気になる女性
「副団長、いかがしましょうか?体調の悪い兵はここに残しますか?」
はっと気がついたアーサーは、
「そうだな、我々は、先を急がなくては。では、オスカー、兵たちの宿の手配などを砦のピーターに頼んでくれ。そして我々は出発だ。」
「治療師殿、では我々は、先を急いでいる。失礼する。」
「安全に王都にお戻りになることをお祈り申し上げます。」
とカーテシーをする。
その姿に昔のシャーロットをふと思い出しまた打ち消す。
「よし、出発するぞ。」
途中、ゼオンにも立ち寄り、侯爵に5名ほどの兵をペリエに残したことを説明する。
「なるほど、貝毒か。昔から港ではこの時期に貝を食べると亡くなるものや下痢するものが多くて、原因がよくわからず困っていたのが最近無くなったとは聞いていたのだよ。」
「とりあえず、我々は急ぎ王都に戻らなければならない。ご面倒をおかけしますが、よろしく頼みます。彼らには、治ったらすぐにあとを追いかけるように伝えてあります。」
「了解した。気をつけて」
「若、随分、あのエミリー先生が気になるようですね。」
「気になるというか、本当に珍しい治療をするからだ。」
「いやいや、介抱されている兵士をものすごい目で睨みつけてましたよ。兵が体調が悪いところに睨みつけられて意気消沈としてましたから。」
「気のせいだろう。ただ・・・」
「ただ?」
「彼女を見ていると、なんとなくシャーロットを思い出すんだ。シャーロットが兵士の腹に触ったり、背中をさすったり、飲み物を飲ませているように想像してしまってちょっと不愉快に思っただけだ。」
「いやいや、それが睨みつけるっていうんですよ。ただ、シャーロットお嬢様を思い出すとは、また荒唐無稽というか。全然、違うじゃないですか。たおやかな上品な花束が似合うシャーロット様と、切り傷だろうが、嘔吐だろうが下痢だろうが気にもしない、ネズミを捕まえて死ぬかどうか見る?天と地ですよ。 天国にいるシャーロットさまに失礼ですよ。」
と本気で呆れられている。
それはその通りだと思う。自分がずっとそばで守って行くのだと思っていたシャーロットとは全く違う。だが、どんな患者にも冷静に対応して、できることをしようとするエミリーに対しても他の女性とは違う好感をもつ自分がいる。
「まあ、私としては、真逆のタイプだとしても、若がシャーロット様以外の女性に好感を持つことができるとわかっただけでも喜ばしいことだとは思います。流石に結婚相手としては難しいとは思いますが。また、今度の訪問の時にぜひあう機会を作りましょうよ。」
「……」
返事に悩むアーサーであった。




