5月31日その2
日が落ちてきました。
空が暗くなるほど外は寒くなり、足のつま先の感覚が鈍くなるほど気温は下がっていました。
街頭も無い寂れた路地裏では手に持っている小さなランタンのみが道しるべです。
その結婚式は幻想的で美しかったです。
この無法地帯の住人が集まり、結婚する2人を囲んでいました。
私もルカに促されその輪の1人として参加しました。
『これから幸せな時も困難の時も共に歩んでいくと誓います』
ここにいる誰もが2人を祝福しました。
道に生えていた花を集めた花束を作り、
私があげたドレスを着た女性が幸せそうに笑っていました。
その笑顔を見たら、私の苦難や苦労のすべてが報われたような気がしました。
綺麗なドレスであげられなかった事が申し訳ないぐらいに。
いつの間にか、汚れた瓶が運ばれてきました。
中身は度数の高いお酒でした。
初めてのお酒は喉の奥が熱くて、まずかったです。
そのままこの場所は踊り場へと変わりました。
1つの弦楽器がメイン弾いて、あとは手拍子や空き缶を叩いて音楽を奏でていました。
昔聞いたことがあるような曲でしたが思い出せません。
『ワルツしか踊れない?おいおい育ちが良いなぁ』
『こんなのは音に合わせて適当でいいんだよ』
ルカに手を引かれ踊り場の中央へ。
その場で右へ、左へ、くるくると回ります。
私は踊っているというよりも、ルカにいい様に振り回されるだけです。
1カ月一生懸命習ったダンスのステップは全く役には立ちませんでした。
ルカの足を踏んでも、
周りの誰かにぶつかっても、
誰も止まる事はせず踊り続けます。
『今日はありがとう』
ルカは私にそう言いましたが、与えてもらったのは私の方なのに。
暗い夜では、遠目でも学園から漏れ出す光はよく見えました。
一体彼らと私に何の違いがあるのでしょうか。
ただ、この瞬間に立ち会えたことが光栄でした。
学園でダンスを踊っている貴族たちよりも、彼らは幸せだったんです。
多分私いま酔ってるんです。
マリー




