35.市街
魔法学院から、騎士学校へと向かう途中。少し気になったことがあった。
「そういえばカイリくんって、どこか学校に通ってるの? レイラちゃんの場合は表世界の学校へ留学、っていう形だったけど……」
「俺は……今は表世界の学校に通ってるからって理由があるからまた別だけど、前から俺は学校に通っていなかった」
え。なんでだろう……。カイリくんと言えど、16歳まで義務教育を受けるって決まりがこっちにもあったはずだけど……。
「義務教育は?」
「俺は特別扱い、例外なんだ。主である姫様から、しっかり許可は取っている。俺はもう、学校に通う必要はないと姫様に言われてな……。それくらいなら、いっそこのまま城で働いた方がいいだろうって判断したみたいだ」
「まぁ……確かにカイリくんなら学校に行く必要ないかも。剣も魔法も使いこなしてるし、知識だって十分にあるもんね」
「ま、それでも表側の中学校には通い続けるけどな。もし学校でユイに何かあったら大変だし」
「そうだね。……へへ、ありがと」
もしカイリくんが学校に通わない場合、私が学校にいるうちに何かあると、カイリくんが気付くのは難しい。初めて会った時、学校に通ってくれると言ったときは驚いたけれど、いざというときには都合がいい。
「……ほら、着いたぞ。あれがフェリア騎士養成学校だ」
おぉ、あれが……。何だか質素というか、地味で落ち着いた感じの建物が多い。今も訓練中なのか、奥のほうから剣戟の音が聞こえてくる。やはりこっちも、校門に校内マップが貼ってあった。
「ここは、大勢の生徒が近くからも遠くからも通うから、宿舎が広くて多いんだ。ついでに校内敷地の広さで言ったら、世界一だ」
確かに、奥の方には大きな宿舎が沢山あるようだ。後は、訓練に使うだろう体育館のような建物がいくつか見えた。校舎は2つに分かれていて、こちらも複合館というのがあった。魔法学院よりは少ないが、様々な施設が揃っていた。
「魔法学院のときにも気になったんだけど、宿舎があるってことは泊まってくの?」
「人によるな。留学生が多いから、家がない、遠い生徒なんかは泊まっていく。快適に作られてるから、家が近い人も帰らずに泊まっていくこともある。ちなみに、宿舎を建てたことによって、入学希望者は前より増えたそうだ」
なるほど。遠くからの生徒を受け入れる体制が整っている辺り、流石王都の学校なだけはある。
「使わない人もいる宿舎があれだけあるってことは……この学校の全校生徒数って、どれくらい……?」
「大体……1000人くらいは、軽く。そういえば、生徒数も世界トップ5には入るほど多かったはずだ」
「1000……!?」
前に聞いた話だと、裏世界の人口は表に比べてかなり少ないらしく、まだ10分の一にも満たないとか。そんな中で1000人は凄い人数なんじゃない?
「そんなわけだ。で、どうする? もう書店に向かうか?」
「うーん…………うん、そうしよっか」
騎士学校をあとにし、王都の市街へと戻った。
「ここが、王都で一番の書店だな。…………ちなみに、こっちじゃ本屋は魔道書やら古文書やら古くて貴重な本が売ってるところを指す。書店は、ここ100年のうちに出版社から出版されたものが売ってる。全然違う場所を指すから、間違えるなよ?」
「はぁ……分かった、違うんだね……」
ややこしいなぁ。本屋も書店も同じようなものだと思ってたや。実際日本じゃ同じだし。
案内された書店は、シンプルで少しオシャレな、ちょっとしたカフェのような雰囲気を醸し出していた。その名も"アリナ書店"。
「お店はあんまり表と変わらないんだね」
「そうかもしれないな。ここも確か、表の書店に倣ならって設計されたって聞いたし」
「それで……」
道理でなんとなく似ているわけだ。
ふと、書店の入り口周りに「今月のお勧め 映像化決定、注目のシリーズ!」と書かれたブースがおいてあるのに目がいった。
「えっと……これが、今流行ってるの?」
「……そうみたいだな。俺が表に行く前は、もう少しシリアス系のものが流行ってたんだが。やっぱり流行ってすぐ変わってくんだな……」
大量においてあるそのシリーズを手にとってみる。試しに数ページ、めくって読んでみた。ふむふむ……。どうやらこのシリーズは、ギャグ系の話らしい。なんでも、最近この世界にも所謂SNSというやつが入ってきてから、若者にハマったとかなんかで、大量に拡散され流行るに至ったんだそうだ。
確かに、この本は若者の笑いを全力で取りに来ている気がする。流行るのも納得。
その後、他の本なども見て回った後、もう既に部屋を取ってある狼の果実亭へと戻った。




