5月31日その1
5月31日
目覚めは最悪でした。
昨日泣きすぎて、私の顔も酷いことになっていました。
今日は待ちに待ったダンスパーティ当日でした。
もう学園に戻ることも出来ません。
せっかく誘ってもらった彼に、会わす顔もありません。
朝からうずくまる私の姿を見かねてルカは手を引いて外を案内してくれました。
『エスコートしますよ、お嬢様』
初めは全然乗り気ではありませんでしたが、
そこは私が今まで本の中でしか知らない世界が広がっていました。
王都でこんなに荒れた場所が残っているなんてショックでした。
この無法地帯と呼ばれる場所には、親のいない孤児が沢山いました。
子どもは親の土台の上で爵位や地位が与えられますが、
それがない彼らはいつまでも貧しいままです。
だからと言ってこの王都から出て生活することも出来ないと言っていました。
彼らは身を寄せ合い協力して生活して、
独自のコミュニティを築いているそうです。
ルカはとても周りから慕われている存在でした。
そばを通るだけで”リーダー”と呼ばれながら子たちが彼を囲んでました。
『仲間同士の揉め事の仲介をしてただけだ』
言い訳するように答えてましたが初対面の私にパンを分けてもらった時から、
優しい方だって分かってました。
『今日の主役を紹介するよ』
”男子禁制ですよ!リーダー!”
女性の制止する声の先へ進むと女性たちが慌ただしく動いていましたが、
椅子に座る美しい女性に目を奪われました。
『実は今夜結婚式があるんだ、花これで足りるか?』
『ありがとうございますリーダー』
椅子に座る女性は花嫁でした。
『ドレスを買うお金がなくて間に合わないの』
準備をする女性たちは、今夜使用するドレスを縫い付けている最中のようです。
"良ければ使って欲しい"と私が持っていたドレスを渡しました。
生地自体は美しく使える所を切っても構わないと言うと、
ルカはとても驚いていました。
『主人に怒られないのか?』
どうやら私の事を貴族の侍女で迷子だと思われているようです。
いいんです。
もう私が持っていてもしょうがないので。




