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海の声  作者: 菊池与太
3/10

 素朴な疑問だ。人魚は人と魚、どちらに近いのだろうか。陸で息が出来る所を見れば哺乳類だと想像できるから、人間に近いのか。喋るし。又はイルカ等の海に暮らす哺乳類を海獣と呼ぶらしい。かっこいい呼び名だ。人魚もそれの仲間になるのだろうか。

 昔、祖父母と一緒に行った水族館で、人魚と呼ばれる生き物を見たことがあった。むっちりとして大きな体を持つそれはジュゴンと呼ばれ、ゆったりとした動きで私の目の前を泳いだ。あれは大変かわいらしい生き物であった。つぶらな瞳が豆のようで、草をはむ姿は海の中で暮らす牛のようだと思った。どうして人魚と呼ばれたのかは最後まで分からなかったが、あの時の私はジュゴン熱に浮かされ、すっかりジュゴンの虜になっていた。それは帰りに祖父に買ってもらったぬいぐるみが何をする時にも手放せなくなった程で、母に洗濯の為と剥ぎ取られた時以外はどこに行くのにも一緒だった。現在でもそのぬいぐるみは大切な宝の一つで、今は私のベットの頭もとにペンギンのぬいぐるみと一緒に貫録を漂わせて寝そべっている。

 奴を同族と呼ぶには愛くるしさが足りない。



 ◇


 数学のプリントが紙飛行機の材料にしか見えなくなってきたとある週末の午後。

 勤勉なる私は黙々と学校の宿題と睨めっこに勤しんでいたのだが、ふかふかとして眠たくなるような甘い匂いが扉の向こうから漂ってきた。

 匂いのする方を辿って行くと、母が台所で黄金色のパンを携えていた。

「あら、優。勉強は捗っているの?」

「そりゃあもう。紙飛行機は折った後に羽を少しばかり反らしてやると、よく飛ぶんだ」

「素晴らしい研究成果ね」

「母は何を?」

「新しい焼き釜の具合とかを見ていたのよ。試しにロールパンを焼いてみたのだけれど、食べてみてくれるかしら」

「どおりで」

 私は冷蔵庫から取り出した牛乳をお気に入りのマグカップに並々と注いで、椅子に腰を下ろした。

 パンはほんのりと熱を持ち、ころころとして可愛らしい。歯を立てて齧り付けば、中からはふんわりとして素朴な甘さが肺を満たす。

「おいしい。ジャムとか何も要らない。もう一個食べて良いか」

「うれしいなぁ。でも晩御飯が入らないと困るから、あと一個だけね」

 私は一つ目のロールパンを飲み込むと、冷えた牛乳をごくっ、と煽り、二つ目に手を伸ばした。

「学校はどう?新しいお友達は出来た?」

「楽しいぞ。みんな良い奴ばかりだ」

 私は片手に収まるその愛くるしいパンをもぐもぐとしながら学校での事や授業の事を話した。母は聞き上手な人なので私も楽しくなってつい多く話してしまう。

「そういえばおかしな奴がいるのだ。危ない所を助けてもらったのだが、学校では話しかけるなと言う。私の事が嫌いなのかと思えばそう云う訳でもないように思える」

 私は海崎の事を母に話した。もちろん人魚おねぇである事は言わなかった。何故なら私は良識のある女子高校生だから。いくら聞き上手な母が相手とはいえ、その位の分別が付く程度には大人寄りの子供なのだ。

「きっと優がかわいいからどうしたら良いのか分からないのよ」

「よせやい、照れるだろう。だが奴は他のクラス連中とも話をしていないように見える」

「あら、一匹狼さんなの?」

 母は自分の焼いたパンを一口食べて「ん、おいしい」と言うと、にっこり微笑んで私に言った。

「きっと彼には彼の縄張りがあるのね。仲良くなりたいのなら一緒に美味しいものを食べたら良いわ。お母さんもそうやってお友達を作ったから」



 数時間後。二つの紙袋を手に歩いていた。

 一つは本屋さんで購入したばかりの、私が小学校低学年の頃から愛読している漫画の最新刊。もう一つには、おやつのクッキーだ。

「その子と食べなさい」と母が持たせてくれた。

「会うかどうかも分からないのに」

「もしかしたらって事もあるかもしれないでしょう?助けてもらったお礼もしていないのだし」

 本屋に行こうとしていただけであったが……。渡されたのだから会おうとするモーションだけは取っておかなくてはならない。

 私はあの入江に続く神社に向かった。買いたてほやほやの漫画を読み終わるまでに奴が来なければ、これは私が食べてしまおうと決めて。

 学校に向かう坂道から外れて、高い塀から小手毬の綻ぶ細い路地を少し行った先。鳥居の向こうにある苔生した階段の上に、ひっそりと佇む社は隠れ家のようだった。さわさわと名前も分からない青い木々と、淡い花びらを落として萼の朱さが目立ち始めた桜が肩を擦りあいながら社を大切そうに抱え込んでいる。

 隠れて目的地に行くにはこそこそとするより、堂々として向う方がばれないモノだ。どうせこんな場所に来る人間はいないだろうが念の為、私は警戒心を足取りに隠して石畳の階段を上がった。

「いい天気だねぇ」

 のんびりとして欠伸の出そうな声が、ひんやりとした空気を纏う境内を震わせた。

 驚いた。どうやら先客がいたらしい。おみくじが花のように咲く木の隣。変色したベンチに小柄な爺様が胡坐をかいて猫と座っている。

「こんにちは。本当に。気持ちの良い天気ですなぁ」

 爺様は猫を膝に乗せて、足の指をもにもにと摘まみながら人の良さそうな笑顔を浮かべる。    

 お地蔵さまが人間に化けて微笑んでいるような老人であった。

「若い人がここに来るのは珍しいね」

「あぁ。最近、この町に引っ越してきたので町の神様に挨拶に伺ったのだ」

「感心だ」

「お爺さんも参拝かい?」

「そんな所だ。ここの神様は町に暮らす人々と人魚を守ってくださっているからね」

「この町には人魚が暮らしているのかい?」

 しらばっくれて尋ねる私に爺様は目を細めて「居るともさ」と答えた。えらくきっぱりとしたいい方に瞬いていると、爺様は続けて被せる様に断言した。

「人間が居て、犬猫が居て、猪や狸が居て、鯨や魚が居るのだ。人魚も居る」

「不思議な事を言う」

「不思議なものか。儂からしたら居ないと言い張る人間の方が不思議さ。どうして幽霊を信じて人魚を信じないのか」

 確かにその通りだ。夜道を通る時、暗闇に幽霊を想像することはあっても、船の上で、人魚にひっくり返される心配をする人間は居ない。 

「昔は人魚が船にいたずらをせんように、まじないなんかをする輩も居たのだがな。魚が逃げるのは人魚が釣り針を食いちぎるからだとか、人魚の歌が聞こえたら嵐をよんでいるとか。海で困りごとがあるとみんな人魚のせいにされたものだ。今はみんな老人の呆け話になってしまった」

 爺様は少し寂しそうに「つまらんことだ」と言う。

「なんだい。人魚っていうのはみんないたずら好きの困ったやつばかりなのかい?」

「そういう奴もいるな」

「いるのか」

「人間と一緒さ。人間でも他のモノを助けたり、殺したり、苛めたりするだろう。それと同じような事」

 爺様が足をもにもにとする手を猫が額を擦り付けて一生懸命に邪魔をする。愛くるしい。

「若輩者がかわいくてついつい苛めてしまうのさ」

 私は爺様の代わりに猫の喉を指先で撫でてやった。猫は「この際、お前でも好かろう。私の事を愛でるがいい」とでもいうように喉をくい、とこちらに突き出して「ふしゅー」と鳴いた。

「仲良くなれるだろうか」

 意識せずに私はそんなことを呟いていたようだった。何とも誰とも言わなかったが爺様には通じていたようで「そうさなぁ」と言って手の動きを止めた。

「人間も人魚も大して変わらないモノだ。私が友達になれたのだから、君も大丈夫」

「そうかな」

「そうだとも」

 爺様にも人魚の知り合いが居て、友達になったのだろうか。なんだか爺様が大丈夫と言うなら大丈夫な気がした。

「爺様よ。ここで会ったのも何かの縁だ。もしよかったら食べてくれ」

「おや、これはクッキーだな。美味しそうだ」

 私は紙袋の中のクッキーを一掴み爺様の手に置いた。

「ああ。私の母が焼いたものだ。友人に持って行く所だったのだが、会えるかどうかも分からんからな。この幸せをおすそわけしたくなったのだ」

 爺様は「そうかい。ありがとうよ」と言って、クッキーを皺がれた指でもにもにしていた。食べないのだろうかと少し思ったが、私は「それじゃあ」と簡単な挨拶をしてその場を後にした。



「あんた何を読んでいるのよ」

 波間から聞こえた声に面を上げると、海面から半分だけ顔を出し、こちらを窺うようにして覗く海崎が居た。波が押したり引いたりするたびに、奴の短い髪がたぷたぷと揺れている。私は入り江にある、どこに腰を下ろしても座り心地の悪さが残る岩の上から答えた。

「最新刊。『唯我独尊!平八郎先生・十四巻』だ。もう少しで読み終わるから、待って居てくれないか」

「あんた、漫画なら家で読みなさいよ」

 わざわざここで読む必要ある?まったくもってその通りなのだが、たとえ暇つぶしの為に読み始めたものであっても、流れの良い所でページを閉じるという行為は小説でも漫画でも等しく冒涜的な行いであると私は信じている。「もう少し―」とグダように言っていると影がのぞき込んできた。

「濡らすなよ」

「ずいぶん厳つい絵柄の漫画ね」

 興味があるようだったので、本の中身を見せてやった。

 劇画調の絵に迫力の戦闘シーンが痺れる。

「うっわ、このムサイのが主人公なの?」

「失礼だな。この漫画は武道を嗜む男、平八郎の強く美しい生き様を描いた秀作だ。私の人生のバイブル本だぞ」

「よく分からない」という顔をする海崎に平八郎先生の素晴らしさを伝えるべく立ち上がり、漫画を両手で天に掲げた。

「彼の勇姿を見よ!己の神髄を見失わず、人に流されない強い芯は痺れるほどにかっこいい。老若男女、世間から悪党と呼ばれる人であろうと、彼の人を見る審美眼には感服するばかりだ。彼は全ての人から公平に聞き、自ら物を見て、己の意思で判断する誠実なお人だ。

 また、大きな力を持ちながら己の力に溺れることは無く、その恐ろしさも使い方も知っている。真の優しさを知る彼だからこその技である。

 だが、この感動は自らの手でページを捲らなければ伝わらない事は百も承知!されば刮目せよ!一巻からだ!彼こそは私のヒーローであり、目標であり、心の師範。凄い人なのだ」

 海崎は口を開けたまま動かない。私の演説と彼の素晴らしさに感動しているのだろう。

 ページ捲れば平八郎先生が猛々しく仁王立ちをしながら、悪の親玉の血で濡れた拳を振り払っている所だった。その背後は屍山血河の惨状に大悪党の部下共が山となって倒れている。

「小学生の頃だな。近所の大きな病院で読んでから惚れたのだ」

「病院になんちゅう漫画を置いているのよ!」

 海崎は顔をしかめて叫んだ。ドン引いた表情で微かに震えている。彼の良さが分からんとは気の毒な事だ。

「あんた、こんな化け物になりたいの?変な子ね」

「ヒーローだ!」

これは重要事項である。私は声を大にして言った。

「守りたいものがあり、その為の力があるのだ。かっこいいだろう?」

私は漫画を袋に戻してから、胸を張って言って。



「そういうお前は人間になりたかったのか?」

「へ?」

「聞けていなかったが、海崎はどうして呪いを受けてまで人間になりたいと思ったのだ。不便な事の方が多いだろう?」

「……」

 海崎は目をビー玉のように丸くしていた。

 無理に聞いては失礼な事でもあったのだろうか。声の呪い以上の秘密でもあるのかもしれない。そう逡巡して後悔しかけた所で「私ね、会いたい人間がいたの」海崎は膝を抱える様に尾を抱えて語りだした。

「それで、文句を言ってやりたいと思っていたのよ」

「文句?」

「そうよ。私、その子と喧嘩別れをしちゃったの。喧嘩と言っても、相手が一方的に言いたい事だけ言って遠くに行ってしまったのだけれど」

「自分の言いたい事だけを言ってそいつは逃げたのか?酷いやつだな!」

「そうでしょう?あんまりじゃない」

 自分勝手な友人に何か思う所があるのだろうか。海崎の声は怒っている風には聞こえなかった。もしかしたら海崎自身にも非があり、友人を探す内に、その事に気が付いてしまったのかもしれない。

「言いたいことが沢山あったのよ。でも、長い時間が立ち過ぎて言いたいことの半分も忘れてしまったわ」

 私はなんだか、きゅっと切なくなってしまった。それで足を手に入れて声を失うとは。本末転倒ではないのか。しかし、海崎が言わぬ文句を私が言うのは筋違いもいい所。もやもやとした気持ちは甘いもので溶かして腹に収めてしまうのが良い。

 私は半分軽くなった紙袋を持ち上げた。

「何それ。あら、クッキー?手作りだわ」

 海崎は紙袋からクッキーを摘まむとサクッと音を立てて租借した。

「美味しい」

 海崎の表情が和らいだのを見て、私は少しほっとした

「そうだろう。母の作るものは何でもうまいのだ。一緒に食べようと持ってきたが、お前がここに居て良かった」

「それで来たの?」

「そうだが」

「私が来なかったらどうするつもりだったのよ」

「漫画を読んで、クッキーを食べて帰るだけだ」

「あんた、やっぱり変だわ」

 それから暫く、二人でクッキーを食べながら駄弁っていた。海崎には7人の兄弟が居るらしい。私は一人っ子だから賑やかで楽しそうだと言ったら海崎は「とんでもない!」と悲鳴のような声で否定した。

「小さい頃から兄たちと全く気が合わなくて大変だったわ!あの人達、時代錯誤なバカばっかりで、男の人魚は台風のような荒々しさと凶暴さを持つことが美徳なんて考えていたのよ。何百年前の話よ!姉達が可愛がってくれたからまだ良かったけど。あれはあれで姦しい人たちだったわね」

「人魚でもそういう風潮みたいなものってあるんだなぁ」

 人魚というモノ達は広い海を泳ぎまわって、もっと自由なものなのかと勝手に考えていたのだが、どうやら陸の上とそんなに変わらないモノらしい。

 最後の一枚のクッキーが無くなる頃。日も暮れてきて潮風がひんやりとしてきた。

 身に染みる冷たさに、そろそろ帰らなければ母の作る夕飯に間に合わなくなってしまう、と考えていた所「……どぉん、……どぉん」遠くない場所から太鼓の音が聞こえた。

 まるで吠えるようなその音は裏山に反響し、海の向こうへ吸い込まれていく。すると、消えて行った音を追いかけるように、また一定のリズムで「……どぉん、……どぉん」と響いてくる。

「近くに和太鼓教室でもやっているのか?」

 不思議に思って尋ねると、海崎はつまらなさそうに答えた。

「この辺りでは祭の一週間前から毎日、夕方の五時ごろに太鼓を鳴らすのよ。なんでも海に暮らす人魚に陸で祭りをやるから遊びにおいでって知らせるらしいわ」

「祭り?そういえば加奈子が何やら言っていたな」

 確か、地域合同のお祭りで海の安全と村の繁栄を願うものだったか。学校の上から麓まで提灯と出店が並ぶらしい。学校の部活からもいくつか出店を出すとのことで張り紙があった。

 そういえば野球部は冷やし胡瓜の店を出す為、校舎裏の教員用駐車場の端にある畑を借りていた。

 4月にはバットを片手に種を捲き、5月にはボールを片手に水をやり、グローブを片手に支柱をせっせと立てる。早朝、丸坊主の集団が畑を耕す姿は異様であった。

 彼らの甲斐甲斐しい世話と暑苦しい愛情によって、6月の三週目に入った今日。あんなにも小さかった苗は、にょきにょきと伸びに伸び、立派な実がぶら下げていた。来週の祭りには十分収穫できるだろう。網に囲まれた畑の脇には「打倒エテ公」と赤字の看板が立っている。

「海崎も行くのか」

「あんな騒がしい所、行かないわ」

 ふてぶてしく答えるその声はツンとしてつまらないもので、腹の底から興味がないと語っていた。いつの間にか太鼓の音がしなくなると辺りは一層深く影を落とし、しんとした空には、波の音がやけに大きく聞こえる。

「せっかく太鼓で祭りを知らせてくれているんだ。行かなければ勿体ないだろう」

「一人で行っても空しいだけじゃない」

「なら、一緒に行こう」

「へあ!?」

 本人も想像してなかったのだろう。海崎は思ったよりも大きな声が出てしまった事を恥じているのか、薄っすらと頬が桜貝のような色をしていた。

 何を驚いた声を出しているのだろうか。人間が人魚を遊びに誘うことがそんなにも意外だったのか。私は海崎に言葉を重ねた。

「そんで、ぼったくり屋台を見て回ろうぜ」

「……行かないわよ」

「何故だ。家で作れるかき氷をわざわざ埃っぽい屋台で買おうぜ。スーパーで300円にて買えるたこ焼きを600円出して買おうぜ!」

「行かないわよ‼佐々原さんを誘えばいいでしょう」

「加奈子は当日、陸上部でパンケーキを売るのに忙しいのだ。いいじゃないか。この町で初めてのお祭りなんだ。この周辺の事とか、祭りの事とか教えてくれよ」

「ふん、私だって忙しいのよ」

「ふん、何が忙しいものか。高校生から宿題とゲームを取れば、海でクラゲのように揺蕩っているか布団でスマホを片手に揺蕩っているかだろう」

「世界中の高校生に怒られなさい」

 そんなことを話していると、己の腹から「ぐぅ」と、虫が鳴いた。

「そうだった、晩飯の時間」

 私はやや急ぎ足で、クッキーを入れていた空の袋を畳み、漫画を片手に立ち上がった。座り心地の悪い岩の上に居たせいで、やけに痛む尻の砂を払う。

「まぁ、無理にとは言わないさ。それじゃあ、またな」

「あっ、ちょっと!」

 いつもの獣道に飛び込もうとした身を引き留める声に振り返った。

 言葉を探す尾っぽがゆらゆらと揺れている。暫し、海崎は目をあっちへこっちへと動かしていたが、結局言いたいことが纏まらなかったのか、言葉が見つからなかったのか「気をつけて帰りなさいよ」とだけ言った。


 人一人が通れる獣道をやっとこさで抜けると、爺様はもう居なかった。時間を考えれば当たり前であろう。その代り、3人の挙動不審な男が居た。田舎町に似合わない妙に小奇麗な輩だ。参拝時間は過ぎているし、肝試しには早すぎる。

 この辺りの人じゃないよな?

 そのうちの一人と目が合って私は慌てて階段を駆け下りた。

 波の音はもう聞こえない。

この話を書いた直後、我が家に巨大ジュゴンぬいぐるみが来ました。

もちもち。

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