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51.宰相

「お疲れ様、そしておめでとう、カイリ」

 部屋へ入ると、ケイがまずそう言ってくれた。

「殿下。この御方は……?」

 ソウはまだ、ケイに会ったことはなかったから、恐らく知らないのだろう。

「あぁ、ケイという。俺の師匠であり、仲の良いいい友人でもある」

 ……殿下、ではなく陛下の方が合ってるんだが、まぁ今はおいておく。

「私からも付け足しておくと、この者の名はケイ・フェルトン。あのフェルトン一族の者である」

「な……」

 フウリが俺の説明に補足し、それにハヤト、ソウの宰相陣が驚き、絶句した。

「……陛下、なぜ貴方様がその様なことをご存じで?」

「いやな、少し…………言ってしまえば、私を打ち倒したのはこの二人なのだ。カイリは私に少し及ばなかったようだが、ケイは……私など軽く倒してしまったほど、強い。くれぐれも、敵に回すなよ?」

「……承知いたしました。十分、肝に銘じておきます」

 一旦話を区切る。

「あの……入っても大丈夫?」

 部屋の扉がノックされ、声が掛けられた。ユイだ。まだ扉は開けられていないが、この部屋にケイ以外の4人がいることは知っているはずだから、それでわざわざ訊いてきたのだろう。

「……大丈夫だよ。入って」

 ケイがそう言うと、扉が開きユイが入ってきた。やはり、宰相陣は誰? と言いたげにしている。

「俺が紹介しよう。……ケイの娘の、ユイだ。現在、俺は付き従っている」

「なぜ、殿下が?」

「経緯を説明すると……」


 少し、この二人に説明し切れていなかった部分を改めて話した。

「なるほど……ミーナ姫の……」

「えっと……入ってこない方が良かった……?」

「そんなことはないと思うぞ。本人を紹介すればこのあとの説明も分かりやすいだろうし」

 まだ、ソウとハヤトには簡単に行動についてだけしか伝えていない。もちろんこれから説明する。

「……聞いてほしい。なぜ、俺がわざわざ直接国を治めないのか。そこに関わる話だ」

「確かに。この国に帰ってくださったのならば、なぜ私に任せるのですか?殿下は、もう十分に国一つ治められると思うのですが……」

「あぁ、実際俺は国を治められないわけではないと思う。だが、俺はこの国に留まるつもりはない」

「……そんな、折角帰ったのなら……!」

「勘違いするな、別に国が嫌なわけじゃない」

「……? つまり、どういうことなのです」

「俺はユイに付く、それだけは譲れない。間接的に、指示を出して国を治めるつもりだ」

「まとめるなら、殿下が表で暮らすのは変わらず、ただしソウにはしっかり指示を出す、と。それでよろしいでしょうか?」

 ハヤトが俺の話をまとめた。こういうところは、流石宰相を長年務めてきただけはあると感じる。

「そういうことだ。まぁ、しばらく時が経てば直接国を治めることもできるだろうから、それまでの処置だと考えてくれればいい。……表で暮らすとは言え、一ヶ月に一回はここに戻るつもりだ」

「了解です。……誠心誠意、ここで頑張らせていただきますね」

「頼んだぞ、ソウ。先程も言ったが、俺はお前を信頼している。頑張ってくれ」

 ソウなら、しっかり国を俺の代わりに治めてくれることだろう。

「じゃ、解散でいいかな? ……カイリも、表の学校へ戻る必要があるだろうし……」

「……おっと、忘れていた……。まぁ、ケイの小屋にいる時、既に学校には3日ほど休むと連絡をいれておいたから、問題はないか。それでも、もうそろそろ戻らないと【転移】で時間食うからな……」

「……では、私はまず国の体制を色々と整えてまいります」

 そう言えば、渡しておくものがあった。

「ソウ、これを常に携帯しておいてくれ。いつでも【通信】が繋がるようにしてある」

 そう言って俺は、【収納】から一つ小さな指輪を取り出した。

「これは……銀の。ありがとうございます、大事に使わせていただきます」

「一応、これには【隠蔽】も付与されている。何かあったら、すぐに魔力を流して隠しておくといいだろう」

 この指輪はもう一つ対になっていて、その対は俺が付ける。実は【隠蔽】を付与したのは俺の為というのが大きい。学校など、表でこんなものを付けていては変だからな。

「……じゃあ、俺はここで失礼しよう。ケイとユイも来るよな?」

「美那を忘れてないかい、カイリ?」

 からかうようにケイは言った。無論、忘れているわけがない。

「もちろん。部屋から出た後に自分で呼びに行くつもりだったからな」

「あはは、そうだね。じゃ、僕は先に行ってるよ。……ユイも来る?」

「うん、そうするよ。カイリくん、またあとでね!」

「あぁ、またあとでな。……ケイ、【転移】だけは待ってろよー」

「はいはい、分かってますとも。……集合場所で待ってる」

 そう言うとケイはユイを連れ部屋を出て行った。

「殿下、それでは、また」

「あぁ、またな」

 それだけ言って、俺は姫様を迎えに隣の客室へ向かった。

次回、第一部最終話(予定)です

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