ゼオン侯爵家のお客様
「ノア様、何か手紙などは届いていませんか?」
「シャーロット様、今はあなたはこの屋敷のお客様なのですから、私に様はおつけにならないでください。」
「そうは言っても、私は、元子爵の娘ですもの。ノア様も子爵ですから様をつけるのは当然ですわ。」
「では、せめて さん でお願いします。手紙はまだ届いておりませんね。まだようやく王都に到着されたぐらいではないでしょうか?ルートを変更するために、兵を二つに分けるので、王太子殿下の護衛のために自分も王都までついて行くと旦那様から手紙がありましたし、そう考えると迂回したルートなので、普通よりもう数日かかるはずです。」
「そうですね。何度もごめんなさい。」
「いいえ、お気持ちはわかりますから。ぜひ刺繍や庭のハーブの確認や計画などをしてお過ごしください。そろそろエマが来ると申しておりました。」
「まあ、エマも3人の子供がいてパン屋さんも忙しいのに・・・」
「お嬢様、何をおっしゃっているのですか。お嬢様のお世話を他の方にお任せするなんて、少なくともゼオンにいらっしゃる間は絶対できません。」
とエマが部屋に入って鼻息荒く宣言する。
エマは、近所の母親たちに子供を預けて、毎日2、3時間程度シャーロットの世話をしにやって来る。髪を染めるのをやめて少しずつ本来の金髪に戻って来た髪の手入れや、長い間働いていて荒れた手の手入れなどをいそいそと手伝うのだ。
「でも、できれば、私は治療師として仕事をしたいのだけど・・・」
「「ダメです。」」
二人ともが一緒に声を出す。
「お嬢様、治療師として誇りを持って過ごされていたので、その気持ちはわかります。ただ、シャーロット様に戻った以上、治療院で働けば貴族の女性がいると誘拐される恐れも出て来ますし、変なゴロツキに襲われる可能性も出て来ます。」
「そうです。旦那様が戻ってこられたら、治療師としてなのか、医師として勉強するのか色々と相談してはと思いますが、少なくとも護衛を準備するとか、整った環境で仕事をしていただくようにしたほうが良いと思います。それまで、ぜひ、ハーブの研究をするとか他の治療師にアドバイスするとかそう言ったことを中心に過ごしていただければと思います。」
二人は、シャーロット様は、伊達メガネを外して身なりを整えるとどれほど美しいのかわかっていない、外に出ることが今や危険だということをわかっていただかなければとしみじみしてしまう。
ノアは、実はエミリーが貴族令嬢で、アーサー卿の婚約者だったということがわかり、ああ旦那様の再婚が・・という思いもあった。しかし、そもそも、旦那様にそのつもりは無いと以前断言されて諦めていたこともあり、アーサー様のことが好きというシャーロット様を素直に祝福できたのであった。
また、侯爵から、今後、二人を養子と養女として迎えたいという手紙も内密に受け取っており、侯爵令嬢としてのシャーロット様にどうやって治療師やハーブのアドバイザーとしての役割を担ってもらうのか心を砕いているのであった。
そうして、それから10日近くたった頃、王都新聞が王太子暗殺未遂事件について号外を出して来たのだった。
最終章となります。あと少しお付き合いください。
その後番外編も予定しております。




