8月17日その1
8月17日
愛する婚約者 様
貴族の古い伝統、ダンスパーティ。
招待状を受付者に渡し、私はお父様にエスコートされ王宮のダンスホールへ入りました。
ダンスホールは広く、目を細めてしまうほど眩しく輝いていました。
私たちが到着した時には既に多くの参加者がいました。
現国王様が直々に招待客を選ぶこのパーティは、身分も高く有名な人ばかりが集まっています。
入口には私よりも幼い子ども達がデビュタントの踊る時を待っているようでした。
周りの貴族はこんな事を幼い頃から経験してるのかと思うと、思わずクラっと足元が不安定になりました。
貴族らしくない私が居ることが場違いな気がしたのです。
お父様の腕を掴む手に自然と力が入りました。
『あれが噂のマリー嬢』
『16歳で社交界デビューなんてどんな娘かと思ったが、なるほど』
『エルライン侯爵が出席するなんて珍しい』
周りで噂をしている言葉が良く聞こえました。
こんなに他にも人がいるのになぜか注目されている気がしたのです。
私よりも年齢が上の人もいましたが、下の子の方が断然多くいました。
社交界デビューをこの国王様主催のダンスパーティに合わせる人は多いと聞きました。
相手はほどんど同い年のペアの中、お父様は貫禄が違います。
『目立っている?今夜の主役は貴方ですから、当然ですマリー嬢』
お父様はニコリと外向けの顔で品良く笑っていました。
絶対にこの状況を楽しんでいました。
『さぁ、俺の美しい娘のお披露目ですよ』
ワルツの音色が鳴り出すと、騒がしかったホールは静まりかえりました。
入口で待っていた社交界デビューのペアが続々と入場してきます。
バラのお風呂、一目惚れした美しいドレス、いつもより高いヒール、ダンスの相手はお父様。
すべてが私の自信を支え、不思議と不安は無くなっていました。
私の手をお父様が引き、流れるようにダンスが始まりました。
結局お父様とは練習で合わせることはありませんでしたが、
ダンスが得意と言っていたようにリードが上手く、躍りやすかったです。
こんなに人がいるのに他の人と全く接触しないんです。
自分でステップのタイミングが分からなくなる事もありましたが、お父様に任せていれば自然と音色に乗れていました。
私は婚約者候補者としてジャック様に一方的にやり取りをしています。
ですがもしあの時に、既に私が婚約者に決まっていたら今日のダンスの相手は、
ジャック様だったのでしょうか。




