13.第一王子レン
「着いたぞ、ここが謁見の間だ」
私達の目の前には、4メートルほどの高さはあるであろう扉がずっしりと構えていた。そのすぐそばには門番らしき兵が二人。そして入退室を管理しているのであろう人物も。
「……周りに家臣達もいるだろうから、失礼な態度を取らないようにしてくれると助かる」
「う、うん……」
カイリくんは小声でそう私に囁いた。
この感じだと、私は口を出さない方がいいかなぁ……。こういうときの接し方、何も知らない素人だし。
「……カイリ・セイラン殿で合っているかね?」
管理係(仮)が話しかけてきた。カイリくんはその問いに頷いて肯定の意思を示す。カイリくんの姓って、セイランって言うんだ……初めて知った。
「入室を許可する。……同行人も入ってよいぞ」
カイリくんはノックの後に大きな扉を開け、中へ入っていった。私も後に続く。
玉座に座っていたのは、17、18歳程の少年、というより青年。明るく優しい好青年というのが第一印象。アリッシア王家の紋章が施された軽めのマントを羽織り、控えめな王冠を被っている。薄めの緑、まるで風のようなその色に、王家の象徴、銀の刺繍があしらわれていた。爽やかなザ・王子。
「……!」
その青年、おそらく王子は、カイリくんと私を見て驚いてる……ように見えた。他の人たちは皆気付いていないみたい。反対に、周りの家臣と思われる人達は、カイリくんに嫌悪の目を向けてた。何かあったのかな……?
「先程、帰還致しました」
カイリくんが膝を付き頭を下げたのを見て、私もそれに倣う。
「……どのような用でこの場へ?」
「……姫様から事を頼まれ、果たして来たのですが、姫様にご報告申し上げようと考えたところ、……現在行方不明とのこと。ならば、殿下へと代わりにご報告致そうかと」
行方不明。その言葉を聞いた家臣達が何やら少し騒がしくなった。やはり捜索などは秘密裏に進められていたらしい。……いや、この感じは皆、知っている。知ってはいるが、なぜカイリくんがそれを知っているのか、といった驚きか。そしてそれは、王子も変わらないようだ。
「……一体誰からその話を?」
王子の代わりに、隣にいた人物が問う。彼は王子の右腕といったところだろうか。
「……精鋭部隊所属の、トモという者に」
「そうか。……用はそれだけか?」
カイリくんは頷いた。肯定の意だ。
「ならば自室に戻るといい。長旅ご苦労だった」
「……すまない、私も退出させてもらおう。皆も解散してくれて構わない」
王子はそう言うと、玉座を降り、部屋から出ていく。
すれ違い際、王子はカイリくんと視線を交わすようにして、少しだけ、笑った。声も出さずに、そして周りには気付かれぬように。カイリくんもそれに答えてか、目で頷き、少しだけ笑う。
王子が完全に出ていったのを確認し、私達も謁見の間を後にした。
私達はその後、城の隣に併設されている宿舎にある、カイリくんの自室に行った。
「ねぇカイリくん、さっきの人ってやっぱり……」
「あぁ、前にも説明したが、あれが第一王子のレンだ。フルネームで、レン・フォン・アリッシアという。……実はこの後、ちょっと行きたい場所があるんだが、構わないか?」
「もちろん。どこに行くの?」
「まぁ、それはお楽しみってやつだ」
そういう事だから、私達は少し休んで、その場所へと向かうことにした。
「……ここだ」
カイリくんについてきてやって来た場所は、一見ただの通路。まさか通路に用があるわけではない……はず。
カイリくんは周りに誰もいないのを確認してから、通路の壁に魔方陣を描いた。この形は……知らない。というか、私の知るいくつかの形のどれにも似ていない。
魔方陣は似ている効果のもの同士だと形も必然的に似るものだと言っていたけど、その説明の通りならこの魔方陣は私の知っているものとは全く効果も違っているはずだ。
「……え……?!」
魔方陣を発動させるとなんと、ただの壁だった場所に、人ひとりが通れるくらいの扉が現れていた。
「さ、行くぞ」
「え、うん……」
扉の先は通路になっていて、かなり複雑だった。長めの道を通って行くと、小さめの扉が見えてきた。
「……失礼する」
そこそこ広い部屋に繋がっていたらしい。扉は別にあるようだが、鍵が掛かっている……ように見える。
「久しぶりだね、カイリ」
「あぁ、とはいってもまだ数週間しか経っていないけどな。……久しぶりだな、レン」
そこに一人、座りながら、こちらを見て優しく笑う人が。
レン……レン・フォン・アリッシア。先程見たばかりの、この国の第一王子、その人だった。




