囮と襲撃
お待たせしました。ここから、ざまぁが始まります。
ケント領近くのボーヌの山道
午後遅くに10名ほどのマントを被った男たちが崖の上に集まっている。
「おい、そろそろ馬車がやって来るのではないか」
「そうだな。そうしたら、この石を落としてがけ崩れを起こすと。」
「そうして、立ち止まった馬車とその一行を近くに隠れている兵達で襲撃するという手はずだな。」
「ああ、うまく行ったら、襲撃するのはあちらの兵隊さんたちに任せて俺たちは知らないふりをしてケント領に戻ると。隣の領地で起こったことだからな、ケント子爵としては知らぬ存ぜぬで通せるということだ。」
「俺は、ついでにあちらの兵隊さんと一緒に襲撃に加わるぜ」
そう言ったのは、なんと、ゲルトランの手下の兵士ジョンだった。
「おい、ジョン、お前、ドルミカの内偵から、ペリエにいたのが第二騎士団だったと知ってからずっとそれだな」
「お前、よっぽど第二騎士団が嫌いなんだな。」
と他の男たちがニヤニヤする。
「当たり前だ。あのアーサーという気にくわない若造を殺してやらないとスッキリしねえからな。」
と話をしていたら、
「そうはうまくはいかないぞ。だが、手合わせしたければ手合わせはしてやろう」
と後ろから声がする。振り返るとそこには、
アーサーと第二騎士団が剣を持って立っていた。
「な、なぜ、ここに騎士団が。」
「馬車はどうなった。なぜバレたんだ。」
「お前たちの考えることなぞ、お見通しだということだ。用意していた馬車は囮だ。あいにく、王太子殿下夫妻は全く別のルートで王都に向かわれている。王都にいく道はこの道だけではないのだよ。
そして、先回りしてお前たちの動きを内密に探っていたのだ。
王太子殿下妃殿下を暗殺しようとした罪でお前たち全員逮捕だ。
逃げるやつ歯向かうやつは殺せ。ただし、全員は殺すなよ、ドルミカ王国とのつながりをはっきりさせないといけないからな。」
下の方でも、叫び声が聞こえる、襲撃するつもりで隠れていた兵が逆に攻撃されているようだ。
「ちくしょう」と襲撃兵たちが、剣を持ってやって来るが、すでに、攻撃を準備していた第二騎士団には勝てるわけもなく、何人もが倒される。
アーサーは、
「さあ、俺を殺したかったんだろう。やれよ。相手になってやる。」
とジョンに声をかける。
「ちくしょう。」
と言いながらジョンが剣を使って攻撃して来るが、アーサーはそれを軽くかわしたと思ったら、背中をバッサリ切りつけ、
「うわーぁ」と倒れたところでで両足の腱を切る。
「とりあえず、お前は殺さない。殺したくて仕方ないが我慢しよう。誰にどう頼まれたのか、ドルミカ王国との関係、前ケント子爵の殺人、ゲルトランとの関係など白状させる内容が多いからな。」
と剣を鞘に収めながら冷ややかに声をかける。
「副団長、ほぼ制圧しました。」
と山道周辺に隠れていた襲撃兵を鎮圧したオスカーが声をかけて来る。
「ご苦労。よし、これから、ドルミカ王国との関連を突き詰めるぞ。自国の王太子殿下妃殿下を暗殺しようなどという輩、一掃してやる。」
「いやあ、よもや黒幕にゲルトランが噛んでいたとは驚きですね」
とオスカーが驚く。
「見た時にはまさかとは思ったが、この男を忘れることなど絶対無いからな。この男は、ゲルトランの手下だ。このままケント子爵を捕まえるぞ。」
馬でケントに向かう。
「シャーロット、君のおかげだ。君の情報と考えがなければここまでうまくいかなかったに違いない。いま、君はゼオンでどうしているのだろうか?」
とシャーロットのことを思う。
シャーロットの手紙には、治療した捕虜が2回目の襲撃があること、内通者がいることを教えてくれたので、注意して欲しい、国内で本来であれば簡単に襲撃などできないことを考えると、自分の父の時のように数ではなく、その地の状況を利用して攻撃して来るのではないかと心配だ、そして、その場合、王都からゼオンのルートで一番地の利がいかせるのは、山と森の多いボーヌではないかと思う、できることなら、他のルートを使って迂回した方が良いのではと書かれていた。
そして、最後に、あなたが、傷を負ったらと想像しただけで心が凍るように感じ怖かったです。無事でいてください。もう一度あなたと話し合いたい、ゼオンであなたが来てくれるのを待っていますと締めくくられていた。
その賢明さにも当然、驚いたが、ゼオンで自分を待つという言葉を読んだときに、嬉しさのあまり言葉が出なくなった自分がいた。
「シャーロット、待っていてくれ。ゲルトランとその一味を全て捕らえてから会いに行くよ」
と心の中でつぶやく。




