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17.訓練場

「服と武器は揃ったから、普通なら食糧や道具なんかを揃えるんだが……まぁ今回はいらないか。向こうで準備してくれてるだろ、とりあえず部屋に戻るか」

「了解!」

 とりあえず私自身の支度は終わったので、他の皆と合流することにした。


「お、帰って来たね、おかえり」

 あの後、もう一度私に【隠蔽】を掛け直し、【幻影】を掛けたサナに付いて城の中のレンの部屋に戻った。

「おう、とりあえずこっちはユイのやつだけ整えといた。……レン、他のは準備してくれてるか?」

「うん、だいたいは僕が準備しといたよ。あとは……カイリがアルジェを磨きに行ってるから、待つだけだね」

「……アルジェっていうのは?」

「カイリの愛剣の名だ。銘はエテルナ。永遠という意味だそうだ。カイリがずっと身につけている剣だよ」

「永遠……」

 銘は普通、持ち主が自分で新しく付けるもの。カイリくんは、何を思ってその銘を付けたんだろう……。

「……それより、腰に提げてるその剣、ユイの新しい剣かい?」

「うん。名はコク。銘は……まだ決めてない」

「そうか。…………あ」

 レンは何かに気付いたようで、声を上げた。すかさずサナがレンに聞く。

「どうした、レン?」

「あのさ……ユイ、剣の扱い方って、分かる?」

「……あ」

 すっかり忘れてた。剣を持っていても、使えないんじゃあ意味がない。……どうしよう。

「……あれ、皆帰ってきてたのか……。すまない、待たせたか?」

 その時、ちょうどカイリくんが隠し出入口から部屋に戻って来た。

「いや、それよりカイリ、今から少し頼みたいことがあるんだけど……」

「なんだ? 無茶苦茶なこと以外ならいい、言ってみろ」

「……ユイに剣を教えて欲しいんだ」

「ユイに……? あぁ、剣を持ったのか。剣なら任せろ」

「ありがと、カイリ。ユイもそれでいい?」

 別に断る理由もないから、素直に頷く。

「よし、じゃあ付いてきてくれ」

「僕らは公務とかスケジュールとかを確認しとくよ。必要によってはずらす事も考えないとね」

「おう、明日出発だからな!」

 二人は部屋から出ていった。

「そうだな……あの訓練場に行くか」

「あの訓練場?」

「あぁ、どうしても城の訓練場じゃ目立つからな……そことは別に、普段使ってる訓練場があるんだ」

 どんな所なのか、正直言って分からないけど……。まぁ、行けば分かるか。早速向かうことにした。


 まず城を出て、店の並ぶ大通りや住宅区のある城の正面の反対側、城の裏にある森に向かった。ちなみにこの森は城の敷地外なんだそうだ。森は深く入り組んでいて、道を知らなければすぐに迷ってしまいそう。

 何分か歩いて、どの方角に向かっているのかさえ分からなくなってきたころ、カイリくんが立ち止まった。私も慌てて立ち止まる。

 確かにそこは開けた場所だった。……まさかここが訓練場だなんて言わないよね?と、心配していると。

「ユイ、ちょっと離れててくれ。」

「どのくらい?」

「そこから10歩くらい頼む。少し危ない」

 言われた通り、10歩くらい下がる。それを確認すると、近くにあった切り株の上に魔法陣を描き始めた。この形は……全然知らない。複雑過ぎる。だがカイリくんは、手馴れた動きですらすらと描き進め、1分もしない内に描き終わってしまった。…………私なら、5分はかかるだろうなぁ……。

 しばらくすると、魔法陣が一瞬光り、何も無かったその場所に、そこそこ大きな小屋が出来ていた。恐らくこれが、本当の訓練場。そうなら納得できる。

「これだ。入ってきてくれ」

 カイリくんに続いて入ると、木材が敷き詰められ埃一つない床と、最低限の物のみが置いてあり飾りのほとんどない壁が広がっていた。

「凄い……」

 細かいところまで手入れが行き届いていて、いるだけで気持ちがいい。カイリくん、掃除も上手そうだったしなぁ。

「じゃ、剣の持ち方からだな。……確認するけど、剣は抜けるよな?」

 鞘からコクを抜き、片手で持って見せる。少し重いけれど、このくらいなら大丈夫だ。これでも力と体力には自信がある。

「よし、片手で持てるみたいだな。まず、剣はこのように持つ」

 言いながら、カイリは愛剣のアルジェを抜き、右手で握った。それに倣ならって、私もコクを握る。まだ振る構えではないはず……多分。

「そうだ。それから、こう振る」

 今度はアルジェを左腰横へ運び、構える。そして、振る。左下から、右上へ。

 真似てやってみても、カイリのように上手くいかない……。どうしたら上手く出来るかな……?

「これ以外にも色々と振り方はあるんだが、一番基本はこれでいいだろう」

「……その振り方のコツとかって、ある?」

「コツか……そうだな、この振り方に限ったことではないが、剣に任せるんだ。軽く振れば、そこからは剣が勢いに乗せてくれる。あとはまぁ、慣れだな。何回も振ることだ」

 1度カイリの言ったように、コクに任せてみる。

 軽く、でも力を込めて。イメージを作りながら、一気に振る。えいっ!

「……上達が早いな……。ユイ、その剣、どこで手に入れたんだ?」

 何を思ったのか、ふいにカイリがそんなことを聞いてきた。確か……。

「えっと、ウィル武具店の裏にあったみたい。選んでもらったの。コクっていうんだ」

「そうか……。いい剣に選ばれたな、ユイ」

「……?」

「いや、なんでもない……。それより、この調子なら使って行く内に慣れてくだろうから、大丈夫だ。……次は魔法だな、実用魔法は戦闘ではあまり使えないし……」

「イメージ魔法、だよね。頭で思い浮かべて使うものだったっけ」

「そうだ。先に、イメージ魔法について説明する。まず実用魔法との違いは、具現化させるために使うのが魔法陣かイメージか。魔法陣の方が、発動までに時間はかかるが、その分効果を発揮しやすいし、誰にでも使いやすいものが多い。逆にイメージは、発動までにほとんど時間はかからないが、始めたてには難しい。だが、上手く使えば大きな効果も発揮できる」

 ……まとめると、誰にでも使いやすいのが実用魔法で、難しいその分だけ伸びしろがあるのがイメージ魔法、といったところだろうか。

「さっきユイが言ったように、思い浮かべて使うんだが、上手くイメージを組み立てるのにも練習がいる。まずはとにかく、イメージの基本を覚えることが大切だ。基本から発展させていって、大きな魔法にしていくんだ」

「……なるほど、つまり沢山の練習が必要なんだね」

「あぁ、そういうことだ。だが、ある程度被害を気にしないと練習できないからな……。じゃ、早速始めるぞ。まず……」

イメージの基本をいくつか教えて貰った後、私達は訓練場を後にした。

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