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46.後始末

「……うん、多分この部屋ね」

 そこはユイのいた部屋とあまり離れていない、とても小さな小部屋だった。ケイがその扉を開ける。

「なるほど……。【奪取】で色々奪うだけ奪って、【供給】で質の悪い生命力を流して生かしておく……実に手っ取り早い方法を取っていたようだ」

 ユイと同じように、手足を魔鎖で繋がれ、台に寝かされていた。この魔鎖には先程のとは違い、【供給】も共に付与されていた。そして魔鎖の先には、大きな瓶のような形をした容器があった。その容器の中からは、既に時間が経ち淀んでいる生命力が感じられた。恐らくは、死刑囚の生命力でも取っておいたのだろう、かなり時間が経過しているようだった。

「これ……【昏睡】は掛かっていない……のか?」

「そうだね。魔力と生命力の低下による休眠状態だと思う、あとで質の良い魔力や生命力を流してあげれば元通りになるはずだよ」

 人は魔力や生命力が著しく低下すると、生命活動のために半ば強制的に休眠状態に入ってしまう。【昏睡】を使うよりも簡単で、楽な方法。

「……一旦、魔鎖を外す前に生命力を少し流した方が良さそうか」

「うん、そうなんだけど……僕、今はちょっと生命力が欠けてるんだよね……。カイリ、頼めるか?」

「分かった。……これ、そのまま流しても、大丈夫そうか?」

「大丈夫。この辺りの魔法の構成、かなり雑に組まれてるから……勝手に作動するタイプではないよ」

 その言葉を聞き、一応安全を確認してから、自分の生命力を少しだけ、流し与えた。龍人の生命力は高い、このくらい流した程度なら、身体には何の影響もない。ただ、シンにとってはかなりの量になるだろう。

「ありがと。じゃ、運ぼうか。……レイラ、手空いてたよね? 運んでもらっていい?」

「了解~。……うぉっと。叔父上ったら、それなりに重いなぁ。ま、運べないこともないし任せて」

 フウリをケイが、ユイを俺が、シンをレイラが運んだ。そのまま地下の出口へ向かう。


 歩いているうちに、なんだか姫とレイラがわいわい話し始めたので、自然と俺とケイが後ろへ下がることになる。思わず、小声で本音が漏れた。

「……これから、どうしたものかな」

「帝国のこと……じゃないか。まぁ、カイリのことだね?」

「どっちもそうだが……。まず、フウリに国を治めてもらうか、もう俺が君主を継ぐか……」

 どちらの選択肢にしても、正直まだ決まらない。フウリの返答次第で決めようと考えていたが、結局フウリの返答は"戦うこと"だった。どちらであるとも答えなかったのだ。フウリは、まだ政治を続けるつもりなのか、はたまた……?

「カイリとしては、……帝国を治めるか、それともアリッシアへ戻って美那に従い続けるか……どれがいいんだい?」

「そうだな……できることならば、再び姫様の元へ付きたいが……そう上手くはいかないと思うんだ。帝国民たちが黙っていないだろうし、フウリのこともあるし……どうしようか」

「…………これは、僕の勝手な考えなんだけど。皇帝は、絶対継がないといけないって言われると思う。でもカイリはまだ、国を治めるには少し早い。だから、表の学校へ留学するということにして、政治は一旦他の者に任せたらどうかな? もしフウリがまだ何か企んでるようだったら、あまり国一つも任せられないし……」

 その場合は……なるほど。表で学んでくると言えば、流石に皆許してくれるだろう。そうすれば、またユイの護衛も兼ねて、表へ残ることが出来る。そして、秘密裏に姫の手伝いも可能。

「いいな、それ。……よし、決めた。まず、帝国民たちに俺のことを伝えなければ始まらない……。とにかくは、そこからだな」

「応援するよ。……あ、でも……一応、ユイとシンを起こして、そこでユイとフウリに説明してからの方がいいかな。特にユイには、説明することが山ほどありそうだから……」

 ……ケイの話を追加でいくらかする必要があるし、というか今まで何をしていたのかこちらが知りたい。

「……あぁ、その通りだ。今回は本当に、迷惑かけてしまったな……」

「……そうは言っても、迷惑に巻き込んだのはカイリだろ?」

「むぅ、俺は別にユイまで飛び火するとは思ってなかったんだよ。本当に、表まで手を出してくるとは……」

 事前に、「ディリアの活動範囲は裏だけではない」とか言う噂は聞いていたが、信じてはいなかった。まぁ、実際来たわけだが……。

「…………僕、この前なんて表で暗殺されかけたんだけどなぁ」

「でも今ここにいるって事は、別にどうってことなかったんだろ……」

「そんなことないよ。あいつ、5人くらいだけ送ってきたかと思ったら、狭間に入ったら一気に50人くらいで来たからさぁ……。結局、最上級の魔法構築を一瞬でやんなきゃいけなくて、それ以降一年くらいは魔法が上手く使えなくなっちゃって……大した迷惑だったよ、もう」

 さらっととんでもないことを……。50人程の手勢を、一瞬の魔法構築で撃退……うん、常人じゃ絶対に無理だし、俺やフウリなどの龍人でも不可能だろうな、その所業は。

「魔法ならさっき使ってたじゃないか」

「つい最近戻ったばっかさ。……ていうか正直言って、もしあの時本気出したら、今度は魔法なんて一生使えなくなってたかもってくらい」

「……それで大丈夫だったのか?」

「まぁ、あれくらいなら。本気の3割くらいだったかな」

 ……3割。あれで。全く、フェルトンの血筋は恐ろしいものだ……。

「……適わないな」

 そんな話をしていると、出口である階段が見えてきた。

「…………どうする?」

「普通に【隠蔽】でいいと思うぞ。まだこちらは手荷物……と言っては悪いが、まぁそれがあるからな。ここは一旦戻った方が良さそうだし」

「了解。じゃ、行こうか」

 全員に【隠蔽】をかけ、外へ出て行った。

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