麻薬の取り締まり
1年が経ち、アーサーは19歳となった。最年少で副団長となったアーサーだったが、評価は高い。兵士の指導やドルミカ国の動向を探るなど仕事は増える一方となっている。
シャーロットの情報は、もうほとんど得ることができなくなっていた。オスカーたちは、ゲルトランの悪事について探すが、なかなか尻尾をつかむことができない。
ただ、ウィリアムが、ケント領から解雇され、騎士団で、使用人として自分の世話を担当するようになったのはありがたかった。
「アーサー様、オスカー様、お茶をお持ちしました。」
「ウィリアムか。今日は、ミントティーか。」
「はい、市場で高質なミントのハーブを見つけたので買ってまいりました。ただ、ゼオンの品だそうで、乾燥したものにはなります。」
「ふふ、昔はよくシャーロットの摘んできたミントティーを冷たくして訓練の後に飲んだな。」
「はい、懐かしゅうございます。」
お茶を飲んでいると、ドアをノックされる。ウィリアムが確認して戻ってくると、
「第四騎士団団長のアスコット様がおいでです。」
アスコット殿がと不思議に思いながら
「お通ししてくれ」と返事をする。
「いよお、アーサー、元気そうだな」
30代のアスコットは、自分が子供の頃に剣を指導してもらった相手でもある。
「ご無沙汰しております。アスコット殿」
挨拶するが、
「俺とお前の仲で堅苦しい挨拶は抜きだ。今日は、相談があって来たんだ。しかし、いい香りだな。俺にも頼む。」
どかっとソファーに座るとウィリアムに向けて注文する。
頭を下げて嬉しそうにウィリアムが退席する。
「で、相談とは?」
「このところ、どうも、街に怪しい薬が出回っている。麻薬のようだ。しかも、どうもたちが悪いのが、貴族院のお子ちゃまがそれに関わっているという噂がある。」
「そんな。麻薬は禁止されており、医学部でのみ慎重に扱われているものですよ。貴族院のお子ちゃまが関われるようなもので無いはずです。」
「あくまでも噂だ。てっきり、医学部で横流ししているやつでもいるのかと思って探ったのだがそれらしいものは見つからない。」
「しかし、確かにその取り締まりは、第3、第4騎士団の仕事でしょう。私になんの関与が可能なんですか?」
「気になるのは、外国、ドルミカ国が関与しているのではないかということだ。この間、売買の現場を抑えようとして残念ながら逃げられたんだが、どうも、取引の時にいたやつの一人が外国語を喋りながら逃げたらしい。」
「ドルミカ国ですと!」
第二騎士団は、外国との紛争や外交が中心となる騎士団である。
「わかりました。お手伝いしましょう。ドルミカ国に派遣している内偵にも麻薬の取り扱いが増えてないか確認しましょう。」
「頼む。あとは、貴族学院でどうなっているのかだが。」
「失礼ですが、よろしければ私の弟に探らせましょう。貴族院の剣の訓練を今でも時折手伝っているようです。内偵のようなこともできると思います」
オスカーが提案する。
「それは助かるな。」
「とりあえずこの話は当然極秘で頼む。」
ドアがノックされ、ウィリアムの声が聞こえる。
「新しいミントティーをお持ちしました。」
そこでこの話は終了となったのだった。




