14.王族
「えっ……?!」
なぜ、一国の王子ともあろう人物が、こんなとこに……? というかまず、ここはどこなんだろう? そして恐らく歳上&格上のレンに対して、なぜカイリくんは普通に話して……?
レンは私の方を見つめて、目を輝かせている。
「母さんの頼みを果たして来た……それに、連れてるってことは、その……ユイ、だよね? カイリ」
「あぁ。……ユイ、改めて紹介する。俺の旧友の、レンだ。」
「君からしたら初めまして、かな? よろしくね、ユイ」
「あ、はい。よろしくです。あの……とりあえず、ここはどこなんですか?」
「ここは、僕の自室。今通ってきてた通路は見えないようになってるよ」
流石に立場が違いすぎる。いくらカイリくんが強かったり、姫様の従者だったりしても、旧友? そんな簡単になれないはず。なら……。
「……ねぇ。カイリくんって、本当に何者……?」
「……」
黙り込んじゃった。やっぱり何か隠しているんだ……。
「……カイリはね、剣と魔法の腕が凄くいいんだよ。僕だってまだ全然適わないんだからね」
「は、はぁ」
「……正直に……いや、そう言ってもバレるか。……ユイ、今まで俺がいくらか嘘付いてたこと、わかってるんだろ……?」
「……うん」
なんでわかったんだろ? 誰かに言った訳でもないのになぁ……。
「……表情とか反応とか、見てればよく分かる。……まぁ、だから、俺から今言うことはできない」
「わかった……」
「まぁでも、剣とか魔法とかは教えられる。……そのときになれば、また話せるかもしれない」
「……なんか水を差すようで申し訳ないんだけど。そろそろ本題に入ってもいいかな?」
「あ、すいません……」
本題から逸れていた、というか、そもそも本題に入ってすらいなかったや。
「えっと。父上が連れ去られて、次の日……。母さんが言ってたんだ」
……もうすぐあの子がこっちに来るはずなの。
一緒に、どこか出掛けてみたら?
青空の丘なんかどうかしら? 誰かいるかもしれないし……。
「ユイ。こっちに来たばかりで色々と慣れないだろうし、無理を言ってるようで悪いんだけど……ひとまず青空の丘まで一緒に出掛けない?」
「……いいですよ、もちろん。私もこっちのこと知りたいですから……!」
「そうか、ありがとう。じゃあ、色々と準備しないといけないね。今からサナでも呼んでくるかなぁ……」
レンがそんなことを言っていると突然、鍵が掛かっているはずの扉がノックされた。
「……まずいかもしれない。一応二人は通路に」
「了解」
「はい……」
レンが小声で指示を出してくれたので、それに従う。通路だったりカイリくんだったり、バレると色々まずい、ということだと思う。
私達が通路に隠れると、レンは通路の前の壁に【透明化】の魔法陣に似た、私の知らない魔法陣を描いた。すると、通路の出入口の前が壁になり、周りの壁と同化した。おそらくこれは【偽装】とか【擬態】とかいうやつなんだろう。
「何かあったか?」
「私だ、サナだ。全く、警戒しすぎだっつーの……」
「なんだ、サナか……」
カチャ、と扉の開く音が聞こえ、誰かが入ってきた。
「っと。で? カイリが帰ってきてたらしいんだけど、どうなんだ?」
「カイリなら、確かに帰ってきてる。……ユイと一緒だ。二人とも、もう出できていいよ」
レンがそう言うと、出入口の前の壁がフッと消えた。
「ちゃんと壁は張ったか?」
「もちろん。【遮音】【障壁】……【不可視】は張ってないけど、いいんだよね?」
「あぁ、室内ならそれでいいぞ。…………久しぶりだな、サナ」
カイリくんが部屋の中へ入っていったので、私も倣う。
ちゃんとした方の扉から入ってきていた女性は、軽そうな、それでいて頑丈そうな金属鎧をつけていた。けれどその佇まいは、どこか高貴な印象に見えてくる。
「あのなぁ。わざわざ隠れなくてもいいだろ?」
「まぁ、騎士の可能性もゼロではないし。それに隠れるのを指示したのは僕だから。……んでほら、ユイ。カイリが、母さんの頼みで連れて来てくれたんだって」
「そうか、よろしくな、ユイ!」
男勝りっていうのかな……。見たところ女性だし、アリッシア王家の銀の紋章が刻まれているネックレスを着けているから、恐らくこの人が第一王女であるサナ・フォン・アリッシアその人なんだろうなぁ。
「よ、よろしくお願いします……」
「あぁ、敬語じゃなくてもいいぞ。自由にしていいけどな!」
「……分かった。それで、今から準備する……んだよね?」
「任せな。私が色々支度手伝ってやるから。ここで色々動くには準備が必要だからな。付いて来てくれ」
「うん……」
こうして私達は、青空の丘へと向かうことになったのだった! ……その前に色々と支度しなくちゃいけないけど……。




