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王太子夫妻の到着

警備体制を確認の上、改めて王都より王太子ご夫妻のエクア国への公式訪問へ出立となる。


「ふう、流石に王都からエクア王国は遠いですわね。もう、10日目ですわ。毎日、諸侯が歓迎してくださるのですが、流石に疲れてまいりました。」


「ふふ、そうだね。まあ、でも、今日は、ゼオンに到着だ。久しぶりにゼオン侯爵に会うのが楽しみだよ。君も、ゼオンの庭を見るのを楽しみにしていただろう?」


「ええ、殿下。ゼオンを訪れたことのある夫人たちが絶賛しておりましたの。とても癒されるのだと。本当に楽しみですわ。」


「侯爵にも晩餐会はごく内輪のものにして欲しいと頼んである。君も少しゆっくりできると思うよ。」


「王太子殿下、妃殿下、ようこそいらっしゃいました。」


ほとんど全ての使用人が玄関前に勢ぞろいして頭を下げて夫妻を出迎える。



「うむ、出迎えご苦労」


ギルバートも末席にて頭を下げている。その前を王太子夫妻、侯爵、そしてその後ろにアーサーが控えて護衛をしている。


「あ、アーサー兄上だ。ご立派になられた。う、う、声をかけたいけどそんな失礼なことはできない。」


頭を下げて、通り過ぎた後に顔をあげる。


夫妻達が玄関を入ってドアが閉まった瞬間に使用人がホッとする。


「あー、緊張したなあ。」

「王太子様って素敵よね。」

「妃殿下のドレスは本当に素晴らしかったわね。」

とおしゃべりが始まる。


ノアが、

「さあ、おしゃべりはせず、各自仕事をしなさい」

と使用人を促して行く。


ギルバートは、随伴の兵達や侍従達の食事や身支度、馬の世話などを手伝うことになる。


「おーい、こちらにも水」


「パンのおかわりを頼む」


護衛兵や侍従が入れ替わり使用人向けの食堂にきて交代で食事を取るため、厨房と食堂を行き来する。


「こちらもどうぞ」

パンをサーブする。使用人向けのパンは、エマの家のパンだ。


「お、このパン、うまいなあ。ハーブが入っている。こちらの茶色のパンもうまい。」


その姿を見たオスカーは、ああ、あのパン屋で見かけた少年だと気がついた。そして、じっとみて気がついたのだった。前ケント子爵ににているのだと。


「エマのパン屋でケント子爵に似た少年を見かけるなんて、これは偶然か?」


声をかけようかと悩んでいたが、このような忙しいときに声をかけるわけにはいかず諦めたのだった。





「まあ、なんて素敵な風景なんでしょう!これほどの庭を見ることができるなんて。今まで私たちが知っている庭とは全く違うものね。」


と妃殿下が驚きながら絶賛される。ちょうど、ラベンダーが満開を迎え丘一面が5色のカーペットとなっている。


「お褒めに預かり光栄でございます。」


と侯爵も嬉しさが顔から溢れている。


「本当に、この数年、ゼオン公爵領のハーブと庭は有名になったな。何か理由があるのか?以前は、ハーブと言えば、ケントだったのだが、逆転したな。しかも、どんどんハーブを中心とした産業が拡大しているではないか。

今や、ケント領は荒れ放題だという噂だ。」


「実は、数年前にケントから移住してきたものがおりまして、そのものにハーブ作りや庭造りを手伝ってもらったのです。」


「まあ、そんなことがありましたのね。ぜひ、そのものに会ってみたいですわ。」



「申し訳ありません。今、そのものは、ペリエに移住しております。もしよろしければ、明日、ペリエにご一緒した時に御前に来るようにしたいと思います。」


アーサーはドキッとした。ペリエに移住したもので、ゼオン侯爵が気に入っている、侯爵家のハーブにも詳しい。もしかして、あのときに会ったエミリーのことなのか?つまりあのエミリーはケント出身ということ?


「そのものは、女性ですか?」と尋ねる。


ゼオン侯爵が「おや、どうしてそう思われたのですか?」

と聞いてくる。


「下見の時に女性の治療師が侯爵家のハーブに詳しいと聞きましたので。」



「そうです。彼女はケント出身なのですよ。また、明日にでも妃殿下にご挨拶させていただければと思います。」


それ以上、王太子と妃殿下の前でエミリーの話ばかりするわけにはいかない。他の話題に話がうつる。それは、エクア王国の訪問の事と同時にドルミカ王国のことだった。


「ゼオン侯爵は、どう思う。ドルミカはまた何か仕掛けてくるだろうか?」


「正直なところ、そこまでの力はないのではと思っています。しかし、いくらでも小競り合いはしようと思えばできること、あちらは、海賊を支配下に置いているように思えます。うちの領民の漁師たちや商船が襲われないか心配です。護衛船を出すようにはしていますが十分とは言えません。」


「ふむ、海軍の拡充が必要だな。海軍は、第5騎士団か。」


「御意。」


「明日の港の視察が楽しみだ。」


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