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イーズス伯夫妻

ドレスの注文が終わって屋敷に戻る。


すでに、タウンハウスの執事がワタワタとセーラの帰りを待ちかねていた。


「奥様、エリザベス様のご様子がおかしいのです!」

「あら?どうしたの?」


「突然、お一人で馬車で戻ってこられたと思ったら、走って自分のお部屋に行かれて、閉じこもっていらっしゃいます。いつもでしたら、おやつをご用意すれば、すぐに出てこられますのに、未だお部屋に閉じこもっていらっしゃるのです。どこか体調が悪いに違いありません。お医者様をおよびしてよろしいでしょうか?」


お菓子で出てくると思われている娘もお菓子で出てこなければ病気に違いないと思う執事も問題である。


「心配しなくても平気です。私がまいります。まあ、でも、お茶は用意しておきなさい」


「エリザベス、ここを開けなさい。母さまに相談したいことがあるのではなくて?」


ドアが開いてエリザベスが涙でぐしゃぐしゃな顔で出てくる。

「お母ざまぁ」

もう涙声である。

「あらあら、もう、まだまだ子供なのね。いえ、違うわね。レディになったのだったわね」

と抱きしめて、部屋に入る。


ソファに座ると話し出す。

「エリザベス、あなたは本当に侯爵さまのことが好きなのかしら?」


エリザベスは頷きながら、

「私みたいなお転婆でひよっ子のような娘がおこがましいのはわかっています。でも、一目見たときに私は、侯爵さまのことが好きになったの。恋に落ちたの。報われなくても良いの。でもお母様、もう私他の方と結婚できるとは思えないわ」


と泣いてくる。


「あら、好きなんでしょ?じゃあ、次のステップは相手に結婚を決意させるだわね。さあ、お母様に任せなさい。そして、お父様のことも任せて、あなたは美容と自分磨きに専念しなさい。あなたの取り柄は、元気でへこたれない事だけど、殿方を籠絡しようと思うなら、美しさも重要なことなのだから。」


「お母様ぁ」

本当に頼りになると実感したエリザベスであった。





「お帰りなさい、フリード」


ニコニコと笑顔で出迎えてくれたセーラを見て、ほっとしたものの、これは何かある、きっとある、絶対、隠していたことを詰めてくると思っていたのにこの笑顔だ、何かあるに決まっている。そうか、もしかすると、思った以上に高額な宝石を見つけたとかか、いやいや、そんなの自分に言わずに勝手に買うに決まっている。そうなると、うーんと悩んでいると、


「フリード、どうしたの?顔色が悪いわあ」


「いや、そんなことはないよ、王都の屋敷で君に出迎えてもらえるなんてこんなに嬉しいことはないと思っていただけさ」


「そう?、そう言ってもらえると嬉しいわ。最近、忙しいのかお話どころか大切な事を手紙ですら書いていただけないのですものね」


う、きたぞ、さあここは我慢だ


「うふふ、でもそれよりも大切なお話があるのよ・・・・」






「駄目だ、駄目に決まってる。絶対許さん」

フリードは怒り心頭である。


「エリザベスが、ゼオン侯爵と結婚したいだと!冗談じゃない。侯爵は、私より少し年下なだけなんだぞ!なんで、そんな男に可愛い娘を嫁がせなきゃならんのだ!」


「あら、そんなの決まっているわ、エリザベスが侯爵のことを好きだからよ」

とセーラがさらっと言う。


「ぐぬぬぬ」とフリードが唸っていると、


「まあ、ゼオン侯爵がうちの娘とは結婚したくないといえばこの話は終わりになるのだからまだ何も決まったわけではないわ」


「うちの可愛い娘と結婚したくないとはなんだ、許せん!」


段々、わけがわからなくなっている。


「とりあえず、はっきりしていることは、エリザベスは、一目惚れしていて、もし、彼と結婚できなければ多分次に新しい恋に落ちないかぎり結婚しないと言うことかしらね」


「馬鹿な。そんな馬鹿なやつはアーサーだけで十分だ!」


「あらあ、兄妹だし、似ていても仕方ないのでは?というよりは、あなたに似たのでは?」


ぐっと言葉に詰まる。ずっと結婚してくれとプロポーズを繰り返し、御前試合で優勝したら考えてあげると言われて優勝して、みんなの前で公開プロポーズをしたのは自分である。


「まあ、相手の出方を待ちましょう。あちらは、ずっともう亡くなった奥方を忘れずに結婚されていなかった方ですから。」


フリードは、男親というのは、結局悩むだけでどうしようもならん、妻に任せるしかないと諦めつつ、とりあえず、アーサーの件がうやむやになっただけでも良しとするかと思ったのだった。


(ほほほ、今日は、勘弁してあげるわ。また、別の時にね・・・セーラの心の声)


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