表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

企画に沿って書いた童話

びーちゃんのしっぽはいたいいたい

作者: 瑞月風花


 ちきちゃんは3さいです。

 ちきちゃんのたいせつなぬいぐるみは、ヘビのびーちゃん。シッポのところがとくにお気に入り。だから、びーちゃんのピンク色のシッポの先っちょのところは、ぼさぼさしています。


「はい、びーちゃん、ねんねのじかんですよ」

ちきちゃんは、びーちゃんをふとんに入れると、とんとんして、おかあさんをするのです。

「はい、びーちゃん、ごはんのじかんですよ」

ちきちゃんは、ごはんのおいすに、びーちゃんをすわらせて、いっしょにごはんをたべます。

テーブルにあごをのせているびーちゃんは、おおきなおめめで、ちきちゃんをみています。

「びーちゃん、ぶろっこりーもたべようね」

びーちゃんの前には、ちきちゃんのたべものもおかれます。だから、びーちゃんの口のまわりは、ちょっとカピカピしています。


挿絵(By みてみん)


 ちきちゃんは、びーちゃんをおふろにもつれていきます。

「びーちゃんは、ここで待っててもらおうね」

おかあさんがいいます。

「いや、びーちゃんもいっしょにおふろ」

「びーちゃんがおふろにはいったら、今日いっしょにねむれないのよ」

ちきちゃんはかんがえます。

「びーちゃん、まっててね」

びーちゃんは、おふろのとびらの前におかれます。だから、びーちゃんは、ほんのすこしだけ、ゆげにあたたまるのです。


 びーちゃんは、ちきちゃんが初めてどうぶつえんに行ったときに、よちよちあるきの、ちきちゃんのぬいぐるみになりました。おじいちゃんが、かってくれたのです。

 おかあさんも、おばあちゃんも「おんなのこでへび?」といいましたが、ちきちゃんは、びーちゃんをもらうと、にっこりわらって、シッポをしがしがしはじめました。


 びーちゃんのあたまの中には、シャリシャリが入っていて、からだは、たくさんの四角い色の布でできています。なんのもようのない布や、ほしもようの布、チェックのもよう、みずたまもようの布もあります。


 ちきちゃんは、そのぬのも、だいすきでした。ひとつずつおさえながら、「ぴんく」「きいろ」「みどり」「あお」「きらきら」「まる」「しかく」とにこにこびーちゃんにおしえます。


 ちきちゃんが泣いている時は、いつもシッポをしがしがします。びーちゃんはちきちゃんが泣き止むまで、ちゃんとシッポをしがしがさせてあげるのです。

 そうすると、ちきちゃんは、ゆっくりぐっすりねむるのです。


 だけど、さいきん、おかあさんにいわれます。

「ぼさぼさのかぴかぴ。たべるとばっちぃのよ」

 びーちゃんのピンクのシッポは、ぼさぼさのかぴかぴなのです。

「もう、おねえちゃんだからね、かみかみはやめないとね、びーちゃんがいたいいたいよ」

 びーちゃんは、思います。

 いたくないよ、と。


 そんなあるひ、朝おきたちきちゃんは、おどろいて「おかあさぁん」と呼びました。

「びーちゃん、シッポけがしたの。いっぱいでてきたの」

「あら、あ、ちきちゃん、あーんして」

ほんの少しあわてたおかあさんが、ちきちゃんのお口の中をのぞいたあと、ちきちゃんのびーちゃんを受け取りました。シッポからは綿がたくさんでてきています。


「ほら、かみかみするから」

ちきちゃんは、「うん」とうなづきました。

「びーちゃん、どうしよう」

「そうね。おいしゃさんに行かなくちゃなりませんね」

おかあさんが、にこにこ笑っていいました。

「おいしゃさん、いたい?」

びーちゃんも、ちきちゃんと同じこと思いました。

 いたいの?

「だいじょうぶ。おいしゃさんはこわくないでしょう?」

ちきちゃんは、うーんとかんがえながら、いつものおいしゃさんの顔を思いうかべました。

「うん、だいじょうぶ」

「びーちゃんのいたいのも直してもらいましょうね」

 そして、ちきちゃんは、びーちゃんをお母さんにあずけて、ようちえんに行きました。


 その日の夜、ちきちゃんは、ひとりでねむりました。

 びーちゃんは、にゅういんすることになったのです。

 シッポの色がないからだそうです。


 ゆめの中で、びーちゃんがおいしゃさんにもしもしをしてもらっていました。

 おいしゃさんは、ねこでした。

「そうですか、シッポがいたいんですか」

「そうなの。シッポがいたいの。でも、ちきちゃんはシッポがすきなの」

「それはたいへんですね」

おいしゃさんが、たちあがって、「ぴんくがでてくるまで、ほうたいをまいておきましょう」とほうたいをもってきて、くるくるまきます。


挿絵(By みてみん)


 びーちゃんのけが、いたいのかな?

 ちきちゃんは、よしよししたくなって、手をのばしました。

 いたいのいたいのとんで行け~

 びーちゃん、がんばって、はやくなおしてね。


 びーちゃんが、うんと言った気がしました。


 それから、ちきちゃんは、ひとりでごはんをたべました。

 にがてなブロッコリーもたべました。

 おふろもといれも、びーちゃんにまっていてもらわなくてもはいりました。

 よる、目をつぶってなにもみえなくなっても、ひとりでねむりました。

 だって、びーちゃんもひとりでがんばってるんですもの。

 ちきちゃんは、おかあさんに「おねえちゃんになったね」「すごいね」とよく言われるようになりました。


 びーちゃんがいなくなって、たくさん朝が来たあとのことです。ちきちゃんのまくらのそばに、びーちゃんがこてんとねむっていました。

「びーちゃんだっ」

いつもおねぼうのちきちゃんは、すぐにめがさめて、びーちゃんをだっこします。

「あのね、ちきちゃんおねえちゃんになったの。すごいのよ」

ぎゅうっとだきしめたびーちゃんのピンクのシッポがきれいになっています。おかおもきれいになっています。

「びーちゃん、おかおあらったの? ちきちゃんもあらう」

そういって、ちきちゃんは、せんめんじょへと行きました。


 びーちゃんは、ちきちゃんといっしょにごはんのいすにすわります。

 だけど、びーちゃんは、ちきちゃんのにがてなやさいをもう食べません。

 びーちゃんはちきちゃんといっしょにおふろへといきます。

 だけど、ちきちゃんは、いっしょにはいるとはいいません。

 びーちゃんは、ちきちゃんといっしょにおふとんに入ります。

 だけど、ちきちゃんは、もうシッポをかじりません。


 だけど、ちきちゃんはびーちゃんのシッポがだいすきなのです。

 シッポをよしよししながら、ねむります。

 だって、もうびーちゃんがいなくなるのはいやなのですもの。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ぴーちゃんが頑張ってる思うから、自分も頑張る。 そのひたむきさが愛おしいですね。 ちきちゃんが少し成長して、ぴーちゃんもちょっと安心できたかしら? イラストも可愛いです! 素敵な物語をありがとうござ…
びーちゃん、治ってよかったね(´;ω;`) かわいいほっこりイラストに和みながら、読ませていただきましたぁ(*´꒳`*) パッチワークなヘビさんかわいい!! 親御さんたちにとっては、意外な動物を子…
一緒にご飯を食べたり、色々な場所に行ったり、びーちゃんといつも一緒にいたいちきちゃんの気持ちがとても伝わってきました。ごはんを食べさせてあげるところが可愛らしかったです。 でも、そうすることで離れて…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ