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41.ディリア

『……カイリ。カイリ……!』

 階段を下りようとしたそのとき、【通信】が入った。……この声は、ミーナ姫。

『姫様……?! ……今、どこにいらっしゃるのです』

『ごめんなさい、分からないの。……でも、少なくともクレセント城の3階の部屋だと思う。それより、カイリ。もう、この城内にいるのよね?』

 3階……流石に今から向かうのは厳しい。ユイたちのあとに助けに行くしかないか。

『……えぇ。今から地下へ降りるところです』

『それなら良かった。いい? きっと、ディリアから5人ほどがカイリを捕らえにやってくるはずよ。それは問題ないと思うのだけれど……そのあと、フウリが向かうわ』

『あいつが……』

 確かにディリアは問題ない。5人程度なら、問題なく撃退できるだろう。だが……あいつが。勝てるか分からない、というか勝機はないに等しい。力の差が……ありすぎる。

『さっき、何とか【顕示】を成功させられた。だから……時間は掛かるかもしれないけど、あの人が、ケイが来てくれると思う』

『時空魔法を……分かりました、できるだけでも時間を稼ぎます。一つ……ユイとレイラは、間違いなく地下にいます。気配が確かにありました』

『地下に……頼めるかしら?』

『はい。あいつが来る前に見つけ出せれば、助けられるかもしれません……やってみます』

『私は、部屋に仕掛けられてる【幽閉】の解除に取り掛かる。解除できたら、すぐに向かうわ』

 あいつは、強い。姫が来れば、怪我の一つや二つ、きっと避けられない。それは、従者として阻止する必要がある。

『そんな……いけません、こちらへ来ては。姫様に危険が及びます』

『あの子のためだもの……少しは無理しなきゃ。それに、私も一応戦力にはなるでしょう?』

『……確かにそうですね。そのときは、頼みます』

『気をつけてね。くれぐれも、油断はしないように』

『承知いたしました。では、また』

 通信を切る。まずは目の前の、ディリア撃退に集中する。周りの音に耳を澄ませ……。

 ……足音。それも、一つだけじゃない、5つは聞こえる。相手としては、気付かれないようにしているつもりらしいが……音が、筒抜けだ。ディリアが地下の扉の解錠に気付き、こちらへやってきたのだろう。階段では戦闘がしずらい、移動しよう。

 地下の通路を進んでいくと奥に見えた、ちょっとした何もない小部屋に入り、敵がやって来るのを待つ。待つついでに、部屋に付いていた扉に少し仕掛けを施しておく。しばらくして敵が部屋にやってきた。こちらとしてはもちろん既に気付いているわけだが、一応、まだ相手に気付いていないかのように装う。

 敵は皆【隠蔽】【不可視】【遮音】の姿隠し3点セット付きだが、気で丸分かりだ。見えない魔法攻撃が背後から飛んでくるが、殺気でバレバレ。視線も向けず、自然にかわす。幾度撃っても当たらないことにイラついたのか、ついに武器を手にとって攻撃を仕掛けてきた。気が見えているこの状態なら、先程の魔法攻撃よりも簡単に避けられる。

 不利を悟ったのか、一旦退却しようとし始めたが、もう遅い。釣られて奥まで入り込みすぎた。先程仕掛けた仕掛けを発動させる。ディリアの一人が部屋から出ようとすると、確かに誰もいないのに、勝手に扉が閉じた。そして、ないはずの鍵がガシャリと掛かった。解錠を試みるも、鍵が開くことはない。……ちょっとした魔法で、簡単に付けた鍵を遠隔操作した、ただそれだけのことだ。

 実は鍵の正体に気付けばそれほど解錠は難しくないのだが、このように相手が焦っている場合、十分効果がある。敵はひとまず脱出はあとにして、俺を捕らえることにしたようだ。そしてもう、姿を隠す必要性を感じなくなったらしく、魔法を解いて接近してきた。が、やはり遅い。軽々かわせてしまう。

「……反撃開始といくか」

 ただ一言そう呟くと、俺は足元に向かって一発、魔法を撃った。魔法で生じた衝撃波により、周りを取り囲もうとしている5人が吹っ飛ばされて、壁に打ち付けられる。すぐさま次の魔法を行使。イメージだけで、魔方陣を描かずに【拘束】を発動させた。何も、原理が分かっていれば魔方陣を使わずとも実用魔法は行使可能なのだ。この魔法を開発したのは俺だ。原理なんて、開発途中に何度も見飽きるくらい見たから、もちろん覚えている。

「……う……っく……」

 なんとか身動きを取ろうとしているが、無駄なことだ。何をしようが、捕らわれている者にその拘束は解けない。話すことが難しい程度に、【拘束】の出力を調整する。

 …………さて、しっかり情報を貰うとするか。

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