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ペリエ治療院

初めて作った作品です。よろしくお願いします

ペリエの治療院



「いてえ、いてえ、やめてくれ。」

「ガタガタ、言わないの。たった、4針縫うだけよ。大の男がなにさわいでいるの!」


エミリーは、喧嘩してナイフが少し腕をかすめてぱっくりと切れてしまって出血していると担ぎ込まれた男を皆で抑えてもらって縫合しているところである。


「縫うなんて聞いたことねえぞ、俺の腕は布じゃねえ!」

と大声で叫んでいるが、周囲のスタッフは、

「ハイハイ、普通はそうだけどね。でも縫ったほうが絶対綺麗によくなるから。エミリー先生に任せときな。」


他の患者も

「おう、俺もこの間失敗して縫ってもらったけど綺麗に治ったぜ。痛いけどちょっと我慢しな。」

と声かけてくれる。


ここは、ベルグ治療院。辺境にあるペリエという街の治療院である。王都からは10日以上馬車でもかかる場所にある。

「エミリー先生、院長が呼んでいるわよ」

と受付係りのローズが教えてくれる。

「わかったわ。縫合が終わったら行くからと伝えて」

と返事をすると「了解」と機嫌良さげに返事をしてくる。


「なんかあの姉ちゃん、いつもより機嫌が良いじゃねーか」

「さっき、なんかすげーハンサムを案内していたからな」

など喋っている。

エミリーはそんなことは無視して縫合に集中する。さて、できた、あとは、もう一度消毒して、ガーゼで保護してと。

「はい、終了よ。あとは、痛み止めとのみ薬をもらって帰ってね。」


「え?終わったの?え、確かに血がもう出ていない。あれ、痛みも少ないかも?」


「だから言ったでしょ。」

と口を覆っていた布を外して笑う。

笑うとそれを見た患者が顔を真っ赤にしている。

エミリーはじゃあ、とりあえず一旦呼ばれたので行ってくるねと処置室を出て行った。


「あーあ、ここに新たな恋の犠牲者が一名出現か。先生、笑うと超絶可愛いもんな。本人は、全く自覚なしだけど。」


「それな、メガネもしているし、普段は全然笑わないし、髪の毛は茶色でボサボサしているのをまとめていて素っ気無いし。処置している時なんて口を布で覆って仕事をしていることが多いし、ソバカスなんかもあるから感じ悪く見えるんだけど、たまに処置がうまく行った時とかに笑うことがあってそうするともう全然違って見えるんだよな。」


そばにいた他の患者が、いま治療してもらったばかりの患者にいう、

「おい、お前、さっきの笑顔は忘れろ、覚えていても全く報われず辛いからな。 エミリー先生は氷の女と呼ばれているからな」

と声かけると患者は呆然としたままうなずくのだった。


エミリーは、自分の治療院の院長室のドアをノックした。来るように言われてから30分ほど経つ。患者の対応に時間がかかったのだが、

「どうぞ」という院長の声を聞く限りそれほど怒っているようには感じられなかった。院長だって急に呼ばれてもすぐ来られないのはわかっているものねと思いながら、「失礼します」とドアを開けながら挨拶をして部屋に入ったときに、エミリーは息が止まった。



目の前のソファに座っているのは、いつものもっさりした白衣を着た熊のような院長のベルグと、漆黒の髪に海のような碧い目、整った顔立ちの騎士団と思われる制服を着た男だった。


ベルグは、

「やあ、来たね。どうしても急患なんかもあるので時間がかかると謝罪していたところだ。 こちらは、王都からこられた第二騎士団の副団長をされているイーズス卿だ。 この周辺の警備体制や医療体制などの確認にこられたのだよ。」


エミリーは、大丈夫、私に気がつくわけはない、全く昔の私とは違うのだからと自分を励ましながら、

「初めまして。エミリーと言います。こちらの治療院で治療師として働いております。よろしくお願い申し上げます。」


と頭を下げて挨拶をした。副団長は、笑いもせず、鋭い目で上から下まで審議するようにじっとエミリーを観察し、


「ふむ、女性とは珍しいと今院長と話していたところだ。どこで勉強を?」

と聞かれ、

「当初は独学でしたが、その後、領都のゼオン治療師学院に働きながら通わせていただき治療師としての資格を得ました」

と返事する。




「エミリーは若いのですが優秀なのですよ。特に少し変わった工夫をするというか、そのため治療効果も。。」

院長が自慢げに話す。


「変わった?」

副騎士団長が首を傾ける。


「院長、あまりそんなお話をしても楽しくないと思います。あの、ご挨拶だけということでしたら戻らせて頂いてもよろしいでしょうか?まだ、患者が待っておりますので。」

エミリーが話を遮る。


「エミリー、失礼なことを言うな!騎士団の副団長様なんだぞ!」


「まあ良い。治療さえきちんとしてもらえば問題ない、あくまでも警備体制を確認に来た、ついでだ。 もう、下がって良いぞ。」


「ありがとうございます。失礼します。」

ドアをゆっくりしめて、深呼吸して、エミリーはぐっと手に力を入れるとまた走って処置室に向かう。


廊下の角を曲がったところで、周囲を見回し誰もいないことを確認してから深呼吸する。


「アーサーだ。ここでアーサーと会えるなんて。なんてこと。でも、よかった。気が付かなかったみたいだわ。当たり前よね。髪の毛も色が変わっているし、メガネもかけている。子供の頃の自分から目の色も少し変わった上、かなり顔付きも変わっているもの。それにしてもこんな辺境な土地であう事になるなんて。ううん、今日が最後だもの。気にする必要はないわ。視察だって言っていたし。」


アーサーイーズス、彼は、伯爵家の嫡男、自分の幼馴染、そして、3歳の時からの婚約者だった。



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