何も持たない少女
「イリア、済まない・・・・。僕と婚約を解消してほしいんだ、僕は君の妹のマリーのことが好きなんだ・・・・」
それはイリアにとって予期していたことだった、親が子供の頃に決めた婚約者クリス、彼は妹のマリーのことが好きだったのだ。
色白の肌に美しく長い金髪とキラキラとしたサファイヤのような瞳、まるで人形のような美しい妹、それに比べ、イリアはくすんだ茶色の髪と髪と同じ色の地味な瞳をしている。世の中の人は妹の方を好きになってしまうのだ。それは昔から当然のことだった。そして、長年一緒に過ごした婚約者も当然のように妹のことを好きになってしまった。
「やっぱり、そうでしたかクリス様。私、気づいていました。だって、妹はとても美しいんですもの、仕方のないことですよね。それに比べて、私は美しくないのですから・・・・」
「・・・・済まないイリア。その、自分の気持ちを偽ったまま君と結婚出来ないんだ」
クリスは申し訳なさそうな顔をした。
「クリス様・・・・。そうですよね、婚約は解消しましょう」
イリアは悲しそうな顔をして言った。
家に帰りイリアは家を出る準備を始めた、数日後にはクリスとの婚約解消の話が自分の住んでいる村に広まるだろう。イリアは両親や村の人たちに今まで妹と比べられたり、蔑まれたきた。クリスとの婚約解消を知られれば前よりひどい扱いをされてしまう。もうイリアは耐えられなかった。
夜、イリアは荷物をまとめるとクリスに会いに行った。
「クリス様・・・・」
「イリア!?、どうしたんだいこんな時間に?」
「クリス様にお別れを言いに来ました」
「お別れ?もしかして君は村を出ていくつもりなのかい?僕が婚約を解消したいと言ったか・・・・!?」
クリスがイリアの荷物に気がつき、イリアに近づいた瞬間、グサリと銀色の刃がクリスに刺さった。
「どうして・・・・」
銀色の刃が引き抜かれると、クリスはその場に倒れこんだ。赤い血がその場に広がっていく。それを悲しそうな顔で見つめながらイリアは言った。
「何もかも全て妹の物でした。あなたまで妹に渡せない。さようなら、クリス様・・・・」
そして、月明かりしかない夜の闇にイリアは消えていった。
最後が上手くまとめられませんでした。