34.貴族
まず、貴族のルーツ……貴族が生まれたのは約300年前、テイがこの世界を統一したすぐ後だ。それより前は、身分の差というのがほとんどと言っていいほどなかった。せいぜい、集団のリーダーがそれぞれに数人いたくらいだ。
テイは争いを納めて回った後、今の王族・貴族となる一族を指名したんだが、その指名には明確で分かりやすい基準があった。それは強さ、つまりは戦闘力だ。テイの次に戦闘力のあった一族、今の王家の当主は王として新しく建てた国を任せられた。他に力のあった一族も、貴族という名目で身分を与えた。
このとき、貴族という身分を作った理由が、テイ直筆の文献に記されている。普段から国の、国民の代表の一人として、王を支え国をいい方向へ導く。また、もしも他の国などに攻められたとき、真っ先に剣を抜き、前線で戦い、国民を守る。そんな役割を持たせるために作った、と。
今でもその役割の話は代々言い伝えられていて、貴族であることすなわち国民を一生懸命に守りぬくこと。貴族に生まれたなら、強くなって国民たちを守る……。そんな風になっている。
ちなみに、新しく貴族になった者は未だに誰一人としていない。貴族になるには、まず最低でも3世代に亘って国に忠誠を誓っていることを証明しなくてはならない。加えて、その一族で何か大きな功績を100年以内に二度立てる必要もある。今まで貴族になろうとしたやつは何人かいるが、大体は三世代目の人物が馬鹿だったり、功績を一度しか立てられなかったりして、成功した事例はない。
「貴族は裏世界には欠かせない理由、そしてなぜ特進クラスは貴族だけなのか……。これで、分かったか?」
「うん……つまり、国民を守るため強くなる必要がある貴族に、優先していい教育を受けさせる必要がある、ってことで合ってるよね?」
「そういうことだ。貴族の中でも入学時の試験で成績優秀、そしてさらに上位の試験をまた受けて合格しないと入れないから、かなり狭い門だけどな。それでも、難しさで言えば庶民に入れない門って訳じゃない。ただ単に、貴族は優遇されてしまうものなんだ」
確かに、昔の凄い人が言ったきまりとか言葉とかっていうのは、説得力あるし、それに……この場合、それは事実。庶民なんかに受けさせている暇はない、ということだろう。
「……それで。見えてきたぞ、右奥に見えるのが、アリシアナ魔法学院。左奥に見えるのが、フェリア騎士養成学校だ」
「あれが……」
まだ少し遠いからよくは見えないけど、魔法学院には大きなドームのような建物、あれは恐らく訓練場だろう、それがいくつか見えた。魔法の練習は広くて頑丈な場所じゃないと危険らしいから、必要なんだろう。
対して騎士養成学校(長いから騎士学校と呼ぼう)の方は、校舎だろうか、大き目の部屋の多そうな建物が並んでいる。すぐそばに、微妙に違う建物も少し見える。敷地面積的には、大体同じくらいの広さだろう。それでも縦に大きい建物が多い所為か、騎士学校の方が広く見える。
「なるほど……こんな感じなんだ」
「魔法学院の方から行ってみるか」
早速魔法学院の方へ案内してもらう。
さっきの場所からそこまで遠くなく、少し歩いてすぐに到着した。校門からでもいい学校なんだと分かる。
魔法学院は近くで見ると、また印象が違った。整っていて、綺麗。それは当たり前、校門に貼られていた校内マップから、様々な設備がおいてあることが一目で分かった。手前にあるのが校舎のようだ。
まず建物がいくつもあって、校舎と訓練場はさっき見えたのもあって予想通りだけど、研究所が別であるし、複合館という、図書館・厨房・浴場が揃った施設に、何だかコロシアムみたいな会場も見えた。ほんとに色々揃ってるなぁ、ここ。
「マップを見て分かるとは思うが、アリシアナ魔法学院は設備がとても充実していることで知られている。基本的には校舎で主に座学の勉強、実技は向こうの訓練場で学ぶことができる」
「座学って何を勉強するの?」
「中等学院からさらに発展した知識や、魔法を使う上で知っておくべきこと、あとは魔法士団の入団試験対策などだな。自由選択できる科目もあるが、大体は皆対策授業を受けに来る」
一応中等学院の後に通う学校だから、高校扱いになるのか。それで、科目選択もあると。中々に整った仕組みだ。
流石に中には入れないので、学院の外見を外から大体見終わった私たちは、次に騎士学校の方へと向かった。




