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エミリーの危機

アーサーたちは砦に入った後、状況を確認する。

「敵の数は?」


「約30艘の小船で各船に5人ほど乗っているようです。」



「150人程度で王太子夫妻を襲おうとは片腹痛い。しかもこの砦は磐石だ。蹴散らしてやるぞ。」


護衛は70名ほどだが、精鋭ぞろいである。また、もともと砦にいた30名ほどの護衛兵もいる。


騎乗して、弓で蹴散らしながら、上陸した海賊を返り討ちにして行く。


新たな警報が鳴り響く。


「閣下、北の沿岸沿いから新たに兵団がやってきます。その数50!」



「なんだと、2手に別れるぞ。オスカーそちらを任せる。20名はこちらについてこい!国境方面に馬で向かう。」


「おい、あれは!」「まずい、第二騎士団だ!この間、ナーベラの山賊をせん滅した奴らだ!」



両軍が入り乱れて争うが、精鋭ぞろいの第二騎士団が徐々に優位となる。



「逃げろ!全軍撤退するぞ!」と逃げて行く。


「深追いはするな!それよりも街中に入り込んだ海賊や兵士を見つけるんだ!」



「閣下!」

オスカーがやってくる。


「そちらはどうだ!」



「は!数人の兵を捕獲しました。負傷したものも多くおりますが、被害は大きくありません。現在、街を襲撃している海賊の残党狩りを開始しています。」



「よし!我々も、追撃するぞ!」




ベルグ治療院では、


「金目のものを出せ!ちょうど良い、女を奴隷として連れて行くぞ!」


と3人ほどの荒くれ男が治療院を襲っている。


もともと治療院にいた男では太刀打ちができない。


ドンっと倉庫のドアが開く。


「へへ。こんなところに隠れてやがったか」



「こいっ!」



とエミリーとともに何人かの女が腕を掴まれて引っ張られる。

「いやあ、誰か、助けてぇ」


と女性たちが叫ぶ。


「兄貴、どうやら仲間たちがどんどんやられてますぜ!さっさと逃げやしょう。」



「よし、その辺にある金目のものと女を取れて行くぞ!」


とエミリーを抱え込む。


「やめて!離して!」

と叫ぶが、男の腕はビクとも動かない!


ナイフをポケットから出して、男の腕にエイっとさす


「いてえ!このやろう!」



と言っている間にすり抜け、エミリーは走り出す。



「まて!こいつ!」


と追いかけられる。


治療院の外に出て街へ向かう。


躓いて倒れてしまい、「捕まえられる!」


と思った瞬間、





「うわあ!」

と男の声が聞こえ、みると弓矢が男の肩に刺さっている。同時に、馬が横を通り、馬上の騎士が一刀両断に男を切った。そしてその後を何頭もの騎士が馬で通り抜けて治療院の方に向かって行く。



「大丈夫か?」

と声をかけながら、騎士が降りてくる。アーサーだった。


涙が出て止まらない。体も震えが止まらない。立つのをアーサーが支えてくれる。


「アーサー….アーサー…」


と呟く。


しばらくすると、「副団長!残党は全て捕まえました。」

と兵が声をかけてくる。


「エミリー先生!大丈夫でしたか?」


聞き覚えのある砦の兵たちが声をかけてくれる。


「大丈夫」

と言いたいのだが、怖くて声が未だに出ない。


「エミリー先生、大丈夫ですか?こちらも負傷者が出ています。治療を手伝ってもらえますか?」


とピーターが声をかける。


そうだ、私は今はシャーロットではない、治療師エミリーだ。くっと力を入れて涙をふいてアーサーをみる。


「大丈夫です、治療院に負傷した方々をお連れください」


と微笑んで 治療院に走り出した。



呆然とエミリーを見るアーサーが


「シャーロット?」


と呟いたのには気がつかないままだった。




治療院には、どんどん負傷者が担ぎ込まれる。比較的軽症のものが多い。


傷を用意しておいた水でよく洗った後、煮沸した糸と針で創部をぬう。マットレス縫合と言う縫合法である。こうすると止血もしやすく創部の治癒も早い。


骨折したものには、副木で患部がこれ以上悪化しないように固定する。手術はできないし、ギプスもない。昔ギルバートの時に使用したように針金と布で作った副木代わりの装具を使用する。


ハーブから作った鎮痛剤を渡す。抗生物質は無いのが辛いところである。抗菌作用があるらしいと言われるハーブを追加で渡す。

こうやって時間を忘れて治療にあたる。


最後の負傷した兵の治療が終わりほっとしたのはもう夕方だった。


休息のために処置室をでて待合室に入る。



そこには、アーサーが立っていた。





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