20.遊び
「……あ、ちょっと待った」
開始寸前、レンが口を挟んだ。
「……ちょっとー。何かあったの、従兄様」
「いや、今気付いたんだけど……流石にここでやるのはちょっと、ね?」
「う~ん……それもそっか。分かった、異空間でいいかな?」
「異空間……?」
……また聞いたことのない言葉が。
「えっと。異空間っていうのは……世界の狭間みたいなものだよ。周りを気にする必要がなくなるから、便利だね」
「……自分で作れるものなの?」
「もちろん。今回は僕が作るよ。広めでいいかな?」
「おっけ~! じゃ、早速行こ」
レンが地面に知らない魔方陣を描く。これが異空間に入るための魔方陣……まぁ、なんとなく【転移】に似ているところはあるかも。
地面に降り、【飛行】を解除する。完成した【異空間】(仮)は光を放ち、【転移】と同じような扉を作り出した。その中に、まずレイラちゃん、レン、サナ、カイリくん、と、皆入って行く。私も付いて、入った。
確かに感覚は狭間と同じだ。だが……雰囲気は違う。紫っぽい感じではなく、群青や紺に近い色をしている。不思議な、飲み込まれてしまいそうな感じではなくて、無機質な、なんというか宇宙のような感じだ。実際、【飛行】はもう解除したのに体が浮いている。
……なんだか、方眼のように線でも引いたら、それっぽい空間になりそうだ。
「じゃ、改めて……始めよっか!」
『ユイ、剣はなるべく使わない方がいいよ。今は鞘にしまっておこう』
開始前、またレンが今度は耳につけたものから声をかけてきた。
『……何かあるの?』
『いや、特には……ただ、こちらが剣を使わなければあちらも使ってこない。あくまで遊び、フェアルールだからね』
『なるほど……。わかった、魔法だけで頑張ってみる』
「……うん、おっけー。剣なしルールだね! よしっ、それいけ~!」
わわっ。いきなり電撃が飛んできた。何とか空気を蹴って避ける。
イメージを集中させて……っと。とりあえず距離をとりたいから……行けっ、暴風っ! レイラちゃんを、吹き飛ばす勢いで……!
「おぉ~……! やるねぇ、ユイちゃん。もういっちょ行ってみよ~!」
軽くかわされちゃった……残念……。心の中でがっかりしてたら、間髪入れずに炎が。うわっ、危なぁ。でも、意外と楽しいかも。ここで試してみようかな……?
ちょっと考えが浮かんだので、炎に合わせて氷塊を飛ばしてみる。すると……相殺された。氷塊は炎に解かされ消え、炎はそれで力尽きて消えた。……計画通り。
『あはは、これは僕らが口を挟む必要はなさそうだね。……くれぐれも、無理だけはしないように』
『う、うん……分かった』
レンの今の言葉は、言い換えれば「何も言わないから、一人で頑張れ」ってこと。うへぇ。
「相殺も出来るんだ! ……これ、表で沢山議論したかいあったかも」
「あれって、このためだったんだ……?!」
「よそ見してると、やられちゃうよっ!」
「えっ? ……うわっ!?」
なんと、始めの電撃が背後から迫ってきていた。なるほど、ずっとイメージしてたのか……それなら。
「び、びっくりした……」
「へへ、そうでしょそうでしょ? 私ね、不意打ちは得意なの! ……あれっ?!」
レイラの背後からも電撃が。ただし、先程の電撃とは少し様子が違う。隠密に特化した、静穏型だ。もちろん威力はかなり下がるが、確実に当たる可能性が高い。……またかわされたけど。
「ふむふむ……そっか、こんなやり方もあるんだ……! ありがと、また新しい技術を手に入れた気がする!」
「そ、そりゃどうも……」
「まだまだ行くよ~! ……えいっ!」
「い、いつまでやるの……?」
「どっちかが疲れて倒れるまで、かな?」
「…………」
……私、もう倒れそうな気がするんだけど。会話をしながらも、同じように魔法の打ち合いは続いている。そして、その分だけ空間の魔素と私たちの魔力は減っていく。加えて、おそらく今残ってる魔力量は、私よりレイラちゃんの方が圧倒的に多い。……つまり。私の方が先に倒れるだろう。魔力が何もない0の状態になれば、人は気を失う、と聞いた。あと……2分くらいは持つと思うけど……どうだろう。
今のところ、二人とも全てをかわし続けている。だから、体に直接的な傷はない。けど……魔力が減って、ふらふらした状態ならそうもいかない。絶対、いくらか被弾してしまう。そうすると、少し厳しい。
遊びとは言えど、負けたくない。変なところで対抗心が燃えた。意味もないのに。……よし、もう少し、もう少しだけ、頑張ってみよっと。




