15.着替え
「まず……服を替えた方がいいな。……あぁそうか、少しじっとしててくれ……。」
そう言うとサナは部屋を出る前に、恐らく私を対象に【隠蔽】の魔法陣を描き始めた。かなり高度なやつみたいだ。魔方陣は、その形が複雑になるほど効果も上がる。きっと、このままでは巡回中の警備兵になんかに怪しがられると考えたんだろう。
「よし、完了……今から、私が指示出すまでは声を抑えてくれ。音も出来るだけ立てないように、な」
「分かった」
サナは小声で私に言った。それに合わせて私も小声で返す。
部屋を自然に出て、通路を通り、やがて他の物よりも一段と豪華で、大きな扉の前へやって来た。警備兵も居て、なかなか厳重になってる。
「……失礼する。入らせて頂きたい」
「……サナ殿下……であられますか?……このような状況である故、サナ殿下であってもこの部屋にお通しする訳には……」
ありゃ、断られちゃった。それにしてもこの部屋、一体何の部屋なんだろう?
「言い訳はいらない。私が本物かどうか疑っているのだろう? 見れば分かる……それに、確かにこのような状況では仕方あるまい」
……なんか、性格変わったなぁ。話し方も、態度も。これがサナの王族としての接し方なのかな……。やっぱり、王族として、偉い人として生きるのは大変そう。
……何だか他人事のように思ったけど、本当なら私もその立場だった人間なんだよなぁ。これだから人生というやつは本当にわからないものだ……。……なんて、偉そうに言えるような立場でもないけどね。
「……では、【認証】を行ってもよろしいでしょうか?」
「構わない」
サナが答えると、警備兵は何かカードのようなものを取り出した。そこには小さな魔方陣が一つ描かれていて、光ってたから既に発動状態にしてあるんだろう。サナはその魔方陣の上に手(指? )をかざした。すると、魔方陣は一際輝き、○の形に変形した。
「……確かに、確認致しました。お通り下さい」
この感じだと、本人なら○、他人なら×の形に変形するようになってる、ってことか。
「感謝する。……一つ確認したいのだが、今、ここには誰か来ているか?」
「いいえ、誰も。ここは今、封鎖ということになっています故……」
「了解した。ではこのまま警備を頼む」
「はっ」
そんなやり取りをした後、私もバレないようサナに付いて部屋へ入って行った。
「さて、と。どこにあったっけな……」
サナは部屋に入って出入口の扉に【遮音】の魔法陣を描き、鍵をかけると、部屋の中を探し始めた。
どうやらここは姫様の部屋で、昔、私のサイズに合わせてくれるように作られた服があるそうで、今はその服を探しているところ。
ただ、私はこの部屋のつくりだとか置いてある物だとかは全く分からないから、何も手伝えない。何だか少し、申し訳ないな……。
「……んっと、これか?」
サナが何か見付けたらしい。一つ何かを持ち上げ、こちらに見せている。
遠くから見ていたから、白っぽい長めの布、としか分からなかったけど、近づきながら目を凝らしてよく見てみるとそれは一つの服のセットだった。薄めの銀色のジャケットに、紺の半袖ワンピース。短めの白いマフラー付きだ。……何だこれは。かっこかわいいじゃん……!
「おぉ……!」
「うん、これだな。っていうかこれ、よく残ってたなぁ……。絶対父上が見つけたら即処分でしかも色々とバレてたかもなのに、母さんも良くとっといたもんだぜ……」
実際に、勝手に服の方が揃えてくれているみたいで、見たところサイズは丁度良さそう。
「更衣室ってどこにあるの?」
「あぁ、そこ。私はここにいるし、誰も他に入ってこないから、ゆっくり着替えても大丈夫だ」
サナは部屋の奧の方にある扉を指しながら言う。
「うん、ありがと!」
数分後。あのセットに着替えてみた。
「おぉ、似合ってるねぇ」
褒めの言葉、頂きました~! ……なんちゃって。
「ありがと、これ着とけば大丈夫?」
「あぁ、どこからどう見てもこっちの住人だな。じゃあとりあえず……次は武器だな、早速行くか」
「うん!」
武器……必要かな? まぁ、この国をよく知ってるはずのサナの言う言葉だし、一応は持っておいた方がいいんだろう、きっと。まだ私も攻撃魔法は使えないし、ね。
わくわくしながら、私たちは市街へ向かった。




