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45.ケイ

「なぜ……お前がここに」

「美那が【顕示】で知らせてくれたんだ。場所を逆探知して、ここまで来て見れば……な。先に美那を逃がしてきたから遅れた、すまない」

 ケイはこちらへ向かって優しく微笑みながら、そう言った。

「いや、助かった。ありがとう。……俺は下がっておく、邪魔しては悪いからな」

 ……なるほど。先程姫のいる部屋から恐らくは改良型の【転移】で、わざと魔震と閃光を発生させ跳んできたというわけか。……きっとアルジェは、先にケイがここへ来ることを分かっていたから、「あとはやってくれる」と言っていたのだろう。

 そして、フウリの方へ向き直り、不敵な笑みを浮かべて続けた。

「……それで。僕は何が何だろうと君を許さないよ。せめて10回、いや100回は死ぬ覚悟は出来ているか?」

 ……流石に冗談、だと思う。殺してしまっては、情報を聞きだすことが出来なくなってしまう。それは、ケイにとっても避けたい事態のはずだ。

「ケイ……だったな? フェルトン一族の現在の生き残りにして、美那の想い人。……ふむ、面白い。ここでお前を殺したなら、美那はどう思うのだろうな……?」

「悪いけど、君に僕は倒せない。特に、魔力も生命力も"龍帝"に捧げた今の状態では、尚更だ」

 龍帝……レインのことか。確かに現在フウリはかなり消耗している。元々二人の間には大きな実力の差があり、もちろんケイが上だ。ケイの方が圧倒的に有利な状態にある。

「……今のこの状態では、な。まだ我には、力が残っている。引き出せば、再び戦闘も不可能ではない。分かるか?」

 ……ハッタリ、か? 引き出だすことのできる力など、もうどこにも、無いはず。すでにフウリ自身の力も、レインの力も、全て使いきっているのは確実……

「はぁ……僕がその程度のこと、分かっていないとでも? もちろん分かるさ。龍帝の魔力を使って回復しようとでも考えてるんだろ。簡単に想像はつくよ」

「あぁ、確かにそうだ。だが、今頃分かったところでもう遅い。流石のお主とて、一瞬で対策は出来まい。遠慮なく行かせてもらおう」

 ……そうか。レインに授かった魔力は、まだ使われていなかった。なら、まだ残っているはずだ。そしてフウリの目的は、回復をし続けて持久戦に持ち込むこと。そうなれば、フウリにも勝機はある。だがフウリの言う通り、今気が付いたところで、遅い。対策として魔法を撃ちこむにしても、必ず数秒は掛かってしまう。これでは……。

 レインからフウリへと、魔力が…………流れなかった。

 フウリも困惑しているのか、動揺が見て取れる。

「なぜだっ。なぜ……力が動かぬのだ!」

「……もしかしたら聞こえてなかったのかもしれないから、もう一度言うよ。この程度、僕が分かっていないとでも?」

「聞こえてはいたが……それが何だと言うのだ……? …………なっ……まさか、貴様!」

「察しが付いたみたいだね。そう、僕はこの場所へ跳んだその瞬間に君の狙いに気付いて、先に対策のために龍帝の精神に【昏睡】をかけておいた。僕だって、これでもあの一族として育ったんだから、これくらいは出来るさ。……家の決まり事云々にはうんざりだったけど」

 この場所へ跳んだ瞬間に……。……やはりケイは強い。俺があれほどまでに苦戦したフウリでも全く歯が立たないのだ。

「さてと。さっさと終わらせようか。……まぁ、流石に殺す気はないけど」

 そう言うと、イメージを使い【拘束】に似た魔法をフウリに向け放った。あの魔法……【拘束】より、効率も発動も改善されている。……折角だ。あとで、構成を教えてもらおう。

「…………っぐ……」

 しかもその魔法には、【奪取】の効果も追加で付与されていた。相手を拘束し、魔力を奪って気を失わせる。実に理に適ったやり方だ。

 既にボロボロだったフウリに抵抗できるはずもなく、しばらくして崩れ落ちた。

「それじゃ、片付いたところで……っと」

 ケイはガラスへ近づくと、確か【構成破壊】というオリジナルの魔法でそれに掛かっていた【障壁】と【保護】を壊し、ガラスを割って中へ入った。続いて俺も入る。

 魔鎖をまた【構成破壊】で外し、ユイを優しく抱きかかえた。ここはまだ安全とは限らないし、一応どこか安全な場所へ移動した方がいいだろう。ケイも同じ考えだったようで、すぐには【昏睡】を解除せずガラスの外へ戻った。

 すると、なぜか抱えたユイをこちらへ差し出してきた。

「……え?」

「……僕はフウリの方を運ぶから、ユイを頼む。……もしかして嫌なのかい、ユイの従者殿?」

「……いや、そんなわけじゃ…………というか、その肩書きで呼ぶなよ……」

 言葉ではそう言ったが、まぁ、まんざらでもない。別にいいか。

 ユイを受け取り、横に抱える。まだ見張りの兵たちは残っているはずなので、一応【隠蔽】を掛けてから外へ出た。

 そこには、レイラと、なぜか姫がいた。

「終わったんだね。良かった~、無事で!」

「美那ったら……確かに逃げたと思ったんだけどなぁ……」

 呆れるような、微笑むようなしぐさでケイはそう言った。

「一人で逃げられるほど割り切れないの。ケイもカイリも、それにユイだってまだここにいるんでしょ? だったら尚更よ」

「まぁ、ある程度は予想してたけどさ……まぁいいや。それで、美那はシンのいる場所、知ってる?」

 そうだった。もう一人、ここに捕らわれているはずの人物がいたのだ……アリッシア国王である、シン・フォン・アリッシア。

「……大体見当は付くわ。こっちだと思う、このまま向かう?」

「そうしよう、出来るだけ早めにここを出たいしね」

 4人で、姫の向かう方へ付いて行った。

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