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48.両親

 早速部屋を出て、隣の部屋の扉をノック。すぐに返事が返ってきた。

「今開けるよ、ちょっと待ってね」

 声がして、カチャリ、と扉に掛かっていたんだろう鍵の開く音が鳴った。そして扉が開き、中から見慣れた顔が見えた。

「起きたんだね。……久しぶり、ユイ」

「久しぶり……えっと、ただいま……?」

 カイリくんはケイの小屋だと言ってたし、実質お父さんの実家みたいなもの……だと思う。だから、とりあえずただいまって言ってみたけど……

「あはは。……うん、おかえり」

 笑って返してくれた。中に入るよう促してくれたので、そのまま部屋へ入る。部屋に備わっているソファに二人で腰掛け、話し始める。

「……ごめんね、色々隠してて……それに、しばらく留守にしちゃって。それで、カイリからどの辺りまで聞いてる? 僕のこと」

「えっと……アリッシアの姫様と仲良くて、付き合ってて……魔法でも剣でもめちゃくちゃ強くて、それで……あの日から行方不明って言われてた、ってとこまでは」

「なるほど。話せるだけのことは話したみたいだね……。でも、大事なとこにはわざと触れてなかったか。……僕のフルネーム、知ってる?」

「フルネームは……ううん、知らない」

 ケイ、としかカイリくんも言ってなかった。もちろん表での名前は知ってるけど、裏での姓名は聞いてない。

「そっか。……僕の名前は、ケイ・アリア・フェルトン。テイから始まった、フェルトン一族の子孫だ」

「……えっ?!」

 一瞬訳が分からなかったが。あの、テイ・フェルトンの、子孫……。うん、道理で強いわけですね。凄い納得。……もしかして、海莉くんが言ってた偉大な一族って、フェルトン一族だったのか……? あれ、じゃあ私も強くなれるってこと……?!

「何か隠してたみたいで、ごめん。でも、裏のことを知ったなら別に隠す必要もないから。……もう一つ。多分ユイのことだから、なんで僕とカイリが仲いいのか、って思ってると思うんだ」

 うん、バッチリ思ってる。自分が仕えてる人と付き合ってる人、ってなったら普通敬う……よね。でも、カイリくんはケイ、って呼び捨てだし、話を聞く限りは仲も良さそうだった。確かに疑問に思ってた。

「それは、昔僕がカイリに剣や魔法を教えてたことがあったから、っていうのが大きい。あと、立場的に実際あまり差がないから、僕がいいよ、って言ったんだよ」

 カイリくんの師匠が、お父さんだったとは……意外すぎる。でも、何だかなるほどって思えるのがもう……自分でも何とも言えない。

「他に何か聞きたいこと、ある?」

「うん……もう一つ。お父さんの仕事って、結局何だったの?」

 何回か出掛けることはあったけど……何をしに行ってたのかは知らないし。

「あぁ、えっと……まぁ、色々かな。日によって違ったよ。全部裏での仕事だったけどね」

 つまり、雑用……って解釈でいいのかな? うーん、何かもったいないよなぁ……。せっかくあれだけ強いんだから、それを生かせばいいのに。

「うーん…………なんだかさ、騎士団とか兵士とか、統制があるとこって嫌いなんだよね。正直、昔通ってた学校でも問題児、って人間だったし、僕」

 問題児には見えないけど……でも、裏の学校ってあんまり進んだ内容をやらないらしいから、仕方ないのかな。……そういうことにしておこう、うん。

「意外だけど……まぁ、分かったよ。えっと、それでさ。姫様……いや、お母さんは、今ここにいるの?」

「美那なら、いるよ。ユイは初対面、ってことになるのか……。先に行っておくと、美那は姫の呼び名に相応しい、かなりの美人だから……ユイも惚れるかもよ?」

「惚れるって、な、なぁ……!? 私女子なんだけど……!? なんで惚れるなんて……」

「ごめんごめん、冗談……でもないけど、そのくらい美人だって言いたかったんだよ。ついてきて」

 けらけらと笑うお父さん。いや、冗談じゃないんかい……。

 立ち上がって扉の方へ向かったから、言われたとおり付いて行く。

 少し廊下を進んで、別の部屋の前でお父さんが立ち止まった。

「この部屋にいる。……美那、入ってもいいかい?」

 ノックしながら、中に向かって呼びかけた。すると、またすぐに返事が。

「はーい、どうぞ」

 お父さんがそのまま部屋へ入っていったのに倣って、私も中へ入る。そこにいたのは。

「どうしたの……って、ユイちゃん……? ……そう、起きたの。じゃあ、始めまして。ミーナ・フォン・アリッシアです、私があなたの母親。会えていなくて、ごめんなさいね」

 確かに、美人……。とても整った顔立ちだ。一瞬、驚きすぎて固まってしまった。気を取り直して。

「えっと、ユイです。始めまして、姫様……お母さん。…………うっ」

 やばい、思わず泣きそう。やっと、会えた。存在だけしか聞いていなかった、お母さんに。

「あらら……いらっしゃい。本当に、こんなことをしてごめんなさいね。こんな立場のせいで……」

 優しく広げられた腕に飛びつき、手を回して、抱きついた。……あったかい。

「ううん、そんなこと……ないもん。でも……やっと会えた……やっと」

「とりあえず、今日はゆっくり休みなさい。色々新しく話聞いて、疲れてるでしょう? 明後日には大事なイベントもあることだし、今日と明日は気にせずゆっくりしていっていいから」

「ありがとう……でも、もうちょっとだけ……」

 もう少しだけ……このまま。

 そんな私の気持ちを読み取ったのか、お母さんはしばらくそのまま、私を優しく抱き続けてくれた。

 ついでに言えば、私はその状態のまま寝落ちしたらしい……疲れてたみたい、しっかり休もう。

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