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31.打ち合い

「実剣でやるから、一応【防御】は掛けておこう。……【防御】は分かるよな?」

「うん、確か……こうだよね、合ってる?」

 【防御】ならあの一覧表に載っていたから、分かる。ただ、少し曖昧なところがあるから、不安……。

「……あぁ、大丈夫だ。それで合ってる。よし、早速かかってきてくれ」

「……つまり?」

「とりあえずこちらへ向かって打ち込んでみろ。必ず受け止めるか受け流すから、俺のことは気にするな」

「分かった。じゃ、行くよ!」

 前に教わった通りに、左下に剣を構えて一息。一気に踏み込む!

 一瞬の間のあと、カキンッ! という、硬いもの同士が当たった音。前を見れば、カイリくんが私の剣を受け止めていた。鍔迫り合いに近い状態。ただ、カイリくんは余裕の表情を浮かべている。

「ふむ……悪くはないな。だが…………弱い」

 カイリくんの最後の呟きが聞こえたかと思ったら、キンッ!! という音と共に、私の手から剣がとんでいた。そして、訓練場の隅の方に突き刺さった。

「え…………」

「……ユイは、少し力が弱すぎる。だから、その分魔法で補ってカバーするようにした方が良さそうだ」

「えっと、今…………何が、起こったの……?」

 カイリくんが呟いてから剣がとぶまでの一瞬の間に、何が起こったのか私には全く見えなかった。

「単純に俺の力で、ユイの剣を押し返した、ただそれだけだ。俺が押し返した力と、ユイが剣を支えた力の間に大きな差があったから、剣はとんでいった……ってことだ」

「えぇ……何それ」

 どんだけ力の差があったんだよ……。……ちょっと、いやかなりショック。

「そうなると、ユイは足りない分、魔法で補う感じになりそうだな」

「どうやって力を補うの?」

「所謂、身体強化系の魔法を使うんだ。身体強化系の魔法は大体イメージ魔法に分類され、これも、効果が魔力量によって人それぞれ変わる」

 魔方陣の発動猶予時間みたいなものか。ってことは……。

「もしかして私って、身体強化系の魔法と相性いいの?」

「あぁ、そうだな。だから、覚えておいて損はないだろう」

「どうやって使うの?」

「さっきも言ったが、これもイメージ魔法だからな、イメージが重要だ。このタイプ、かなりイメージが難しいんだ。……魔素を、何て言えばいいかな、自分の周りにオーラみたいに纏わせるんだ。こんな感じ」

 カイリくんが見せてくれた。確かに、カイリくんの周りにうっすらと魔素が纏わり付いている。なるほど……。

「やってみよう」

「もう一度言うが、これ、かなり難しいからな……? 俺だって習得に一週間近く掛かったし……」

 一旦カイリくんの言ったことは無視して、イメージしてみる。周りの魔素が纏わり付いて、私の力を……強化……。

「おいおい、凄すぎるだろ……流石に、一発だなんてあそこの精鋭たちが泣くぞ……」

「え?」

 自分を見ると、なんと成功していた。それも、もしかするとカイリくんより上手くいってるかもしれない。

「あれ……? 使えちゃってる……」

「……まぁ、使えるならいいか。早速、それを使って打ち込んでみよう。さっきと同じように、かかってきてくれ」

「了解。それじゃ……っ」

 強化したまま、カイリくんに向かって打ち込む。手足に重点的に力を、魔素を集中させて……!

「うおっ……かなりくるな、これ……。……よし、OKだ。……反撃を耐えられるかも試すか」

 カイリくんの反応がさっきと全然違う。一瞬辛そうな顔を見せた。が、すぐに戻ってまた呟いた。

 先程と同じように、カイリくんが剣で押し返してきた。だが、先程とは違い、私は強化をしている状態だ。なんとか踏ん張って、お互いに押し続ける。

「中々やるな。それじゃ、打ち合いにシフトチェンジするか」

 カイリくんはそう言うと、いきなり後ろへ跳んで距離をとった。いきなりのその動作に驚いて、思わず前のめりに倒れてしまうところだったが、すぐに立て直して前を見る。すると、こちらへ跳びかかって来るカイリが見えた。

「えっ……!?」

 咄嗟に剣を構え、受け止める。

 重い。こんなものをずっと受け止めたままにしておくなんてことは、私には不可能。そう判断した私は、こちらから押し返してまた距離をとる。そして、跳んで打ち込む。

 打ち込もうとしたとき、身体が勝手に動いた。剣を持つ手を中心に、適切な姿勢へと身体が自動的に切り替わって行く。これが、剣が教えてくれるというヤツだろうか。

 そしてその打ち込みをカイリくんがまた受け止める。そして距離をとられる。

 そこから、その繰り返しだった。そのまま続くこと、およそ20分。

 流石に、疲れてきた。そしてついに、鍔迫り合いの最中、私は思わず言葉を漏らしてしまった。

「……ぜぇ、ぜぇ……。……もう……限界…………」

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