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捕虜達


「全く正気とは思えません。意味もないし、理解できないですよ。一部の兵の反感を買うかもしれませんよ。」


砦のピーターは不快そうにいう。


「すみません。そう言われても仕方ないと思っているわ。」



「じゃあ」

とピーターが言いかけると、


「でも、もし、ピーターさんや砦の人達が、戦争であちらの捕虜になった時に、あとで処刑されるかもしれない、奴隷として使われるかもしれない、そんなときに、せめて痛み止めや熱冷ましだけでももらえたらどんなに辛さが軽減するだろうと思ってしまうの。」



とエミリーが辛そうに答えるのを聞いて、ぐっと黙り込んでしまう。


エミリーは、ペリエを去る前に捕虜に最低限の治療をしてやりたいとディランとピーターに頼んだのだった。


確かに、海賊はともかく、一部は、ドルミカ国の兵士で、彼らはあくまで命令でこちらを攻撃してきたのだ。今回のことで、もしかしたら、自分達がドルミカ国を攻撃するかもしれない。そして、そこで捕虜となる可能性だってあるのだ・・


「さすがエミリーじゃの。確かに、50年前にわしが戦争に行った時、戦地で辛いのは負傷した兵士をおいてその場を離れないと行けなかったことじゃ。いっそ、毒でも渡した方が良かったのかと悩んだこともあったのう。痛いのは辛いもんじゃ。」


とディランがいう。50年以上前に戦争について行った治療師がそう発言するのを聞いたピーターは、ハーッとため息をついた後、


「わかりました。とりあえず、最低限の治療のみですよ。」

と捕虜のいる牢屋への扉を開ける。


檻の向こうに、20畳ほどの牢屋に何人もの兵士が寝ている。饐えた匂い、悪臭、血の匂い、化膿した傷の匂いがしており、エミリーは吐き気を堪える。


「苦しい。」「助けてくれ」「痛い、痛い」という声がいくつも聞こえる。


一方、

「おお、女だ。なんで女がいるんだ。」「おい、姉ちゃん、せっかくだからこっちにこいよ、やらせろよ。」

と声をかけてくる者もいる。


おそらく無傷だったものだろう。


勇気を出して声を出す。

「私達は、治療師です。許可をいただいたので、痛み止めと解熱剤、そして、傷の塗り薬を持ってきました。どうぞ、使ってください。」



からかっていた声が止まってシーンとする。

一人の兵隊がいう


「おい、姉ちゃん、なんでそんなことするんだ。ご親切なこった。捕虜に親切にしてやった私ってなんて素敵って思ってんのか!はっ!もしかして毒じゃねえのか?むしろ、毒の方がいっそ死ねてありがたいがな。」


と睨みつけてくる。


「偽善と言われたらそうかもしれません。でも、命令で兵として動かないといけないのは、どこの国でも同じです。あとで処刑されるかもしれない、奴隷として使われるかもしれない、でも、今、せめて、痛みや苦しさが軽減したらと思ったのです。」



「わしも治療師での。50年前戦争した時にも戦地に行ったんじゃ。その時の兵士の痛みや苦しさは今でも忘れるもんじゃない。わしらは、動物ではない、人なんじゃ。人として苦しんでいるものがいればその辛さを軽減してやりたいと思うんじゃよ。」


牢屋はシーンと静まった。


ディランと二人で、熱冷ましと痛み止めを苦しんでいる兵に経口補水液の水と一緒に渡す。怪我をして熱をおびているところに塗り薬を塗り、布をはる。

追加の解熱剤と痛み止めを渡して、そこを離れようとする。

そうした時、


「待ちな。先生よ。」と

男が声をかける。


振り向くと、先ほど悪態をついた男がこちらを見ている。


「こいつらに治療してくれてありがとよ。一つ、礼だ。どうせ、俺らは、もう国から見放されたからな。


俺たちは、陽動だ。攻撃されて無事助かったと安心しているところで、第二陣が、あんたたちの王子様を狙う手はずだ。王都には色々と情報を流してくれる奴らがいるみたいでな。今回の日程もだいたいわかっていたからな。まさか、第二騎士団がついてくるとは思わなかったけどな」


「なんですって!」「なんと」と驚く。

「ありがとう、感謝します。」とお辞儀をして、急ぎ、外へ出る。


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