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50.帝位継承

 数時間後。

「…………本日、重大な発表がある。殿下が、お帰りになられた!」

 ナギが堂々と宣言する。その言葉に続いて、俺もバルコニーに出る。

「この御方こそ、帝国皇太子カイリ・フォン・ディラシア様である。……これより、殿下よりお言葉とご説明を頂く」

 予定通り、ナギが俺を紹介してから前に出て話し始める。

「……俺は、この国を変えるためここに立った」

 一言目から、早速国民がざわついた。恐らくは、疑問が浮かんでいるのだろう。

「フウリに……父上に代わり、俺が玉座につく」

 そのとき、声が上がった。あれは……確か、現在帝国内で最も力があると言われるアラナード家の現当主、ツカサ。

「待て。お主は本当に帝国皇家の者であるか? その証を示してくれ」

 やはり、来たか。練習する時間もなかったし、今まで成功したこともないが……。

 後ろをちらりと振り向くと、ユイがこちらへ頷いてくれた。

『できるよ』

 もう一度、ユイからそう聞こえた気がした。

 やり方は分かっている……集中して、翼・尾・鱗をイメージ。……龍化。

「俺は確かに、皇家の人物だ。その証拠として、この姿を持つ」

 成功だ。これで、皆も分かってくれただろう。

「そのお姿は……確かに龍人のもの。疑ってしまい、大変申し訳ございません」

 龍化した俺の姿を見て、ツカサは引き下がった。

「……国民たちに告ぐ。俺は恐怖ではなく、言葉と優しさでこの国を支配する。今までの仕組みを一新する」

 俺の言葉を聞いた国民たち、特に領主たちがざわめいた。主に、力で領民を締め付けていた者たちだろう。

「だが、俺にはまだ国を治めるには早いと感じている……。そこで、俺が成長し、立派に国を治められるようになるまで、この者に国を任せたい」

 予め決めて、先に伝えてある。まだ幼かった頃に教育係の見習いとして俺についていた、あいつを指名した。

「失礼致します、殿下にご指名頂きました、ソウ・リリネクと申します」

 ソウは、元々貧困街の出身だった。そして、そのことを知る人物も多い。ある意味、出世するのに出身は関係ないと示していることにもなる。

「昔に世話になった故、俺はこいつを信頼している。十分に俺の意志を汲み取り、そして実行してくれることだろう」

 そこで一息おき、続けた。

「……どうだろうか。帝国民たちよ、俺を認めてくれるか」

「……一つ、よろしいか。殿下が現皇帝に代わって国を治めようとした場合、我ら領主の処遇はどのようにお考えで?」

 今のは……数少ない善良な領主、イスリア家のハル。領主については必ず誰かに訊かれるだろうと考え、予め決めておいた。

「……領主制度も見直すつもりだ。場合によっては、廃止する可能性もある」

「何だと?! ならば我らはどうしろと言うのだ!」

 その言葉にいち早く反応したのは、かなり自分優先の考えを持つという、ウエラズ家のダン。領主という立場にいたからこそ今まで存在して来れた、と言っても過言ではないと聞く。

「あくまでも、廃止にするのは領主家がどうしようもなく手に負えないと判断した場合のみだ。普通にしっかりと領地を治めてくれるなら、問題ない」

 まぁ、実際にダンの所業は何度も耳に入れているから、即刻牢入りの可能性の方が高いが……今は放っておく。

「ぐぬぬ……」

 納得がいかないのか、唸りながらも引き下がった。あくまで立場としては俺の方が上だ。逆らい過ぎれば、それ相応の罰はある。

「改めて、俺を認めてくれるなら拍手でその意を示してくれ。現皇帝からは、皆が認めるならば帝位を譲る、と頂いてある。……皆で君主を選んでほしい」

 だんだん拍手が起こり始めた。そして、その音は大きくなっていく。

「……皇太子殿下万歳!」

 誰が言い始めたか、そんな声も聞こえてきた。拍手と声とが、入り混じって聞こえてくる。

 最終的に、国民の約8割ほどが俺を認めると示してくれた。なんとか、なったな。

「……この後、現皇帝陛下より皇太子殿下へ帝位継承を執り行う。少々待たれよ」

 ナギにそう言わせ、一旦俺は下がった。


「上手くいったね、良かった」

「まだ終わったわけじゃない……譲位までの全てを負えるまで、油断は出来ない。何が起こるかわからないしな」

「あはは、ま、確かにそうだね。……じゃ、起こすとしますか」

 そう言うとケイは、ここへ連れてきていたフウリを目覚めさせた。

「……結果を聞かせてもらおう」

「……成功だ、父上。国民たちは俺を認めた」

「そうか。では……帝位継承を」

「……既に準備は整ってるよ、皇帝陛下。僕が案内しよう」

 ケイがフウリを連れ、現宰相のハヤトへ引き渡す。ハヤト、フウリ、俺の順に、玉座の間へ進んで行く。

「皇帝陛下および皇太子殿下、ご入場!」

 扉が開かれ、ナギがそう言ったあと、フウリに続いて俺も堂々と玉座へ進んで行く。

 まず、フウリが玉座の前で宣言する。

「我、皇帝フウリ・フォン・ディラシアは、今日をもって皇帝の座を降り、また皇太子カイリへその座を譲る」

 そう言って、皇帝の証である龍の紋章が彫られた指輪を俺に渡す。

 俺はそれを受け取り、右手の親指へとはめた。そして振り返り、宣言する。

「…………帝位は譲られた。これより、俺は皇帝として、帝国を治める」

「……新皇帝陛下、万歳!」

 ナギがそう言うと、周りの重臣たちも続いた。

 ……少し時間が経ってそれが収まる。

「太上皇帝陛下および皇帝陛下、ご退場」

 フウリがハヤトを、俺はソウを連れ、外へ出た。そしてすぐさま、ケイたちが待機中の客室へ向かった。

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