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稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています  作者: 水谷繭
3.魔法大会

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16/71

3-1

 それから数日が経ち、あっという間に魔法大会当日を迎えた。


 ヴィンセントは約束通り、マイラがやって来たときに私の部屋に来てお茶をしてくれた。


 授業を終えたあと、突然部屋にやって来たヴィンセントを見て、マイラは慌てふためいていた。急いで魔導書や杖を鞄にしまい、感じのいい笑顔で「シャーリーちゃんはとてもお勉強を頑張っていますよ」なんてのたまう。


 私は二人が話している間にこっそりマイラの鞄に近づいて、中に入っている杖をヴィンセントに買ってもらった自分の杖と入れ替えた。


 突然現れたヴィンセントにすっかり動揺していたマイラは、私の動きに気づいていない様子だった。


 私は何食わぬ顔で鞄から離れて二人のほうに行く。それからメイドにお茶とお菓子の準備をしてもらって、三人で小さなお茶会をした。



***



「シャーリー、いよいよ今日は魔法大会だね!」


 ヴィンセントは馬車の中で私を膝の上に乗せながら、上機嫌で言う。


 今日はヴィンセントは公爵家のお仕事をお休みして、私が魔法大会に参加する様子を一日中見守るつもりらしい。


 昨日のうちにできる限りの仕事を片付けることになり、とばっちりを受けた従者さんはヴィンセントに対してぶつぶつ文句を言っていた。


「どきどきしちゃいます。私、うまくできるかなぁ……」


「うまくできてもできなくていいんだよ、シャーリー。楽しくやればいいんだ」


 魔法大会を子供の発表会的なものだと信じ込んでいるヴィンセントは、そう言って私を励ます。


 ヴィンセントの膝の上で窓の外の景色を見ながら馬車に揺られているうちに、神殿に到着した。



 別れを惜しむヴィンセントに手を振って、神殿の門をくぐる。


 すると、広間にはすでにたくさんの子供が集まっていた。どの子もみんな優秀そうな顔をしている。


 緊張した様子で必死に本の内容を暗記している子もいれば、杖を出して練習をしている子もいた。どの子も真剣なのは共通している。


「シャーリーちゃん!」


 広間で辺りを見回していると、部屋の奥の扉からマイラが出てきて駆け寄ってきた。


「マイラお姉さんっ」


「よく来たわね。今日の大会頑張りましょうね。最後に少し復習をしておきましょうか」


 マイラはにこにこ笑って、私を部屋の隅に連れて行く。


 そこでマイラはこれまで散々教えてきた間違った魔法の使い方を念押しした。


 魔法を使う時は無にならなければならない、ものを動かそうとするイメージなんて絶対にしてはいけないと、真面目な顔で繰り返す。


「わかったわ。マイラお姉さん! 私、頑張る」


「いい子ね、シャーリーちゃん。私の言う通りにしていれば大丈夫だから」


 マイラはにっこり微笑むと、持っていた鞄から杖を取り出した。



「はい。これはいつも練習で使っている杖よ」


「ありがとう、マイラお姉さん!」


「念のため聞くけど、自分用の杖なんて持ってきてないわよね? 普段と違う杖を使ったら、ただでさえ魔法が苦手なシャーリーちゃんは余計に失敗しやすくなるから、この杖以外は絶対に使ってはだめよ」


 マイラは私の全身を探るように見回しながら言う。


 自分用の杖なんて持ってきていないのに。だって今マイラが手渡してきたのが、この間お屋敷でこっそり交換した私用の杖なんだから。


「大丈夫! この杖を使うわ」


「ええ、それでいいのよ。がんばってね」


 マイラは優しくそう言うと、去って行った。



「どこでバラすのが一番おもしろいかしら」


 去って行くマイラの背中を見つめながら、私は小声で呟いた。


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