王太子とアリスト
イーズス伯親子が退席したあと、王太子は、酒とツマミを侍従に用意させ、二人で酒を酌み交わした。
「旅行中に思ったが、ギルバートはそなたが言うように良い少年だな。将来が楽しみだ。」
「ええ、シャーロットもおそらく我が国にとって貴重な人材になると私は確信しているのですよ。」
とアリストは微笑む。
「それなのに、お前は養女として彼女を手放して良いのか?」
「養女とするのになんで手放すと言うことになるのですか?」
とアリストが尋ねてくる。
「わかっているだろう、彼女を後添えとして迎えて子供が生まれたらゼオンは安泰だ。美しく頭の良い、若いこれから何人もの子供も産んでくれそうな女性、
なんでアーサーにくれてやるんだ?お前が奪えば良いだろう」
「これは、これは。アーサー卿を今後の国防の要として重要視している王太子の発言とは思えませんな」
と驚いたように言うと、
「ふん、アーサーが気がつく前にお前が婚約でもしていたらアーサーはどうしようもなかったのにと言うことだ。アーサーのことも大切に思っている、だがな、私にとって、お前は、貴族学院でずっと一緒だった親友だぞ。親友が、未だ結婚もせずに独り身なのを一番に心配するのは当然だろう」
実は、ノアからも全く同じことを一年前から言われていたのだ。いっそ、エミリーを妻にしてはどうかと。平民であっても、ノアが養女にすれば子爵令嬢になることができる。そうすれば、侯爵の後妻としても受け入れられる。そもそも、ゼオンの屋敷の者たちみんな、エミリーに好感を持っている。エミリーが侯爵夫人となったらきっとみんな支えてくれると。
しかし、アリストはそれをしなかった。ジルから、エミリーには好きな男がいたと聞いていたからだ。
自分も、ずっと妻のことが長い間忘れられずにいた。そんな自分が、ほかの男を想っている女を後妻として迎える、うまくいかなかったらお互い不幸だと思ったのだ。
「同じようなことを 昨年、家令に言われました。ただ、自分には勇気がなかったのですよ。エミリーには好きな男がいたとギルバートから聞いていたのでね。私は、妻を亡くして臆病な男になってしまったのです。プロポーズして困った顔をされたらどうしようと。昔、妻にプロポーズしたときには、断られても何度でも挑戦すると言う意気込みでプロポーズしたのにね。
やはり、歳をとったのだと思います。卑怯かもしれませんが、恋をするときには、相手が自分を好きだという女性にしたい、自分が一方的に相手を好きでい続けるのは辛いと思ったのです。」
王太子は、ため息をつきながら、
「つまり、一年前に、お前は一方的に彼女に好意を持っていたが、そんな不毛な恋は早々に諦めようと思ったということだな」
とこちらをみる。
アリストは、貴族らしい微笑みで返したのだった。
作者としては、アリストにも幸せになって欲しいので番外編を予定しています




