! いつの間にこんな魔法を使えるようになったんだ!?」
「えへへ、いっぱい練習したんです」
「そうか! 頑張ったんだな! えらいぞ、シャーリー!!」
ヴィンセントは私を抱え上げたままぐるぐる回る。
「あの、エヴァンズ公爵。今は大会中ですので、お席に戻っていただけると……」
「ああ、すまない。つい興奮してしまった。シャーリー、家に帰ったらお祝いしような!」
「はい、ヴィンセント様!」
私は席に戻っていくヴィンセントに手を振りながら、参加者の子供たちのほうに戻る。彼らは一様に目をまんまるにしてこちらを見ていた。
「ば……化け物」
朝から頻繁につっかかってきた金髪の子供は、私を見てかすれた声で言う。私は彼に向かって笑顔で首をかしげた。
その後も着々と試合は進んでいった。
魔力を隠さなくなった私は、当然順調に勝ち進んでいく。さきほどまで静まり返っていた会場は今ではすっかり大盛り上がりで、私が杖を振る度に歓声が上がる。
途中、そっと関係者席のほうに目を遣ると、マイラが鬼の形相でこちらを睨んでいるのが見えた。あんな顔をしてたら、周りの人にも本性がバレちゃうんじゃないかしら。
私は次々に対戦相手に勝ち続け、ついには最後の相手となった。
残っていたのは、あの生意気な金髪の子供だった。
「ば、化け物! お前なんか俺の魔法でぶっつぶしてやるからな!!」
金髪は威勢よく言うけれど、声が明らかに震えている。
「あなたにできるかしら? やれるものならやってみなさい!」
虚勢を張っている様子がおもしろくて、大人げなく挑発してみる。金髪はムキになった様子で杖を構える。
「消えろ!!」
金髪が叫んだ途端、すごい勢いで炎が私めがけて飛んできた。杖を構えて防御する。炎はあっけなく消えていった。
金髪はめげずに何度も炎を放つ。私はその度に炎を打ち消した。
連続で魔法を使った金髪は、徐々に息が上がっていく。
「今度はこっちから行くわよ!」
私はそう言って杖を構え、金髪の出したものよりも数段威力の強い炎を放つ。金髪の一つ目のバリアはあっけなく壊れた。
突然自分めがけてすさまじい炎を放たれた金髪は、驚いて固まってしまっている。その顔は恐怖のためか引きつっていた。
私の口元は無意識のうちに緩む。
あー、楽しい! 子供相手に無双するの楽しい!
生意気な子供の顔が泣きそうに歪むのを見るの、最高に楽しいわ!
私がそんな最低なことを考えていると、金髪は震える手で再び杖を構え、再び魔法を放ってきた。
今度は水魔法だ。この子は二つの属性を持っているらしい。
子供にしては威力の強い魔法だったけれど、防ぐのは簡単だった。金髪が魔法を放つたびに、防御して打ち消していく。
金髪の放つ水魔法が弱まったところで、今度はこちらから彼めがけて風魔法を放つと、二つ目のバリアもあっさり壊れた。
「あと一回ね!」
「くそ……っ」
私が杖を構えると、金髪は悔しそうな顔をする。すっかり息が上がって、立っているのもきつそうだった。
かわいそうだから早めに終わらせてあげましょう。私は彼に杖を向ける。
すると、金髪は突然こちらめがけて駆けてきて、私につかみかかった。




