18.青空の丘
訓練場から出た後、私たちは市街の宿屋に来ていた。カイリくんの自室に泊まるわけにもいかないし、なら折角だし宿屋で部屋を取ろうということになった。
「今夜だけ泊まりたいんだが……」
早速チェックインを行おうと、カイリくんがカウンターへ声を掛ける。
「お二人様ですね。二人一部屋でよろしいでしょうか」
「いや、二部屋で頼む」
「……一部屋に泊まりませんか?」
……受付嬢はなぜか一部屋を勧めてきた。まぁ別に、出費も抑えられるし一部屋でもいいか。
「いや、二部屋だ」
私はそう思ったんだけど、カイリくんは頑として譲らない。ちょっと口出してみようかな。
「……カイリくん、私も一部屋のほうがいいと思うんだけ……」
「二部屋だ」
なんと。カイリくんは私の言葉を遮って答えた。えぇ、そんなに嫌なの?
「……一部屋のほうが安いし話しやすいし、わざわざ二部屋にする理由もないでしょ?」
さらに言葉を重ねてみる。これでどうだ。
「……とにかく。二部屋にしてくれ。一部屋しか取れないと言うのなら最悪俺は野宿する……」
の、野宿……?! ……うん、それはダメ。流石に野宿されるのは困る。
「……ごめんなさい、二部屋でお願いします……」
「か、かしこまりました……」
受付嬢が驚いていた。多分カイリくんの頑固さに。そこまでしてカイリくんが二部屋にしたがる理由って何だろう……? 何かあったっけ……。
「こちらが、203号室と、その隣の204号室の鍵になります。忘れずにお持ちください。チェックアウトは午前中ならいつでも受け付けますので」
鍵を受け取り、部屋へと向かう。明日また集合することにして、カイリくんと別れた。
「最終確認、準備はいいかい?」
「準備なら大丈夫だぜ!」
「心配いらない」
「いつでも行けるよ」
翌日。私達4人は、またレンの部屋に集まっていた。今日は青空の丘へ出掛けることになってる。既に全員支度を済ませ、集まっていた。
「よし、じゃあ出発しようか。……一応もう【隠蔽】は掛けた方がいいかな?」
「そうだな、念には念を入れておいた方がいい」
レンが全員に【隠蔽】を掛けていく。あれ、そういえば……。
「えっと……あの、そういえば、レンもサナも1日公務外して大丈夫なの?」
「んーまぁ。急ぎの用は朝の内に済ませておいたし、夜には帰るつもりだし。もし帰れなかったとしても、大丈夫だと思う。……いつもだいたいヒサに任せてるからね。やっぱり流石僕の右腕を務めるだけあって、中々の仕事ぶりなんだよ」
「ま、私はそもそも公務自体少ないしな。せいぜい2日に1個くらいだから、全然気にしないぜ」
そういうものなのかぁ……。まぁとりあえず、大丈夫らしいし気にせず出掛けることにした。
レンの自室に繋がっていた隠し通路に似た城の裏口を抜けてから少し歩くと、市街の路地裏に出た。そのまま進んで王都からも出る。
三人とも、迷わずにぐんぐん進んでいく。……地図とか何も確認してないのに、何で分かるんだろ?
「ねぇ、皆地図見なくても大丈夫なの?」
「地図? ……あぁ、まぁよく来てたから。母さんのお気に入りと言っても過言ではないくらいね。」
「私も同じく。地図見るのもまどろっこしいぜ」
「……俺の場合は、王都周辺の地形、地名はほぼ全て把握してるからな」
……カイリくんだけ、何かすごいこと言ってる……賢すぎないかなぁ。
「地図が見たいなら渡すけど……どうする?」
「ください……今どこにいるのか全然分かんないです……」
「はい、これ。今いるのがここら辺。で、目的地がここ」
「ありがとう、ほんと助かる……」
レンが地図を取り出し、指差しながら渡してくれた。そんなに遠くないみたい。大体……家から学校までの距離の二倍くらい。約1kmの二倍、つまり約2kmくらいか。それじゃ、あとちょっとかな?
「……お、見えてきたよ。あれが青空の丘。あんまり国民たちは知らないみたいだから、穴場スポットかな。ゆっくりくつろげるよ」
うーん……まだよく見えないや。……そういえばまだ聞いてなかったけど……。
「……全然話が変わるんだけど……、レンとサナはどっちの方が年上なの?」
「えっと……双子?」
首を傾げながらレンが答えた。双子、かぁ。見た感じだと、レンの方が上っぽいんだけど。
「……だな。よく、性格逆に産まれたんじゃないか、って言われるんだよな……。ま、確かにそうだと私もよく思ったけど」
「うん。ただ、序列としては僕の方が上だね。基本的に双子の場合は、その当人達の意思によって序列が決められる。僕らの場合は……」
「私がレンに譲ってやったんだ。序列なんて、基本興味ないしな。それに、私なんかが治めるより、レンがやった方がしっかり国として出来るだろ」
「そんなことないと思うけどね……」
レンが苦笑しながら言う。まぁそこは人によるんじゃないだろうか。……ん?
「……何か、来る……! ……5、4、3、」
カイリくんが早速反応した。やっぱり……!カイリくんは小声で皆に指示を出す。
「2、1、来るぞっ!」
皆で一斉に外側へ跳ぶ。その跳んで空いた空間に、何かがヒュンッと飛んできた。私がいた所だ……!
「えっ……?!」
「何者だ……!」
「あれれ~? 避けられちゃったぁ、残念」




