5月30日その1
5月30日
愛する婚約者様
どうして、うまくいかないのでしょうか。
私は思った以上に浮かれていたのでしょうか。
最近は良いことが続いていたので、罰が当たったんです。
今日の午後に、約束のドレスを取りに行きました。
その帰り道に、荷物を男性に引ったくられてしまいました。
袋の中にはドレスとお金と私物を入れていたんです。
必死に後を追いました。
だけど直ぐに見失ってしまって。
道行く人にその犯人の特徴を聞くと盗人と有名な人物のようで、彼がよく現れる場所を教えてもらえました。
ジルとカルロスが”騎士でも入る事を踏みとどまる場所”と話していた、王都内にある無法地帯。
私には行くという選択肢しかありませんでした。
お金も私物も明日のドレスもすべて取られたんです。
行ったことも無い場所。
大通りとは打って変わって建物は風化が激しく、
お世辞にもいい恰好と言えない浮浪者が道の端にちらほらと見かけるようになりました。
息がきれるほど走り回りました。
人づてに尋ねて探し回ったんです。
ドレスが入って袋が捨ててありました。
急いで中を見ると、お金だけ取られていました。
ドレスは泥で汚れ、裾が破れていました。
もうダメです。
もう無理です。
直すにしても間に合いません。
どうしてこうなってしまったのか。
私は明日踊る事はできなくなりました。
生まれて初めてこんなに強い憤りを感じています。
もう辺りは真っ暗です。
宿をとるにしても今の私にはお金もありません。
そもそも宿泊できる宿があるかさえ分かりません。




