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ケント子爵領

シャーロットは、しばらくして、ケント子爵領にアーサーとギルバートとともに訪れた。そこは、もう国の管理となり、元の庭は一部を研究機関が使う以外は、すべて焼き払われていた。悪用を防ぐためには仕方ないことだったが、黒く焼き払われた土地をみると涙が出て来た。



屋敷は、研究機関が使うとのことで改修されていたが、以前の趣も少し残されていた。そして、その裏にある代々のケント一族の墓に両親は葬られている。


「お父様、お母様、遅くなりました。戻ってまいりましたよ。皆に助けていただいて、ギルバートが立派になってくれました。私もアーサーと婚約いたしましたよ」


「父上、母上、私も、貴族学院に無事編入させていただきました。同級生に負けないように頑張ります。見守っていてください。」


「義父殿、義母殿、必ず二人を幸せに、そして、自分も幸せにしてもらいます。安心なさってください。」


3人で、両親の墓に花を供える。


「姉上、しばらくはケント子爵の屋敷の周囲は国の管理となりますが、領民達は隣の領主であるボーヌ子爵が管理されるようです。侯爵からもお口添えいただいたようなので、領民も幸せだと思います。 ウィリアム達多くの使用人が、フリードおじ様のところで働かせてもらっています。

ハンス爺だけが、麻薬の栽培を手伝わされていたのですが、残念ながら戻ってこれませんでした。」


「もしかして殺されたの?」


「いや、そうではないようだ。ウィリアムからもハンス爺一人だけゲルトランの命令で屋敷に残されたので心配だと聞いていたので、取り調べの時に確認してもらった。兵達によると、残されたあと、しばらく元気だったらしい。ある日、夜までは特に変わりなかったが、朝には冷たくなっていたそうだ。それまでは、渋々麻薬作りを手伝っていたようだが、高齢だったからね。しかし、その結果、麻薬作りが予定通りにうまく行かなくなってゲルトランはドルミカ王国の誘いにのるようになったらしい。遺体は使用人のための墓に埋めたそうだ。」


アーサーが肩をそっと抱く。


心の中で、美咲が脳卒中だったのかもと思う。美咲の父も診療所で忙しく働いていて、夜中に意識が無くなっているのに母が気がついたのだ。島で高度な治療は出来ず医師も父以外にはいない、救急のヘリで本島に運ばれたが、間に合わなかった。



「ハンス爺。ずっと小さい時から庭で一緒に過ごしていたのに。最後に天国に召されるときが一人だったなんて」


と涙が出る。


アーサーが、慌てて、

「シャーロット、王太子殿下からも墓参りには来て良いと許可をいただいたからな。また、これるよ。」

と慰める。



「ありがとう。そうね。これが最後ではないのですもの。それに、私、いつかこの庭でそれこそ、この研究機関のひとと一緒に研究できるように頑張るわ。麻薬は悪用すれば大変な被害があるけれど、きっと怪我をした人には、麻酔薬や痛み止めとして使えると思うの。」



アーサーとギルバートは顔を見合わせ、


「兄上、言った通りでしょ。」


「ああ、全くだ。」


シャーロットはなんのことかわからない。なぜ?という顔をしていると、


「普通の人とは違う発想を持っているということですよ。」


とギルバートが笑う。

「それに、人のために何かしてあげたいという気持ちが強い頑張り屋だということだよ。それがシャーロットだからな。」とアーサーが、シャーロットの額に軽く口づけする。



「褒めていただいているのかよくわからないけど、二人が幸せそうであれば嬉しいわ。」


「そうですね。幸せになりましたよ。」


3人は、ケント子爵領を後にしたのだった。


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