19.レイラ・フィン・アリッシア
「玲良、ちゃん?」
飛んできたものは、空中で停止していた。そして、それは……。
「当ったり~! こっちじゃ、レイラ・フィン・アリッシアっていうんだ~。……服装も見た目も違うのに、よく分かったね、ユイちゃん! すっごく嬉しい!」
アリッ、シア……?! つまり玲良ちゃんは、王族……?!
「レイラって……確か表世界に留学中じゃ……?!」
レンが驚きながらそう言った。留学中……はまだ分かる。
「うん、そんなことまで覚えてくれてたんだね! 嬉しいな~、レン従兄様!」
「にいさまって……えぇ?! 兄妹、だったの?!」
えっ、でも……カイリくんの説明の通りなら、姫様の子供はレンとサナだけのはず……?!
「ううん、従兄妹! ユイちゃんも、私と従姉妹ってことぐらい知ってるでしょ~?」
「えっ、えっ? ど、どういうこと?」
「こら、ややこしくするな、レイラ嬢! ユイはまだそれは知らない、少し待て!」
カイリくんがレイラの話を一旦止めてくれた。…………ん? レイラ嬢? ……まぁいいや。
「改めて説明すると、姫様には一人妹がいるって話は前にしたよな? シーナ・フィン・アリッシア。俺も忘れていたが、その娘にあたるのが、レイラだ。だから、レンやサナ、ユイの従妹になる。そして、レンが言ったように、レイラは現在、表世界に留学中ということになっている……」
「……な、なるほど」
それは分かったけど……もう一つ気になることが。
「あと……レイラちゃん、何で飛んでるの?」
「あぁ、あれは【飛行】っていう魔法で、転移と同じようにイメージと魔方陣の両方を使う。発動は魔方陣を使うが、その後は全て自分のイメージで飛ぶ」
それだけ説明すると、カイリくんはレイラちゃんの方に向き直って言った。
「それで。レイラ嬢、ユイに何の用だ?」
「……もー、その、嬢ってやつやめてよ。ユイちゃんは呼び捨てなのに~」
「……それはユイ本人に頼まれたからだ! ……主の命は守る、それは当たり前だからな」
主って……そんな風に思われてたのかぁ、ちょっと残念……。
「主、ねぇ……カイリの主は姫様じゃないの~?」
「俺は既に、ユイに付くことを姫様より言い渡されている。その間は俺の主は、ユイただ一人だ」
姫様に言われてたんだ……知らなかった。
「えぇ~……。じゃ、改めて……やっほー、ユイちゃん。久しぶり~といっても、2日ぶりかぁ。折角裏側まで来てあげたのに、護衛さんが邪魔してくるよ~? 久しぶりに、一緒にどか~ん! って感じに遊びたかったんだけど……」
「どか~んって……。ううん、それよりも……。……レイラちゃん! カイリくんは護衛なんかじゃないよ!」
「ふーん、護衛じゃなかったら、なぁに?」
少し考え直して、でも答えは何も変わらない。自信を持って、答える。
「……カイリくんは、友達だよっ!」
「友達……ふふっ。……だってよ、カイリ?」
カイリくんの方を見ると、なぜか俯いていた。あれ、何かいけないことでも言っちゃったかな?
「……カ、カイリくん?」
「あはは、うん、ユイちゃんだしね~。分かってないと思うよ~? というか、カイリもしっかりとは分かってないか。……まぁいいや。……ねぇねぇユイちゃん、あ~そぼっ!」
「遊ぶって?」
「レイラ、まさか……。……まだユイは実戦をしたことがない、……だからまた今度にしてくれないか?」
レンが止めに入る。実戦? 何のことだろう……?
「え~、いいじゃん……これも実戦じゃないよ~?」
「そうじゃなくて……あぁもう、だめだなぁ……。ごめん、ユイ。もしかしたら母さんが言ってたのって、レイラのことかも……。厄介なんだよなぁ、全部返されちゃう」
厄介って……確かに全部言い返されたら面倒臭いかもしれないけども。
「これ、耳につけて。僕が指示を出すから……うん、従うんじゃなくて、情報を元に自分で戦ってみて。いい実践練習にもなると思う」
そう言って渡してくれたのはイヤホンのようなもの。ワイヤレスのやつに形が似ている。無線機……だろうか。とりあえず付けとこう。
「戦ってみてって……もしかして、レイラちゃんの言ってる遊ぶって、戦うってことなの……?!」
「その通り。私もよく絡まれたな……ま、やってみろ、応援はするさ」
「サナまで……?!」
肩に手を乗せながら、サナもそう言う。そんな、いきなり戦ってみて、って……。でも、やるしかないのか……。
「……はぁ。分かった。やってみるよ。ただ……怪我って、すると思う?」
「……それはユイの動き方次第だな。最悪どんな怪我をしても、脳と心臓さえ残ってればこの三人で治せる。俺もサポートするから、頑張れ」
カイリくんも立ち直ったのか、応援してくれた。……できるだけ、魔法はかわすことにしよう。
カイリくんが、なぜか魔方陣を描き始めた。これは……?
「それと……これが【飛行】の魔方陣だ。見ながらでいいから、描いて発動させてくれ。イメージは【風】の基本と同じグループだ」
「……うん、ありがと!」
【飛行】を発動させ、飛び上がる。なるほど、こんな感じかな。レイラちゃんと大体同じ位の高さで……っと。
「おっ、準備はいいっ?」
「……うん! ……行くよっ!」




