表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています  作者: 水谷繭
2.意地悪な家庭教師

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/71

2-5

 ちなみにマイラが偽っているのは魔法の使い方だけではない。杖自体にも、うまく魔法が発動できないように細工がされている。


 以前、マイラが魔導書に気を取られているとき、こっそり普通に魔法を使ってみたことがある。しかし、普段と違いきちんと水の玉が出るよう念じたにも関わらず、杖先からは小さな雫がこぼれるだけだった。


 明らかにおかしかった。


 ヴィンセントに街で買ってもらった杖を使ったときは、難なく水も炎も出せたのだ。


 どうりで授業が終わると必ず警戒した顔で杖を持ち帰ると思った。一度、試しに「夜も練習したいから杖を貸してくれないかしら?」と頼んでみたら、真顔で「シャーリーちゃんは一人で練習するにはまだ早いわ」と断られた。


 そろそろヴィンセントに全部ぶちまけてみようかと考えていると、マイラはふいに満面の笑みになる。



「ねぇ、シャーリーちゃん。街の神殿で子供たちの魔法大会を行っているのを知ってる?」


「そんなのがあるの?」


「ええ、そうよ。五歳以上十歳以下の子供なら誰でも参加できるの。そこで神官様から出されたお題に挑戦していくのよ」


「へぇー! おもしろそう! 出てみたいわ」


「それなら、私が神官様に伝えておいてあげるわ。今度の大会にシャーリーちゃんも参加したいって」


 マイラは弾んだ声で言う。


 彼女のうきうきした様子を眺めながら、私は若干ひいていた。


 神殿で行われる魔法大会は、対象年齢こそ低いけれど、子供がお遊びで出るようなものじゃない。


 普通の子供よりも数段魔力が高かったり、複数の属性を持っていたりするいわばエリートが実力を試す大会なのだ。


 そんなところにマイラの設定上「属性もなく魔力も少ない」シャーリーが出るなんて、場違いもいいところだ。


「楽しみだわ! うまくできるかしら?」


「ええ、大丈夫よ。周りは同い年の子供ばかりだから、気負うことはないわ。気楽に参加すればいいのよ」


 マイラは自信満々に言う。


 私はドン引きする本心は隠して、笑顔を見せた。


***


 マイラが帰った後、夕食時にヴィンセントに魔法の大会に出たいと告げると、彼は明るい声で言った。


「魔法大会! そんなものがあるのか。いいじゃないか、応援するよ」


 ヴィンセントはその日は仕事はお休みにして応援に行かないと、と張り切っている。ヴィンセントは魔法大会の実態がエリートの子供が集まる頂上大会なんて知らないみたいだ。


「参加していいんですか? 嬉しいです!」


「ああ、何事も挑戦だ。結果は気にせず頑張っておいで」


 ヴィンセントはそう言って私の頭を撫でた。


 私はそっと彼のほうに向きなおる。


「ヴィンセント様、一つお願いをしてもいいですか?」


「なんだ? シャーリーの頼みなら何でも聞こう!」


 ヴィンセント様は張り切った声で言う。私は笑顔で頼んだ。


「今度マイラお姉さんが来るとき、三人でお茶会をしたいんです! 私のお部屋で紅茶を飲んで、一緒にお菓子を食べたらきっと楽しいです!」


「うーん、お茶会かぁ……。今度私とシャーリーの二人でするんじゃだめかな?」


 嬉しげだったヴィンセントの顔が複雑そうな顔になる。


 ヴィンセントはどうも、マイラのことが苦手らしい。


 マイラがお屋敷に来るとにこやかに挨拶はするものの、あまりその場に留まろうとせず、すぐさま執務室に消えてしまう。


 けれど、警戒心たっぷりのマイラを油断させるには、ヴィンセントに来てもらう必要があるのだ。


「ヴィンセント様、シャーリーのお願いを聞いてくれないんですか? 何でも聞くって言ったのに……」


「い、いや! シャーリーの頼みならもちろん聞こう。そうだね、三人でお茶会するのもたまにはいいかもしれない」


 悲しげな声で言ったら、ヴィンセントは途端に慌て顔になって了承してくれた。


 私はヴィンセントの顔を見て、無邪気に笑って見せる。


 ああ、すっごく楽しみ。早く魔法大会当日にならないかしら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ