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40.美那

 今、私がいるのは、クレセント城内の一室。どの階の、どの辺りにある部屋なのかまでは分からない。窓から見える景色から推測すれば、大体3階のようではあるけれど……。

 つい一週間ほど前、私はフウリへの返事を流すべく、ナルの大河へ訪れた。そう、返事だけを流すつもりだった。それなのに……返事を流そうとしたそのとき、どこからともなくディリアの者が現れ、一瞬のうちに念のため連れてきていた護衛たちを全員、気絶させた。そして、こう言ったのだ。迎えに参った、と。

 もちろん私はそれを拒否した。何度か、関わることは許されぬのだ、と説得も試みた。が、ダメだった。ついには、その者は私を抱きかかえ、昏倒させたのち……この場所へ、運んだ。

 フウリの治める、このディラシア帝国は、何年もの間、とても安定した状態を保っている。その理由として、この国は基本的に畏怖の感情で支配が成されていることが挙げられる。建国当時は、畏敬の方が圧倒的に多かったらしいが、今ではそれは少数派となっている。

 フウリはなんとしてでも私をディラシアの人間にしたいようで、実際用意されたこの部屋も、かなり豪華な造りになっており、過ごそうと思えば快適に暮らすことが出来るだろう。ただ、私にとっては国のことが心配で、くつろぐことも出来なかった。

 その状態で、約一ヶ月ほどが経過していた。


 窓の外の景色を眺めていると、扉がノックされた。

「失礼するよ」

「……また。私は、まだ国に帰ることを考えている……。あなたがどれだけ説得や交渉をしようとしても、無駄なこと。早く諦めたらどうですか」

 フウリが部屋へ入ってきた。色々と試したが、この部屋は、私が絶対に出ることの出来ないよう細工がされている。なぜか魔法の使用もできないために、自分一人での脱出は、悔しいが不可能。

「残念だが、私には諦めるという選択肢が浮かんでこない。……それより、今日こそはその考えも潰れるだろうよ」

「とんだ戯言を。それこそ、国が滅びるほどのことでなければ私も諦めません。…………そう言うからには、何かあったのですか」

「……その威勢、どこまで持つものかな? 私は先程、美那が最も大切にしているものを手に入れた。いや、捕らえた、と言ったほうがいいか」

「捕らえた……まさか、そんな……ありえない……」

 捕らえた。つまりは、人。そして、私が大切にしている"者"と言うなら、あの二人。あの人は到底フウリの部下の力で捕まるとは思えない。と、なると……あの子しか、いない。

「想像がついたか? ……そう、私が捕らえたのは美那の娘だ。ついでに、美那の妹の……紗那といったかな。その者の娘も一緒に、だ」

「…………!!」

 そんな。まさかとは思ったけれど、本当に……。あの子は…………。

「……あの子を、ユイをどうするつもりなのです」

「どうもしない……ただ、美那との交渉材料になってもらおうとね」

「……もし、私が嫌だといったら?」

「そのときは……糧になってもらおうかな。シンのときと同じように」

 糧。シンのときと同じ。つまり……生命力と、魔力を。

「それだけは……やめて。あの子は、まだ未知の可能性を秘めている。それを、全てなかったことにしてしまうわけには、いけない」

「ではこの交渉、乗るか?」

「……期限は」

「そうだな……本当ならば今すぐ、としたいところだが。美那だから……3日。それだけ待ってあげよう」

「3日……」

 ……少ない。それでも、今すぐでなくて良かった。

『ん?……なんだ、今大事なところなのだが……何、そうか、なるほど……転移には時間がかかる、ひとまずは6時間ほど待機、その後ディリアの者を5人ほど向かわせておけ。捕らえたならばすぐに連絡せよ。……その1時間後、連絡がない場合は我も向かう』

 なにやら、通信が入ったようだった。このくらいの通信なら、私にも盗聴ができる。転移……? それに、どういうことだろう、精鋭のはずのディリアを、5人も向かわせる事態などあるのだろうか……? 加えて、ディリアが倒された場合の話をするなんて、フウリにしては珍しい。何か……いや、もしや。

 幸い、私が今の話を聞いていたことには気付かなかったようで、すぐに普段の態度に戻った。

「気付いているだろうが……念のため言っておく、この部屋には【幽閉】と【魔法妨害】を仕掛けてあるから、脱出は諦めた方がいい。……それでは、3日後にまた来る。返事、楽しみにしているよ」

 それだけ言って、フウリは部屋から出ていった。

 3日。それが、私に与えられた最後の……反撃の時間。さっきフウリは、ユイとレイラの事だけを言っていた。つまり、カイリはまだ、向こうに残っている。そしてカイリは、先程の発言から察するに、もう既に二人を救出するべく動き始めているようだ。それに合わせて、私も動く。ここを何とかして脱出して、二人を連れ皆で国へ帰ろう。

 残された時間は少ないし、現在私は外部と連絡を取ることもできない状態にある。まずは6時間以内に、どこかに仕掛けられているはずの【幽閉】と【魔法妨害】を魔法を使わずに解除して、【通信】で連絡を。まずはカイリに、もしできるならケイにも。だが、ケイは隠れているようだからただ【通信】しただけでは繋がらないだろう。試したことはなかったが、やるしかない。ケイから教わった、時空魔法の、【顕示(けんじ)】。それで、気付いてもらえれば……【通信】も繋がるはず。

 とりあえず私は、仕掛けられた魔法を探し始めた。

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