12.現状報告
カイリくんと通りを見て回っていると、何やらこっちへ走り寄ってくる人影があった。
「……カイリ! 最近どこに行っていたんだい? こんな時にいなくなるなんて、心配するじゃないか」
「久しぶりだな、トモ。俺は少し姫様の頼みで外出していた。……お前こそ、そんなに慌ててどうした? らしくないぞ」
どうやらこの人は、カイリくんの知り合いのようだ。トモというらしい。
「もしかして……カイリは知らない? いや、でも……。……ごめん、少し場所を移してもいいかな?」
「構わない。……路地裏にでも入るか」
そういって二人は、すぐ近くの路地裏に入っていった。私もそれに付いていく。
トモさんはまず、【不可視】と【遮音】を張ってから話し始めた。……よっぽど大事な情報なんだろうな。
「カイリは陛下の誘拐のあと、すぐに出発したのかい?」
「あぁ、そうだな。……もしや、その間に何かあったのか?」
「これは一応機密情報なんだけど……その翌日に姫様が、消えたんだ」
「消えた?」
「うん。誘拐じゃない、消えたんだ。詳しく説明するよ」
トモさんの話によれば、ナルの大河に向かった姫様が、わざわざ護衛の騎士たちを眠らせ、どこかへ消えてしまったのだという。
「……今回の件、殿下がかなり重要な情報をご存知のようだったから、これはかなりの痛手なんだよね」
重要な情報……? 痛手……? もしかして、姫様は……。
「確かにそうかもしれないな……」
「……カイリはそこら辺、何か姫様から聞いてない?」
「いや、聞いてはいないな。だが……少し読み取れたものとしては、姫様はかなりこの件を問題視していたと思う。俺が外出任務を頼まれたのは初めてだ、今までは外出任務は全て他の臣下に任せられていたからな。こういうのもなんだが、今までそうされてきたのは多分、姫様が俺に任せるまでもないと判断したからだと思うんだ。だから……」
……何気にそれ、自画自賛してるよね……? 気にしないけど、カイリくんもやっぱり凄い人なのかなぁ……。
「確かに、カイリほどの人材をわざわざ外に行かせたのか……。そうか、分かった、ありがとう」
「こちらこそ、情報ありがとな。それに、今回の件は絶対大ごとになっている……今はまだ、外には広がらずに済んでいるようだが、いずれは国民たちにも広がるだろう。そうなれば……解決したとして、タダではすむまい……」
誘拐されてしまうような国王とその護衛体制に、大変な時に自ら消えてしまう王妃。……国民から反感を買うことになるのは間違いない。
「うん……精鋭部隊でも捜索が進められていてね。まぁ、全く手がかりは掴めていないけど」
「……ではなぜ今こんな市街地に?」
「それはね、今日は休暇をもらったからなんだ」
「……あの、精鋭部隊? って、何ですか?」
「そのままの意味。正式名称はフェルトン精鋭部隊。主な仕事は、重大な事件の際の調査、スパイ活動、危険な大型獣の駆除などだね。それで……」
トモさんは私の方を険しい眼差しで見つめて続けた。
「……さっきから気になってたんだ、君は誰だい? カイリの連れのようだけど……」
隣のカイリくんに名乗ってもいいか視線で問いかける。カイリくんの目は細かく縦に揺れた。許可の意味と判断して、答えることにした。必要以上の情報は隠した方がいいだろうけど……。
「……ユイといいます。表から来ました」
「…………なぁ、もしかしてカイリ、お前が頼まれたのって……」
うわぁ、バレちゃうんだ……カイリくんはどうするんだろう?
「あぁ、ユイを連れてくること……だ」
あ、普通に答えた。……カイリくんもトモさんのこと信頼してるみたいだし、まぁ別にいっか。
「この魔力量……そしてこの質……。ねぇ、君は一体……?」
……そんなに私の魔力ってすごいのかな……。確か海莉くんが言うには、魔力はほとんどが遺伝、らしいんだけど。そんなに私の両親って……凄いか。なんせ一国の姫様と……海莉くんの言う、偉大な一族の子孫っていう人物らしいしなぁ……。仕方ないのかな。
「……ただの人間、です。気にしないで下さい」
簡単に返しておく。
「それと……出来ればその話はここだけの話にしてくれないか。頼まれた、ってバレると色々大変そうだ」
「……分かったよ。長い付き合いだし、カイリのためならね」
「助かる。それで……どうするかな、姫様にご報告も出来ないわけだし……」
……そっか、まずは姫様に会うつもりだったからなぁ……本人がいないんじゃあ、どうしようもない。
「それなら、レン殿下に謁見するのはどうかな? 現在、国の最高責任者は殿下でね。公務なども全てこなされてるそうだよ」
「……とりあえずはそうしてみるか。トモ、またな」
「またいつでも来てくれよ、カイリ」
じゃ、早速向かいますか。




